45 / 140
幼少期
45 家族会議・後半
しおりを挟む
「そこまで警戒するほどなのですか?」
母上が聞いてくるが、俺を含めてミネッティ伯爵令嬢の奇行を知っているレナと父上は考え込んでいる。
あの時の言動は貴族令嬢として常軌を逸してはいたが、あれから2年も経っているし、そもそも向こうは貴族学園の初等部に入学しているはずだ。
普通に考えれば少しはまともになっているはずだが、あの時の言動を考えるとどうなっているか読めないというのが本音だ。
「わかりません。あれからミネッティ伯爵令嬢はもちろん、ミネッティ伯爵ともお会いしていませんからね」
「うむ、エルメライヒ公爵も特にミネッティ伯爵については危機感を抱いてはいなかったし、どうなっているのか読めんな」
「私もです。あの時の無礼は身も震えるほどでしたが、あれから私も成長していますし、あの方が成長していないとは思えません」
「うーん、わからないということね」
「ええ、一口に成長と言ってもどの方向に成長しているかはわかりません。貴族令嬢としてまともになっているのか、それともあの考えのまま異端として成長しているのか……」
「それで、公爵家の後ろ盾ね」
「まあ、保険のようなものです。陛下に緊急時面会権を求めたのもこれが理由ですからね」
面倒事を避けるために他家の力が必要というのは情けない話だが、中央にいる貴族と地方にいる貴族では意識がまるで違う。
こちらが有り得ないと考えたことでも、中央では良しとされていることもあり、ミネッティ伯爵令嬢とゲルハルディ伯爵令息の争いが中央と地方の対立になってしまう恐れもある。
「伯爵令嬢との対立を陛下に奏上するのか?」
「父上、貴族学園には第三王女もいるのですよ?」
「まさか、第三王女が加担すると?」
「可能性の話ですよ。上の四人の王子殿下、王女殿下は優秀で聡明だと話は聞いていますが、下の二人、第三王子殿下と第三王女殿下は噂すら流れていませんからね」
「まあ、第一王子殿下は王太子筆頭、第二王子殿下は宰相を目指して努力中、第一王女殿下と第二王女殿下は友好国との婚約を進めているからな」
ちなみに、第一王子殿下は17歳、第二王子殿下は16歳、第一王女殿下は14歳、第二王女殿下は13歳だ。
さらに言うなら、第三王子殿下は10歳で第三王女殿下は9歳。
貴族学園は初等部が9年、高等部が3年で、貴族として生きていくためには高等部の卒業資格が必須。
俺とレナは高等部だけに通うつもりなので、在学期間がかぶるのは第三王女殿下だけだ。
「貴方、陛下から何か聞いていませんの?」
「第三王子殿下は公爵にするか辺境伯に婿にやるかで悩んでいるとは聞いたが、第三王女殿下については聞いていないな」
「つまり、これからどうなるかわからない存在。まともな貴族と交流を持てばよいのですが……」
「ミネッティ伯爵令嬢のような貴族の常識をないがしろにしている者と交流を持てば、わからんということか」
ま、ゲームでは第三王女も攻略対象というか、メインヒロインの1人で主人公とイチャコラしていたから警戒しているんだが、それは両親にもレナにも伝えられないしな。
それに既にシナリオからは大幅にずれてきているから、どこまで信用できるかはわからないが、警戒しておくに越したことはないだろう。
「はあ、王都での出来事はこれで最後?」
「そうですね。そもそもエルメライヒ公爵との会談自体が予定外のことですし」
「うむ、流石に陛下との謁見の翌日にアポを求めてくるとは思わなかったな。会談が終わったらすぐに準備をして王都を出たから特に問題はない」
「問題ないわけないでしょう! ひとまず問題はマックスがダンジョンを攻略したせいで有象無象が寄ってくる可能性です」
「まあ、その辺は私が気を付ければ良い話ですから」
「マックス! きちんと聞きなさい! 貴方はそれでいいでしょう、でもレナが不安に思うことを軽んじるのは許しませんからね!」
母上の言葉にハッとした、確かに俺自身はシナリオや設定を知っているから、これからどうなるか、自分がどう思われるかはわかっている。
これまで田舎者、地方の山猿と思われていたゲルハルディ家だが、王都貴族はもちろん、中央貴族もちやほやして持ち上げてくるのは目に見えている。
だが、レナにとっては全て知らないこと、不安に思ったり、俺がもっと爵位の高い人間になびくのではと思っても不思議ではない。
「申し訳ありませんでした、母上。レナとはきちんと話し合う時間を取ります。……というわけで、レナ。明日は暇かい?」
「……マックス様?」
「デートをしようか」
ニッコリと笑ってデートの誘いをしたのだが、レナはうつむいてしまった。
うーむ、これはオッケーってことでいいのか?
