60 / 140
幼少期
60 エルメライヒ公爵令嬢の到着
しおりを挟む
「エルメライヒ公爵令嬢が参りました」
「うむ、お通しせよ」
エルメライヒ公爵令嬢がゲルハルディ領にやってきたが、まともな先触れもなく訪れた人間はたとえ公爵令嬢であってもまともに応対する必要なし、というのが我が家の共通認識。
一応の挨拶はするものの玄関まで出迎えることはせず、応接室に父上、母上、俺、レナの4人がそろって会うことにした。
まだまだ他の貴族に会わせるわけにはいかないアンナとカリンは部屋に残し、領主夫妻が応対したという実績のための父上と母上、実際に応対する人間として俺とレナが会う形だ。
「エルメライヒ公爵令嬢のご入室です」
「うむ」
入室してきたのは侍女とメイドを引き連れた令嬢で、確かにゲームの設定資料集にあったままの幼いラスボスだった。
公爵令嬢とはいえ爵位を継ぐ前は無位無官ということで、爵位持ちの父上に対して見事なカーテシーを披露した。
「楽にせよ」
「ありがとうございます。ゲルハルディ伯爵様」
「うむ、ゲルハルディ伯爵であるクラウスだ。こちらは妻のペトラだ」
「ご挨拶ありがとうございます。エルメライヒ公爵が一子、ローズマリー・フォン・エルメライヒと申します」
「長旅だったようだが、生憎とこちらも予定が詰まっていてな。私もペトラも相手をすることが叶わぬ。息子とその婚約者を付ける故、何かあれば申し付けよ」
「ありがとうございます、初めまして、ゲルハルディ伯爵令息様」
「領内のご案内をさせて頂きます、マックス・フォン・ゲルハルディと申します。こちらは私の婚約者であるレナ・フォン・バルディです」
「ご挨拶ありがとうございます」
貴族としてのルールをぶっちしたエルメライヒ公爵令嬢だが、こちらまでぶしつけな態度をとる必要もないので挨拶自体は和やかに進む。
ちなみに、父上がやたらと尊大な話し方をしているが、これは貴族としては当然で同じ派閥の顔見知りならともかく、他派閥の格下相手にはこちらが上だと示す必要がある。
後々、爵位が逆転する可能性が高くても、そうしなければ他派閥の貴族に舐められるし、自派閥の貴族の不利益になるからな。
「では、執事に客室まで案内させよう。荷物も運びこまねばならんだろう」
「お気遣い感謝いたしますわ」
「ヨーゼフ頼むぞ」
「かしこまりました、旦那様」
本来なら滞在者にはこちらで侍女やメイドを貸し出すのが通例なのだが、エルメライヒ公爵令嬢はかなりの人数の侍女とメイドを連れていたので、こちらからは執事を案内に出すだけにした。
ま、勝手に来てしまったのだから、これくらいの対応にとどめておくのが良いという判断だな。
「というわけで、マックス、レナ、案内を頼む」
エルメライヒ公爵令嬢が部屋を出て、しばらく経つと父上が絞り出すように俺たちに話しかけてきた。
まあ、陛下とか宰相閣下とか上位の人間と会う機会はあるものの、2人は貴族学園時代の同期でもあり、わりと気安い関係だ。
本当に上位の存在であるものの、下にみなければならないという面倒な状況に疲れても仕方がないな。
「わかりましたよ……案内とは言いましたが、どこまで連れ出していいんです?」
「屋敷内、訓練所……あとは、この街から出なければ街に出てもよい」
「いいんですか?」
「お前とレナが護衛に着くことが条件だがな。あと、騎士団から何人か連れていけ」
「ま、エルメライヒ公爵令嬢が望むならそうしましょう」
「はぁ……本当に何をしに来たんだが」
「挨拶でも特に何も言っていませんでしたしね。あとで探りを入れておきますよ」
「……たのむ」
「本当にお願いね。急に来たことに対する対応というのもあるけど、私とクラウスが忙しいのは本当だから、何かあっても対応はできないものと思ってね」
「わかっておりますよ、母上。夜にでも集まって情報のすり合わせをしましょう」
「ええ、本当にお願いね、レナも」
「わかっています、お義母様。対応のメインはマックス様ですけど、女性同士にしかわからない部分ではサポートさせて頂きます」
「ああ、流石に俺では案内できないところもあるからな。出来る限り、ついているようにはするけど……」
本当に何をしに来たのかわからないが、相手はラスボス公爵令嬢だからな。
こちらの不利益にならないように、うまく立ち回らないとな。
「うむ、お通しせよ」
エルメライヒ公爵令嬢がゲルハルディ領にやってきたが、まともな先触れもなく訪れた人間はたとえ公爵令嬢であってもまともに応対する必要なし、というのが我が家の共通認識。
一応の挨拶はするものの玄関まで出迎えることはせず、応接室に父上、母上、俺、レナの4人がそろって会うことにした。
まだまだ他の貴族に会わせるわけにはいかないアンナとカリンは部屋に残し、領主夫妻が応対したという実績のための父上と母上、実際に応対する人間として俺とレナが会う形だ。
「エルメライヒ公爵令嬢のご入室です」
「うむ」
入室してきたのは侍女とメイドを引き連れた令嬢で、確かにゲームの設定資料集にあったままの幼いラスボスだった。
公爵令嬢とはいえ爵位を継ぐ前は無位無官ということで、爵位持ちの父上に対して見事なカーテシーを披露した。
「楽にせよ」
「ありがとうございます。ゲルハルディ伯爵様」
「うむ、ゲルハルディ伯爵であるクラウスだ。こちらは妻のペトラだ」
「ご挨拶ありがとうございます。エルメライヒ公爵が一子、ローズマリー・フォン・エルメライヒと申します」
「長旅だったようだが、生憎とこちらも予定が詰まっていてな。私もペトラも相手をすることが叶わぬ。息子とその婚約者を付ける故、何かあれば申し付けよ」
「ありがとうございます、初めまして、ゲルハルディ伯爵令息様」
「領内のご案内をさせて頂きます、マックス・フォン・ゲルハルディと申します。こちらは私の婚約者であるレナ・フォン・バルディです」
「ご挨拶ありがとうございます」
貴族としてのルールをぶっちしたエルメライヒ公爵令嬢だが、こちらまでぶしつけな態度をとる必要もないので挨拶自体は和やかに進む。
ちなみに、父上がやたらと尊大な話し方をしているが、これは貴族としては当然で同じ派閥の顔見知りならともかく、他派閥の格下相手にはこちらが上だと示す必要がある。
後々、爵位が逆転する可能性が高くても、そうしなければ他派閥の貴族に舐められるし、自派閥の貴族の不利益になるからな。
「では、執事に客室まで案内させよう。荷物も運びこまねばならんだろう」
「お気遣い感謝いたしますわ」
「ヨーゼフ頼むぞ」
「かしこまりました、旦那様」
本来なら滞在者にはこちらで侍女やメイドを貸し出すのが通例なのだが、エルメライヒ公爵令嬢はかなりの人数の侍女とメイドを連れていたので、こちらからは執事を案内に出すだけにした。
ま、勝手に来てしまったのだから、これくらいの対応にとどめておくのが良いという判断だな。
「というわけで、マックス、レナ、案内を頼む」
エルメライヒ公爵令嬢が部屋を出て、しばらく経つと父上が絞り出すように俺たちに話しかけてきた。
まあ、陛下とか宰相閣下とか上位の人間と会う機会はあるものの、2人は貴族学園時代の同期でもあり、わりと気安い関係だ。
本当に上位の存在であるものの、下にみなければならないという面倒な状況に疲れても仕方がないな。
「わかりましたよ……案内とは言いましたが、どこまで連れ出していいんです?」
「屋敷内、訓練所……あとは、この街から出なければ街に出てもよい」
「いいんですか?」
「お前とレナが護衛に着くことが条件だがな。あと、騎士団から何人か連れていけ」
「ま、エルメライヒ公爵令嬢が望むならそうしましょう」
「はぁ……本当に何をしに来たんだが」
「挨拶でも特に何も言っていませんでしたしね。あとで探りを入れておきますよ」
「……たのむ」
「本当にお願いね。急に来たことに対する対応というのもあるけど、私とクラウスが忙しいのは本当だから、何かあっても対応はできないものと思ってね」
「わかっておりますよ、母上。夜にでも集まって情報のすり合わせをしましょう」
「ええ、本当にお願いね、レナも」
「わかっています、お義母様。対応のメインはマックス様ですけど、女性同士にしかわからない部分ではサポートさせて頂きます」
「ああ、流石に俺では案内できないところもあるからな。出来る限り、ついているようにはするけど……」
本当に何をしに来たのかわからないが、相手はラスボス公爵令嬢だからな。
こちらの不利益にならないように、うまく立ち回らないとな。
187
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ソードオブマジック 異世界無双の高校生
@UnderDog
ファンタジー
高校生が始める異世界転生。
人生をつまらなく生きる少年黄金黒(こがねくろ)が異世界へ転生してしまいます。
親友のともはると彼女の雪とともにする異世界生活。
大事な人を守る為に強くなるストーリーです!
是非読んでみてください!
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる