気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

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幼少期

38 私的な会合

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「マックス、とりあえずはよくやった。これは陛下からの厚意だから、残さないように」

「わかっていますよ、父上」

 陛下との謁見を終わらせた俺と父上は、陛下が用意してくれた歓待を受けるために別室へと案内された。
 通された部屋にはそこそこの広さのテーブルと、軽食や甘味が用意されていた。
 俺が未成年なので、酒は父上の分だけ、俺にはジュースが用意されているし、軽食や甘味も少し物足りない程度……陛下からの歓待を残すのは失礼だから、確実に食べられる分だけ用意されているのだろう。

「しかし、隣で見ていてヒヤヒヤものだったな」

「やはり、マナー違反がありましたか?」

「目くじらを立てるほどではないがな。それに、今回は陛下が褒章を与える場、口調や言葉が間違っていなければ問題はない」

「及第点ということですか」

「ま、陛下との謁見など早々ないことだが、貴族学園に入学するまでにはその辺の勉強もしなければな」

「父上が教えてくださるので?」

「ペトラに任せる。その辺もペトラのほうが上手だ」

「ふふ、わかりました」

「親子での歓談中にすまないな」

 父上との平和な会話を楽しんでいると、なんと陛下が部屋の中に入ってきて声をかけてきた。
 隣には宰相、後ろには騎士を引き連れているが、ただの伯爵にこんな気軽に会いに来て良いものなのか?

「「国王陛下」」

「よい、ここは謁見場とは違って私的な場だ」

「……父上?」

「……はあ、陛下がそう言っているのなら良いのだろう」

「おう、ここでは旧友のクラウスと、その息子のマックスに会いに来た、ただのおっさんだ」

「……流石にそれは」

「で、陛下。何をしに? 歓待なら受けておりますが」

「そう、邪険にするな」

「……はあ、で、本当に何をしに?」

「言った通りだ、クラウスとマックスに国王としてではなく会いたくてな。……マックス、謁見場ではあえて聞かなかったが、本当に勇者の称号はいらんのだな」

「はい、いりません」

「勇者となれば、直ぐにでも爵位が貰えるぞ」

「その代わりにゲルハルディ伯爵にはなれず、婚約者とも別れなければならないのでしょう?」

「……そんなことはない、と言ってやりたいが、そうなるだろうな」

「では、いりません」

 勇者制度には、勇者は派閥の別なくダンジョンの攻略に注力すべき、という文言がある。
 勇者は王国の平和のために動く存在で、中立であるべきという考えからなのだが、勇者となれば辺境の領主にはなれないし、派閥で決められた婚約も解消させられる恐れがある。
 というか、勇者になればまだ婚約者のいない王女の誰かの婚約者にさせられるのは目に見えている。

「ま、いらんというものを押し付けるわけにもいかんか」

「陛下、ですが、そのせいで私の仕事が増えたのですがね」

「宰相、ダンジョン攻略のための特別費用の是非は我も気になっていた項目だ。どう考えても正規な使い方をされておらん」

「100年も経てば形骸化し、慣習として着服もするでしょう」

「だが、国民の血税だ。それを慣習だからと、着服するのがそもそもおかしい」

「わかりましたよ、そちらの精査もきちんとしておきます」

「ま、ゲルハルディ伯爵家が恨まれん程度にほどほどにな」

「はっ」

「クラウスもそれでよいな?」

「私は元々、王都の分配には文句はありませんので」

「ま、そういうことにしておくか」

 本来の使い方と違うことに使っていても、今まで文句を言われなかったのに、俺が上申したことで監査が入るとなれば、ゲルハルディ伯爵家が恨まれる。
 陛下と宰相、それに父上はそのあたりも考えて、今回の件を考えているのだろう。
 ま、父上の言う通り、ゲルハルディ伯爵家も王都へ納税をしている身ではあるが、分配に文句を言う立場にはない。
 特別費用の着服が無くなっても、他の必要なことに使われることになるだけで、税金が安くなるわけではないのだから、どっちでもいいっちゃどっちでもいいんだよな。
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