母上が聞いてくるが、俺を含めてミネッティ伯爵令嬢の奇行を知っているレナと父上は考え込んでいる。
あの時の言動は貴族令嬢として常軌を逸してはいたが、あれから2年も経っているし、そもそも向こうは貴族学園の初等部に入学しているはずだ。
普通に考えれば少しはまともになっているはずだが、あの時の言動を考えるとどうなっているか読めないというのが本音だ。
「わかりません。あれからミネッティ伯爵令嬢はもちろん、ミネッティ伯爵ともお会いしていませんからね」
「うむ、エルメライヒ公爵も特にミネッティ伯爵については危機感を抱いてはいなかったし、どうなっているのか読めんな」
「私もです。あの時の無礼は身も震えるほどでしたが、あれから私も成長していますし、あの方が成長していないとは思えません」
「うーん、わからないということね」
「ええ、一口に成長と言ってもどの方向に成長しているかはわかりません。貴族令嬢としてまともになっているのか、それともあの考えのまま異端として成長しているのか……」
「それで、公爵家の後ろ盾ね」
「まあ、保険のようなものです。陛下に緊急時面会権を求めたのもこれが理由ですからね」
面倒事を避けるために他家の力が必要というのは情けない話だが、中央にいる貴族と地方にいる貴族では意識がまるで違う。
こちらが有り得ないと考えたことでも、中央では良しとされていることもあり、ミネッティ伯爵令嬢とゲルハルディ伯爵令息の争いが中央と地方の対立になってしまう恐れもある。
「伯爵令嬢との対立を陛下に奏上するのか?」
「父上、貴族学園には第三王女もいるのですよ?」
「まさか、第三王女が加担すると?」
「可能性の話ですよ。上の四人の王子殿下、王女殿下は優秀で聡明だと話は聞いていますが、下の二人、第三王子殿下と第三王女殿下は噂すら流れていませんからね」
「まあ、第一王子殿下は王太子筆頭、第二王子殿下は宰相を目指して努力中、第一王女殿下と第二王女殿下は友好国との婚約を進めているからな」
ちなみに、第一王子殿下は17歳、第二王子殿下は16歳、第一王女殿下は14歳、第二王女殿下は13歳だ。
さらに言うなら、第三王子殿下は10歳で第三王女殿下は9歳。
貴族学園は初等部が9年、高等部が3年で、貴族として生きていくためには高等部の卒業資格が必須。
俺とレナは高等部だけに通うつもりなので、在学期間がかぶるのは第三王女殿下だけだ。
「貴方、陛下から何か聞いていませんの?」
「第三王子殿下は公爵にするか辺境伯に婿にやるかで悩んでいるとは聞いたが、第三王女殿下については聞いていないな」
「つまり、これからどうなるかわからない存在。まともな貴族と交流を持てばよいのですが……」
「ミネッティ伯爵令嬢のような貴族の常識をないがしろにしている者と交流を持てば、わからんということか」
ま、ゲームでは第三王女も攻略対象というか、メインヒロインの1人で主人公とイチャコラしていたから警戒しているんだが、それは両親にもレナにも伝えられないしな。
それに既にシナリオからは大幅にずれてきているから、どこまで信用できるかはわからないが、警戒しておくに越したことはないだろう。
「はあ、王都での出来事はこれで最後?」
「そうですね。そもそもエルメライヒ公爵との会談自体が予定外のことですし」
「うむ、流石に陛下との謁見の翌日にアポを求めてくるとは思わなかったな。会談が終わったらすぐに準備をして王都を出たから特に問題はない」
「問題ないわけないでしょう! ひとまず問題はマックスがダンジョンを攻略したせいで有象無象が寄ってくる可能性です」
「まあ、その辺は私が気を付ければ良い話ですから」
「マックス! きちんと聞きなさい! 貴方はそれでいいでしょう、でもレナが不安に思うことを軽んじるのは許しませんからね!」
母上の言葉にハッとした、確かに俺自身はシナリオや設定を知っているから、これからどうなるか、自分がどう思われるかはわかっている。
これまで田舎者、地方の山猿と思われていたゲルハルディ家だが、王都貴族はもちろん、中央貴族もちやほやして持ち上げてくるのは目に見えている。
だが、レナにとっては全て知らないこと、不安に思ったり、俺がもっと爵位の高い人間になびくのではと思っても不思議ではない。
「申し訳ありませんでした、母上。レナとはきちんと話し合う時間を取ります。……というわけで、レナ。明日は暇かい?」
「……マックス様?」
「デートをしようか」
ニッコリと笑ってデートの誘いをしたのだが、レナはうつむいてしまった。
うーむ、これはオッケーってことでいいのか?
216
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました
竹桜
ファンタジー
誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。
その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。
男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。
自らの憧れを叶える為に。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる