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幼少期
71 フィッシャー商会との話し合い
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「ゲルハルディ領、次期領主マックス・フォン・ゲルハルディだ。挨拶を許す」
「フィッシャー商会が三女、アイリーン・フィッシャーと申します」
トーマス叔父さんの話を聞いて、応接室に入ると一人の少女が両ひざ立ちで伏せていた。
ゲルハルディ領では貴族とか平民とかのくくりが薄いが、やはり領主一家と直に会うのなら礼儀というのは大事だ。
騎士や男性貴族は上位の者に会う場合は片膝立ちで、貴族女性はカーテシー、平民が貴族に会う場合は両ひざ立ちで顔を伏せるのが礼儀だ。
もちろん、上位の者が言葉を発するまでは下位の者は口を開いてはいけないし、顔を上げるのも許されないというわけだ。
異世界あるあるらしいが、意外にも前の世界でもこの手のマナーは普通にあったし、俺にとってはそこまで珍しいもんでもない。
前の世界でもノック直後の入室とか、上位者や同行者の振りもなしに勝手に挨拶するのは嫌がられたからな。
その点、アイリーン・フィッシャーはきちんと分をわきまえているようだな。
「フィッシャー嬢、トーマス、話は座ってしようか」
「「ありがとうございます」」
普段はトーマス叔父さんのことはトーマス叔父さんと呼んでいるが、流石に第三者のいる場でそういうわけにもいかないので名前呼びである。
基本的にこの世界では親しい仲なら名前呼び、そうでもなければ嬢や殿をつけ、それ以前なら名字で呼ぶって感じだ。
まあ、上位者なら全員名前呼びだったり、子供相手なら君付けやちゃん付けってこともあるから絶対の正解はないがな。
「で、なにやらフィッシャー商会はアンドレ商会に物言いがあるとか」
「はい、アンドレ商会がフィッシャー商会の領域を犯したことへの抗議です」
「ふむ、王宮から品物の問い合わせがあった件だな」
「はい、王宮……王都はフィッシャー商会の領分です。それを犯して他の商会が問い合わせを受けるのは許せません」
「それについてはこちらから謝罪をしよう。すまなかった」
俺がきちんと頭を下げて謝罪したことで、アイリーンが息を呑むのがわかる。
この世界では前世の小説によくあったように貴族が平民に何をしてもいいという世界ではなく、貴族も平民に敬意を払うべきという風潮がある。
それでも、貴族が平民に頭を下げるというは、やはりそうそうないことではあるのだ。
「あ、頭をお上げください」
「ふむ、そちらを委縮させるのも本意ではないな。王宮からの件はアンドレ商会に非はない。攻めを受けるべきはゲルハルディ家なのだ」
「どういうことですか?」
「問い合わせがあったのはウイスキーボンボン……平たく言えばウイスキーをチョコレートで包んだものだ。これを国王陛下に紹介したのが私だ」
「……ウイスキー」
「ゲルハルディ領にはヒッペからのウイスキー、バルディから輸入されるチョコレートがあるから特産品として考えていたのだが、思いのほか評判が良くてな」
「・・・」
「陛下には安定した供給が出来ないから贈答品と伝えたのだが、王宮の一部が先走ってアンドレ商会に問い合わせをしてしまったようだ。こちらから抗議はしたが、噂が回ってしまったのだろう」
「そういう……ことでしたか」
「試作を請け負ってもらったのがアンドレ商会だったが、正式な販売を行う際にはフィッシャー商会を含めた他商会にも頼むつもりではあった」
まあ、これは本当。アンドレ商会はゲルハルディ家の御用達ってこともあるが、ユリア叔母さんがいるからいろいろと頼みやすいが、軋轢を考えれば他の商会を蔑ろにするわけにはいかないからな。
ウイスキーボンボンの正式販売は王都と北東辺境伯領を中心に考えていたから、そこら辺を生業にしている商会に声をかける気ではいたんだぞ。
「では、今からでもフィッシャー商会に王宮への対応をお任せくださいますか?」
「それとこれとは別の話だ。混乱させたのは悪いと思っているが、ウイスキーボンボンはゲルハルディ領の特産品として考えている商品だ。安売りはできない」
「こちらからも何か提供しろと?」
「即座に動きたければそうだな。……リスクを負いたくなければしばらく待て。他貴族への根回し、材料を安定供給するための策、数年は商売にはならないからな」
現在の状況でウイスキーボンボンの製作方法を教えても、まともに販売するほどの量は作れない。
特に父上や母上、陛下などの酒飲み連中にとっては垂涎の代物だけに、奪い合いも起きるだろうし、取引相手が上位貴族になるのが問題だ。
