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幼少期
18 クルトとの修練
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この世界はゲームがもとになっているが、れっきとした現実の世界でもあるから、剣術だろうと知識だろうと相応の努力をしなければ身につかない。
というわけで、剣術の練習を始めたんだが、やっぱり前世の記憶というのは意味があるようで、それなりに動ける。
というのも、前世ではド田舎に住んでいて、武術だの剣術だの近所のじーさんが強制的に教えてくるようなところだったから、ある程度の護身術は幼なじみ連中全員で身につけさせられていた。
前世では刀が基準の剣術だったし、この世界でも少数ながら刀が存在するが、俺は使う気はない。
なんでかっていうと、そもそも俺が刀を十全に使えないというのがあるし、この世界の刀はアーティファクトで特定のダンジョンのレアドロップに指定されているからだ。
小器用でありながら雑な性格の俺には、切り裂く刀よりも押し切るロングソードの方が使い勝手がいいし、刀以外にろくに戦利品のないダンジョンにわざわざ潜る気がないんだ。
ダンジョン攻略は攻略特典で疾風の指輪が貰える昆虫系魔物の蔓延るダンジョンと、マナの指輪が貰えるトロールが蔓延るダンジョンのみで十分だ。
もちろん、その2つは終盤にならないと行けないゲルハルディ領にあるダンジョンで、ゲルハルディ領に住んでいる俺にとっては行きやすいダンジョンだ。
現在はまだ未発見のダンジョンのはずで、ダンジョンは発見者に優先攻略権が与えられるから、7歳になったらこの2つは率先してクリアしないとな。
疾風の指輪は1ターンに2回行動できるアクセサリーで、マナの指輪は毎ターンMPが回復するアクセサリー。
どちらも主人公にとられたら面倒くさいことになるし、他の装備は取られてもこの2つだけは取られちゃいけないものだ。
この世界での効果がどうなっているかは、入手してみないとわからないが、最強武器や最強防具よりも優先順位が高いアイテムなんだよな。
「マックス様、本当に剣術を習っていなかったんですか?」
「6歳児に何言ってるのさ。剣術どころか、ショートソードだって持ったことなかったよ」
「その割には様になっていますけど」
「クルトの教え方が良いんじゃない? 言われた通りに構えて、言われた通りに振ってるだけだよ」
「その、言われた通りに、というのが難しいのですよ」
「そうかな?」
「それよりも、本当に騎士団長や領主様に習わなくてもいいのですか? 恨みがましそうな目で見られていますが」
「いいのいいの。そもそも6歳児にハルバードやロングソードを持たせようとする人たちだよ? 自分たちの基準は普通じゃないって知る良い機会だよ」
「それは確かに普通じゃないですね」
「そうそう。それよりもクルトも、もっと砕けた口調でいいよ? 家族とか友人相手にもそんな感じじゃないでしょ?」
「? わたしは友人相手にもこんな感じですよ。さすがに家族には砕けた口調で話しますが、主家の嫡男にそのような言葉遣いはできませんし」
おっと、クルトは思っていたよりもまじめな性格のようだな。
確かに、前世でも友人だろうが取引先だろうが、丁寧語で話すという人は一定数いたし、そンな感じかな。
「そっかそっか。まあ、軽口が言い合えるくらいの関係の方がこれから楽なんだけど、クルトにとってそれが楽ならそれでいいよ」
「これから……ですか?」
「そうそう。今は平の団員かもしれないけど、俺が領主になるころには小隊長とか中隊長……少なくとも今よりは権限が上がっているでしょ?」
「そうなれればと思ってはいますが」
「真面目に怪我なく勤めていればなれるって。今の騎士団長やベテラン団員のほとんどは退団しているはずだし、クルトたちの時代が来るはずだよ」
「そう……なんですかね。あまり、現実味がないですが」
「だって、俺が領主になるのは10年後か20年後だよ。そうなってもらわないと困るよ。騎士団長なんて40とか50だよ? ま、そんな時に軽口を言える人間が騎士団にいてくれるっていうのは、領を守る領主にとっては心強いってことだよ」
「……精進します」
「うんうん、ぜひとも精進して強くなってね。俺は父上のように一騎当千、率先して戦いに出るなんてできないんだから、騎士団が強くなってもらわないとね」
「マックス様も強くあらねばなりませんよ」
「それは次期領主として当然。自分の身は自分で守る、領民のために戦う、これが基本だけど、領民の守り方は人それぞれだからね。俺は人を上手に使ってみんなを守るよ」
前世の俺には守るものは両親や幼なじみくらいだったけど、この世界ではそうも言っていられない。
自分の周囲を守れればそれでいいなんて、貴族に生まれて税金で生きている人間がほざいていい理論じゃない。
