33 / 140
幼少期
33 レナとの再会
しおりを挟む
「あれ? 若様ですかい?」
「おー、みんな元気そうだな~」
「若様、帰ってきたの?」
「無事戻ったぞ~」
ゲルハルディ領の中でも屋敷のある街の近くまでくると、流石に領主の息子である俺の顔を知っている領民も増えてくる。
まあ、見回りって程じゃないけど、騎士たちと巡回に出たりはしていたからな。
「若様~、しばらく見なかったけどどこに行ってたの~?」
「ん~、領内を見回ってきたんだよ。俺も領主を継ぐためにいろいろやらなきゃならんからな~」
領民はほぼ全員が平民ってことで、こういう話し方をしてくると不敬だって言ってくる貴族も多いらしいが、ゲルハルディ領ではそういうのはない。
領主一族への敬意があれば、言葉遣いなんてどんなものでもいいし、そもそも辺境で敬語がどうのこうの言っても仕方ないからな。
「ぼく、領主邸に伝えに行ってくるよっ!」
「おいおい、もう目と鼻の先だから大丈夫だぞ?」
「やらせておきましょう、マックス様」
「クルト? 別に1時間もかからずにつくだろ?」
「だからこそですよ。旦那様も奥様もマックス様を出迎えるのに準備がいるでしょう」
「ん~??」
いるか? 確かに1か月ぶりの我が家だが、国王陛下を迎えるわけでもないのに準備なんていらんだろ。
あ~、でも温かい風呂とか準備されてた方が嬉しいか。
「マックス様、確かに帰還の手紙は出してはいますが、料理長たちも急にマックス様が戻られれば大変でしょう」
「あ~、確かに。昼はとってきたけど、屋敷に帰るころには夜飯も間近か」
貴族の屋敷だから食料自体は余分に保管してるだろうけど、それでも急に人数が増えるのは料理人たちの負担だからな、クルトの言うことももっともか。
その後も、街の人たちの歓迎を受けながら、俺たちは屋敷へと歩を進める。
「マックス様っ! とても……とても、心配しましたっ!」
「レナっ!」
屋敷までつくとレナが待っていてくれていた。
どうやら、俺たちの帰還を告げた住人の言葉を聞いてからずっと待っていてくれたらしい。
本当にいじらしい娘だ。
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫だよ。レナも勉強が進んでいるようだね。旅に出る前よりもずっと所作がきれいになっているよ」
レナは元々、メイドや影としては教育を受けていたけれど、貴族令嬢としてはそこそこの教育しか受けていなかった。
だが、俺がいなかった1ヶ月の間、かなりの特訓を受けたようで、これなら伯爵家に嫁ぐ令嬢として恥ずかしくない程度になっている。
「いいえ、まだまだです。お義母様からは及第点はいただきましたが、合格点には程遠いのです」
「ふふ、嬉しいな。俺のことも若様じゃなくて、マックス様って呼んでくれているし。母上のことも奥様じゃなくてお義母様と呼んでくれているんだね」
「……それは、お義母様に厳しく言われましたので」
使用人や部下の娘なら母上もそのままでいいと思っていたのだろうけど、レナは既に俺の婚約者となっているから、母上も厳しく教育したんだろうな。
それにしても、自分の婚約者から名前で呼ばれるのがこれほどにうれしいとは……うん、レナのことを一層、守らなきゃと思うな。
「マ~ックス! 帰ってきて早々、門前で語らっている場合ではありません! 話がありますから、さっさと屋敷に入りなさい!」
おっと、婚約者との逢瀬を楽しんでいたのに、鬼……もとい、母上に怒られてしまった。
ま、クルトたちも早く解放してやらないとならないしな。
「みな、これまでの旅、ご苦労だった。明日から4日間は旅の間にとれなかった休暇、その後は騎士団のスケジュールに戻ってくれ。騎士団長への帰還の挨拶を忘れないように」
「「「「「はっ!」」」」」
騎士団とはいえ、休暇の概念はあって、シフト制だから休日は人それぞれだが、まあ、1週間に1日はとれるようにしてある。
4週間の旅だったから、クルトたちには4日間の休暇が与えられる手はずとなっている。
「「マックス様、お帰りなさいませ」」
「ああ、みなも息災のようだな」
屋敷に中に入ると、執事、メイド長を筆頭に、見習いやメイドたちが俺に頭を下げてくる。
うん、こういう光景を見ると自分が貴族だという実感がわくな。
「マックス、ようやく帰ってきましたねバカ息子」
「母上、皆がいる前でバカとはひどいですね。何をそんなにお怒りなのですか?」
いろいろやらかした自覚はあるが、旅には母上も賛成していたよな?