フィッシャー商会は王都で商売をしている関係上、下位貴族なら対応はお手の物だろう。
だが、礼儀にうるさい王宮の高位貴族、普通の貴族とは価値観が違う辺境伯の関係者などの対応は難しいだろう。
「フィッシャー商会が三女、アイリーン・フィッシャーと申します」
トーマス叔父さんの話を聞いて、応接室に入ると一人の少女が両ひざ立ちで伏せていた。
ゲルハルディ領では貴族とか平民とかのくくりが薄いが、やはり領主一家と直に会うのなら礼儀というのは大事だ。
騎士や男性貴族は上位の者に会う場合は片膝立ちで、貴族女性はカーテシー、平民が貴族に会う場合は両ひざ立ちで顔を伏せるのが礼儀だ。
もちろん、上位の者が言葉を発するまでは下位の者は口を開いてはいけないし、顔を上げるのも許されないというわけだ。
異世界あるあるらしいが、意外にも前の世界でもこの手のマナーは普通にあったし、俺にとってはそこまで珍しいもんでもない。
前の世界でもノック直後の入室とか、上位者や同行者の振りもなしに勝手に挨拶するのは嫌がられたからな。
その点、アイリーン・フィッシャーはきちんと分をわきまえているようだな。
「フィッシャー嬢、トーマス、話は座ってしようか」
「「ありがとうございます」」
普段はトーマス叔父さんのことはトーマス叔父さんと呼んでいるが、流石に第三者のいる場でそういうわけにもいかないので名前呼びである。
基本的にこの世界では親しい仲なら名前呼び、そうでもなければ嬢や殿をつけ、それ以前なら名字で呼ぶって感じだ。
まあ、上位者なら全員名前呼びだったり、子供相手なら君付けやちゃん付けってこともあるから絶対の正解はないがな。
「で、なにやらフィッシャー商会はアンドレ商会に物言いがあるとか」
「はい、アンドレ商会がフィッシャー商会の領域を犯したことへの抗議です」
「ふむ、王宮から品物の問い合わせがあった件だな」
「はい、王宮……王都はフィッシャー商会の領分です。それを犯して他の商会が問い合わせを受けるのは許せません」
「それについてはこちらから謝罪をしよう。すまなかった」
俺がきちんと頭を下げて謝罪したことで、アイリーンが息を呑むのがわかる。
この世界では前世の小説によくあったように貴族が平民に何をしてもいいという世界ではなく、貴族も平民に敬意を払うべきという風潮がある。
それでも、貴族が平民に頭を下げるというは、やはりそうそうないことではあるのだ。
「あ、頭をお上げください」
「ふむ、そちらを委縮させるのも本意ではないな。王宮からの件はアンドレ商会に非はない。攻めを受けるべきはゲルハルディ家なのだ」
「どういうことですか?」
「問い合わせがあったのはウイスキーボンボン……平たく言えばウイスキーをチョコレートで包んだものだ。これを国王陛下に紹介したのが私だ」
「……ウイスキー」
「ゲルハルディ領にはヒッペからのウイスキー、バルディから輸入されるチョコレートがあるから特産品として考えていたのだが、思いのほか評判が良くてな」
「・・・」
「陛下には安定した供給が出来ないから贈答品と伝えたのだが、王宮の一部が先走ってアンドレ商会に問い合わせをしてしまったようだ。こちらから抗議はしたが、噂が回ってしまったのだろう」
「そういう……ことでしたか」
「試作を請け負ってもらったのがアンドレ商会だったが、正式な販売を行う際にはフィッシャー商会を含めた他商会にも頼むつもりではあった」
まあ、これは本当。アンドレ商会はゲルハルディ家の御用達ってこともあるが、ユリア叔母さんがいるからいろいろと頼みやすいが、軋轢を考えれば他の商会を蔑ろにするわけにはいかないからな。
ウイスキーボンボンの正式販売は王都と北東辺境伯領を中心に考えていたから、そこら辺を生業にしている商会に声をかける気ではいたんだぞ。
「では、今からでもフィッシャー商会に王宮への対応をお任せくださいますか?」
「それとこれとは別の話だ。混乱させたのは悪いと思っているが、ウイスキーボンボンはゲルハルディ領の特産品として考えている商品だ。安売りはできない」
「こちらからも何か提供しろと?」
「即座に動きたければそうだな。……リスクを負いたくなければしばらく待て。他貴族への根回し、材料を安定供給するための策、数年は商売にはならないからな」
現在の状況でウイスキーボンボンの製作方法を教えても、まともに販売するほどの量は作れない。
特に父上や母上、陛下などの酒飲み連中にとっては垂涎の代物だけに、奪い合いも起きるだろうし、取引相手が上位貴族になるのが問題だ。
フィッシャー商会は王都で商売をしている関係上、下位貴族なら対応はお手の物だろう。
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