自分に能力があろうがなかろうが、自分のできる手段で領民全員を守る覚悟が必要になるんだ。
というわけで、剣術の練習を始めたんだが、やっぱり前世の記憶というのは意味があるようで、それなりに動ける。
というのも、前世ではド田舎に住んでいて、武術だの剣術だの近所のじーさんが強制的に教えてくるようなところだったから、ある程度の護身術は幼なじみ連中全員で身につけさせられていた。
前世では刀が基準の剣術だったし、この世界でも少数ながら刀が存在するが、俺は使う気はない。
なんでかっていうと、そもそも俺が刀を十全に使えないというのがあるし、この世界の刀はアーティファクトで特定のダンジョンのレアドロップに指定されているからだ。
小器用でありながら雑な性格の俺には、切り裂く刀よりも押し切るロングソードの方が使い勝手がいいし、刀以外にろくに戦利品のないダンジョンにわざわざ潜る気がないんだ。
ダンジョン攻略は攻略特典で疾風の指輪が貰える昆虫系魔物の蔓延るダンジョンと、マナの指輪が貰えるトロールが蔓延るダンジョンのみで十分だ。
もちろん、その2つは終盤にならないと行けないゲルハルディ領にあるダンジョンで、ゲルハルディ領に住んでいる俺にとっては行きやすいダンジョンだ。
現在はまだ未発見のダンジョンのはずで、ダンジョンは発見者に優先攻略権が与えられるから、7歳になったらこの2つは率先してクリアしないとな。
疾風の指輪は1ターンに2回行動できるアクセサリーで、マナの指輪は毎ターンMPが回復するアクセサリー。
どちらも主人公にとられたら面倒くさいことになるし、他の装備は取られてもこの2つだけは取られちゃいけないものだ。
この世界での効果がどうなっているかは、入手してみないとわからないが、最強武器や最強防具よりも優先順位が高いアイテムなんだよな。
「マックス様、本当に剣術を習っていなかったんですか?」
「6歳児に何言ってるのさ。剣術どころか、ショートソードだって持ったことなかったよ」
「その割には様になっていますけど」
「クルトの教え方が良いんじゃない? 言われた通りに構えて、言われた通りに振ってるだけだよ」
「その、言われた通りに、というのが難しいのですよ」
「そうかな?」
「それよりも、本当に騎士団長や領主様に習わなくてもいいのですか? 恨みがましそうな目で見られていますが」
「いいのいいの。そもそも6歳児にハルバードやロングソードを持たせようとする人たちだよ? 自分たちの基準は普通じゃないって知る良い機会だよ」
「それは確かに普通じゃないですね」
「そうそう。それよりもクルトも、もっと砕けた口調でいいよ? 家族とか友人相手にもそんな感じじゃないでしょ?」
「? わたしは友人相手にもこんな感じですよ。さすがに家族には砕けた口調で話しますが、主家の嫡男にそのような言葉遣いはできませんし」
おっと、クルトは思っていたよりもまじめな性格のようだな。
確かに、前世でも友人だろうが取引先だろうが、丁寧語で話すという人は一定数いたし、そンな感じかな。
「そっかそっか。まあ、軽口が言い合えるくらいの関係の方がこれから楽なんだけど、クルトにとってそれが楽ならそれでいいよ」
「これから……ですか?」
「そうそう。今は平の団員かもしれないけど、俺が領主になるころには小隊長とか中隊長……少なくとも今よりは権限が上がっているでしょ?」
「そうなれればと思ってはいますが」
「真面目に怪我なく勤めていればなれるって。今の騎士団長やベテラン団員のほとんどは退団しているはずだし、クルトたちの時代が来るはずだよ」
「そう……なんですかね。あまり、現実味がないですが」
「だって、俺が領主になるのは10年後か20年後だよ。そうなってもらわないと困るよ。騎士団長なんて40とか50だよ? ま、そんな時に軽口を言える人間が騎士団にいてくれるっていうのは、領を守る領主にとっては心強いってことだよ」
「……精進します」
「うんうん、ぜひとも精進して強くなってね。俺は父上のように一騎当千、率先して戦いに出るなんてできないんだから、騎士団が強くなってもらわないとね」
「マックス様も強くあらねばなりませんよ」
「それは次期領主として当然。自分の身は自分で守る、領民のために戦う、これが基本だけど、領民の守り方は人それぞれだからね。俺は人を上手に使ってみんなを守るよ」
前世の俺には守るものは両親や幼なじみくらいだったけど、この世界ではそうも言っていられない。
自分の周囲を守れればそれでいいなんて、貴族に生まれて税金で生きている人間がほざいていい理論じゃない。
自分に能力があろうがなかろうが、自分のできる手段で領民全員を守る覚悟が必要になるんだ。
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