気づいたら美少女ゲーの悪役令息に転生していたのでサブヒロインを救うのに人生を賭けることにした

高坂ナツキ

文字の大きさ
73 / 140
幼少期

73 マックス様の支え方(レナ視点)

しおりを挟む
 ローズマリー様と、その侍女ロッテ様とのお茶会で言われていたことをずっと考えていました。
 マックス様のために私が出来ることは何なのだろう……と。
 影としての教育を受けていた私は、マックス様を守ることにおいては誰にも負けない自信はあります。

 ですが、マックス様の隣に立って戦うには不十分なのです。
 次期領主としてのマックス様の隣になら努力を重ねれば立つことは出来ます。
 でも、商売のこと、そして戦闘となれば私はマックス様の足を引っ張ることしかできない。

 だからでしょうか、トーマス様がフィッシャー商会のお嬢様を連れてきたという話を聞いたときに、会ってみたいと思ったのは。
 次期領主夫人としての教育でフィッシャー商会のことも調べていて、それなりの力を持つ商会であり、三姉妹はそれぞれが商売に聡い令嬢だということは知っていました。
 ですが、応接室の隣室……側仕えが準備をする部屋で話し合いを盗み聞きしていた時に思ったのです、マックス様を支えるためにこの方が欲しいと。

「フィッシャー様、私とお友達になりませんか?」

「レナ、それはさっきも聞いたが、どういうことだ?」

「マックス様、私がお友達を増やすのは反対ですか?」

「いや、そうではないけど……」

「マックス様、フィッシャー商会との話し合い、急な訪問への叱責は済んだのでしょう? それなら、私はフィッシャー様をお茶会に誘いたいのですが?」

「…………はぁ。わかった、レナの好きにするといい。フィッシャー嬢、一応もう一度言っておくがアポなしの訪問はもうしないように」

 私が折れることはないとわかったマックス様が、反対に折れてくださいました。……ふふ、こういう優しいところもマックス様のかわいいところですね。
 改めてマックス様とトーマス様にお礼を申し上げて、私とフィッシャー様は客間へと移動することにしました。
 流石に初見の人を私室に通すわけにはまいりませんし、ゲルハルディ家には来客を招くためのお部屋もあるのでそちらを利用させていただく形ですね。


「急に声をかけてしまって申し訳なかったわね。もう一度紹介させて。私はマックス様の婚約者でレナ・フォン・バルディ。……あなたは?」

「わ……わたしはアイリーン・フィッシャーと申します」

 うん、まずは自己紹介。小さいころからマックス様の影として、その後も次期領主夫人としての教育を受けていた私は常識がないけれど、自己紹介が大事なのはわかっています。
 でも、フィッシャー様……多分、これが通常の対応ではないわよね。

「さっきも言ったけれど、私はあなたとお友達になりたいの」

「どうして、う……わたしと?」

「マックス様を支えたい。そのためにはあなたとお友達になるのが良いと思ったからよ」

「……」

「ふふ、わかるわ。今さっきやり込められた相手のためになるようなことはしたくないって顔ね。でも、あなたにとってもメリットのある話でしょう?」

「うち……いいえ、わたしにとっても?」

「話し方は楽なようにしていいわよ。私は次期領主夫人として話し方を崩すわけにはいかないけどね」

「はぁ~、わかった。……で、ウチにとってのメリットって?」

 やっとこっちを見てくれたようね。そうか、フィッシャー様は自分のことをウチって呼ぶのね。
 確か、エンケの方にはそういった方言があったはず……フィッシャー様のお母様がそちらの出身なのかしら?

「次期領主夫人に気に入られるのはフィッシャー商会にとって大きなメリットでしょう?」

「……それは確かに。……でも、それはウチにとってのメリットであって、次期伯爵夫人様のメリットにはならないでしょ」

「私のことはレナと呼んで、その代わりあなたのこともアイリーンと呼んでいいかしら?」

「う……わ、わかりました」

「そうね、私の一番はマックス様を支えることだから、アイリーンがマックス様の商売を支えてくれる……それだけで大きなメリットよ」

「……レナ様の考えはわかったわ。でも、次期領主様にそこまでする価値があるの?」

「アイリーン、お話し合いで話題になっていた新商品……ウイスキーボンボンの作り方を発見したのはマックス様よ」

「? ……?? 伯爵家の料理長が作り出したのでは?」

「作ったのは料理長。でも、作り方を指示したのはマックス様よ」

「……はっ!?」

 ふふ、アイリーンの顔色が変わったわね。そうよね、私も不思議だけど、マックス様は7歳とは思えないくらいの知識を有しているのよね。
 マックス様はいつも誰が思いついても不思議じゃないし運だからと言っていますけど、普通じゃないわよね。

「マックス様は次期領主としても素晴らしいけれど、商人としても騎士としても素晴らしい方よ。……けれど、私では支えきれない。だからアイリーンにも支えてほしいの。商人として」

「……ウチは……すみません。少し考えさせてください」

「そうね、急すぎたものね。でも、お友達になりたいのは本当だから、またお茶会に誘ってもいいかしら?」

「はい」

 マックス様を支えるためには私一人では不十分。だけど、一緒に支えてくれる人がいれば大丈夫だと思うの。
 アイリーンは私と一緒にマックス様を支えてくれるかしら?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

ソードオブマジック 異世界無双の高校生

@UnderDog
ファンタジー
高校生が始める異世界転生。 人生をつまらなく生きる少年黄金黒(こがねくろ)が異世界へ転生してしまいます。 親友のともはると彼女の雪とともにする異世界生活。 大事な人を守る為に強くなるストーリーです! 是非読んでみてください!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...