「ダンジョン攻略のことです! 旅は許しましたが、流石に貴方の年齢でダンジョンに入るなど何を考えているのですかっ!?」
「母上、落ち着いてください。いろいろと事情があったのです。それについては、執務室でお話ししますので、ここでは」
なるほど、確かにダンジョンの危険性は貴族なら知っていることだし、自分の息子がダンジョンに勝手に入っていたら親として叱るのは当然か。
とはいえ、流石にダンジョン攻略、ダンジョンの情報についてはいくら使用人とは言え、他人のいる場所で話すことではない。
プリプリと怒る母上をなだめながら、執務室へとさっさと行ってしまおう。
「おー、みんな元気そうだな~」
「若様、帰ってきたの?」
「無事戻ったぞ~」
ゲルハルディ領の中でも屋敷のある街の近くまでくると、流石に領主の息子である俺の顔を知っている領民も増えてくる。
まあ、見回りって程じゃないけど、騎士たちと巡回に出たりはしていたからな。
「若様~、しばらく見なかったけどどこに行ってたの~?」
「ん~、領内を見回ってきたんだよ。俺も領主を継ぐためにいろいろやらなきゃならんからな~」
領民はほぼ全員が平民ってことで、こういう話し方をしてくると不敬だって言ってくる貴族も多いらしいが、ゲルハルディ領ではそういうのはない。
領主一族への敬意があれば、言葉遣いなんてどんなものでもいいし、そもそも辺境で敬語がどうのこうの言っても仕方ないからな。
「ぼく、領主邸に伝えに行ってくるよっ!」
「おいおい、もう目と鼻の先だから大丈夫だぞ?」
「やらせておきましょう、マックス様」
「クルト? 別に1時間もかからずにつくだろ?」
「だからこそですよ。旦那様も奥様もマックス様を出迎えるのに準備がいるでしょう」
「ん~??」
いるか? 確かに1か月ぶりの我が家だが、国王陛下を迎えるわけでもないのに準備なんていらんだろ。
あ~、でも温かい風呂とか準備されてた方が嬉しいか。
「マックス様、確かに帰還の手紙は出してはいますが、料理長たちも急にマックス様が戻られれば大変でしょう」
「あ~、確かに。昼はとってきたけど、屋敷に帰るころには夜飯も間近か」
貴族の屋敷だから食料自体は余分に保管してるだろうけど、それでも急に人数が増えるのは料理人たちの負担だからな、クルトの言うことももっともか。
その後も、街の人たちの歓迎を受けながら、俺たちは屋敷へと歩を進める。
「マックス様っ! とても……とても、心配しましたっ!」
「レナっ!」
屋敷までつくとレナが待っていてくれていた。
どうやら、俺たちの帰還を告げた住人の言葉を聞いてからずっと待っていてくれたらしい。
本当にいじらしい娘だ。
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫だよ。レナも勉強が進んでいるようだね。旅に出る前よりもずっと所作がきれいになっているよ」
レナは元々、メイドや影としては教育を受けていたけれど、貴族令嬢としてはそこそこの教育しか受けていなかった。
だが、俺がいなかった1ヶ月の間、かなりの特訓を受けたようで、これなら伯爵家に嫁ぐ令嬢として恥ずかしくない程度になっている。
「いいえ、まだまだです。お義母様からは及第点はいただきましたが、合格点には程遠いのです」
「ふふ、嬉しいな。俺のことも若様じゃなくて、マックス様って呼んでくれているし。母上のことも奥様じゃなくてお義母様と呼んでくれているんだね」
「……それは、お義母様に厳しく言われましたので」
使用人や部下の娘なら母上もそのままでいいと思っていたのだろうけど、レナは既に俺の婚約者となっているから、母上も厳しく教育したんだろうな。
それにしても、自分の婚約者から名前で呼ばれるのがこれほどにうれしいとは……うん、レナのことを一層、守らなきゃと思うな。
「マ~ックス! 帰ってきて早々、門前で語らっている場合ではありません! 話がありますから、さっさと屋敷に入りなさい!」
おっと、婚約者との逢瀬を楽しんでいたのに、鬼……もとい、母上に怒られてしまった。
ま、クルトたちも早く解放してやらないとならないしな。
「みな、これまでの旅、ご苦労だった。明日から4日間は旅の間にとれなかった休暇、その後は騎士団のスケジュールに戻ってくれ。騎士団長への帰還の挨拶を忘れないように」
「「「「「はっ!」」」」」
騎士団とはいえ、休暇の概念はあって、シフト制だから休日は人それぞれだが、まあ、1週間に1日はとれるようにしてある。
4週間の旅だったから、クルトたちには4日間の休暇が与えられる手はずとなっている。
「「マックス様、お帰りなさいませ」」
「ああ、みなも息災のようだな」
屋敷に中に入ると、執事、メイド長を筆頭に、見習いやメイドたちが俺に頭を下げてくる。
うん、こういう光景を見ると自分が貴族だという実感がわくな。
「マックス、ようやく帰ってきましたねバカ息子」
「母上、皆がいる前でバカとはひどいですね。何をそんなにお怒りなのですか?」
いろいろやらかした自覚はあるが、旅には母上も賛成していたよな?
「ダンジョン攻略のことです! 旅は許しましたが、流石に貴方の年齢でダンジョンに入るなど何を考えているのですかっ!?」
「母上、落ち着いてください。いろいろと事情があったのです。それについては、執務室でお話ししますので、ここでは」
なるほど、確かにダンジョンの危険性は貴族なら知っていることだし、自分の息子がダンジョンに勝手に入っていたら親として叱るのは当然か。
とはいえ、流石にダンジョン攻略、ダンジョンの情報についてはいくら使用人とは言え、他人のいる場所で話すことではない。
プリプリと怒る母上をなだめながら、執務室へとさっさと行ってしまおう。
202
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ソードオブマジック 異世界無双の高校生
@UnderDog
ファンタジー
高校生が始める異世界転生。
人生をつまらなく生きる少年黄金黒(こがねくろ)が異世界へ転生してしまいます。
親友のともはると彼女の雪とともにする異世界生活。
大事な人を守る為に強くなるストーリーです!
是非読んでみてください!
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる