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幼少期
81 風雲急を告げる
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夏も終わりに近づき、エンケ領での視察も大体が終わったということで、俺たちはバルディ領に向けて出発していた。
バルディ領が襲撃されるのは秋で、宿泊、休憩なんかを考慮した移動時間を考えても、秋までにはバルディ領に十分にたどり着くという時期に出発できた。
「クルト、バルディ領には連絡してくれたんだよな?」
「はいマックス様。エンケ領の騎士に伝令を送ってもらうように頼んでありますよ」
この世界は前世の世界同様、電気もあれば家電もあるが、伝令手段に関しては未発達だ。
というのも、この世界は前世とは違って、あらゆるところにモンスターが蔓延っているので、電線やらケーブルやらを各町間、各領間で延ばすことができない。
街中では簡易的な電話も開発されているのだが、その規模が一向に国単位、世界単位で発達しない原因だな。
電波を使えばいいじゃん、なんて軽く考えるかもしれんが、電波の使い方なんぞ素人には分からんし、そこまでの技術発達はまだまだ見込めないのが現状だな。
で、何が言いたいかというと、この世界で連絡を行うためにはモンスターを倒せる騎士が行うのが普通ってことだ。
手紙の配達なんかを行う業者もいるが、そちらはモンスターに襲われたら荷物を捨てて逃げたりすることもあるので、信用度は低めだな。
なんで、バルディ領への連絡は騎士を使うのだが、俺やレナの護衛に連れてきている騎士を使うのはクルトに反対されているので、訪れた領の騎士にお願いしているというわけだ。
もちろん、きちんと謝礼を渡しているし、無理にやらせているわけではない。
「んじゃあ、こっちはのんびりと旅を楽しむかね」
「護衛している側としては、のんびりとはいきませんけどね」
「まあまあ、俺もレナも自衛くらいはできるしそこまで堅苦しく考えなくていいって」
「わかってはいますが、それとこれとは別ですから」
ま、護衛騎士が護衛に専念しなかったら、騎士失格というか、仕事しろって言われるしな。
「ん? クルト、なんか向こうから土煙が見えるが、なんだ?」
「本当ですか? ……なんでしょうね? この辺りにはあれほどの土煙を出すモンスターは生息していないはずですが……」
「新種か?」
「総員! 警戒体制に移行!」
クルトが声を上げると俺とレナを前後に挟んで移動していた、護衛騎士が前方へと固まる。
今回の旅では全員が馬での移動となっているので、騎士たちも俺やレナも馬上で戦闘体制へと移行する。
「マックス様……あれは、馬ではありませんか?」
「レナ、本当かい?」
「はい、魔法で視力を上げてみましたが、騎士が乗っている馬のようです」
レナは風と闇の2属性の魔法を使えるが、魔法の射程が本人の周囲50cmしかないという欠点がある。
ま、風魔法も闇魔法もバフが充実している属性なので、そこまでの欠点ではないのだが、それもあってゲーム内では便利アイテム以上の扱いを受けなかったわけだ。
「クルト、騎士に合図をして速度を落とすようにさせろ」
「はっ!」
クルトに命令すると、護衛騎士の一部が即座に荷物の中から手旗を用意する。
これはゲルハルディ領周辺で使われているもので、騎士同士の連絡手段としても用いられているものだな。
手旗で合図を送ると、土煙はみるみるうちに小さくなり、俺の眼でも走ってきているのが馬に乗った騎士だと確認できるようになった。
「ゲルハルディ伯爵令息様、バルディ男爵令嬢様、御前失礼いたします」
「かしこまった挨拶は良い。バルディ領の騎士のルッツだな。急いでいたようだが、何かあったのか?」
「はっ! 急報です。バルディ領の海上にて不審な船が発見されました。敵襲の恐れがあるので、ゲルハルディ伯爵令息様一行にはゲルハルディ領への避難を、とのことです」
「敵襲!? いつもの交易船とは違うのだな?」
「はっ! マストに掲げている旗がいつもとは違っていたのです。バルディ領に滞在していた交易国の人間によると、南大陸で争っている敵国とのことで」
このタイミングで南大陸からの敵襲……あまりにも、早すぎる!
「クルト、ここからバルディ領まではどれくらいかかる?」
「休息なしで行けば、およそ1日かと」
「では、急ぐぞ! ルッツ、まだ走れるか?」
「ゲルハルディ伯爵令息様! 御身が危険です! 急ぎ避難を!」
「それは聞けん! 友好領……それも大事な婚約者の生まれ故郷が危険にされされているというのに、逃げるなど次期領主として、貴族としてできんことだ!」
「ですが!」
「ルッツ、俺たちはバルディ領へと向かう! その旨をゲルハルディ領にいる父上と母上、それにレナの父であるテオに伝えてくれ。バルディ領のことはこちらに任せてほしいとな」
「~~……はっ! 承知致しました!」
バルディ領が襲撃されるのは秋で、宿泊、休憩なんかを考慮した移動時間を考えても、秋までにはバルディ領に十分にたどり着くという時期に出発できた。
「クルト、バルディ領には連絡してくれたんだよな?」
「はいマックス様。エンケ領の騎士に伝令を送ってもらうように頼んでありますよ」
この世界は前世の世界同様、電気もあれば家電もあるが、伝令手段に関しては未発達だ。
というのも、この世界は前世とは違って、あらゆるところにモンスターが蔓延っているので、電線やらケーブルやらを各町間、各領間で延ばすことができない。
街中では簡易的な電話も開発されているのだが、その規模が一向に国単位、世界単位で発達しない原因だな。
電波を使えばいいじゃん、なんて軽く考えるかもしれんが、電波の使い方なんぞ素人には分からんし、そこまでの技術発達はまだまだ見込めないのが現状だな。
で、何が言いたいかというと、この世界で連絡を行うためにはモンスターを倒せる騎士が行うのが普通ってことだ。
手紙の配達なんかを行う業者もいるが、そちらはモンスターに襲われたら荷物を捨てて逃げたりすることもあるので、信用度は低めだな。
なんで、バルディ領への連絡は騎士を使うのだが、俺やレナの護衛に連れてきている騎士を使うのはクルトに反対されているので、訪れた領の騎士にお願いしているというわけだ。
もちろん、きちんと謝礼を渡しているし、無理にやらせているわけではない。
「んじゃあ、こっちはのんびりと旅を楽しむかね」
「護衛している側としては、のんびりとはいきませんけどね」
「まあまあ、俺もレナも自衛くらいはできるしそこまで堅苦しく考えなくていいって」
「わかってはいますが、それとこれとは別ですから」
ま、護衛騎士が護衛に専念しなかったら、騎士失格というか、仕事しろって言われるしな。
「ん? クルト、なんか向こうから土煙が見えるが、なんだ?」
「本当ですか? ……なんでしょうね? この辺りにはあれほどの土煙を出すモンスターは生息していないはずですが……」
「新種か?」
「総員! 警戒体制に移行!」
クルトが声を上げると俺とレナを前後に挟んで移動していた、護衛騎士が前方へと固まる。
今回の旅では全員が馬での移動となっているので、騎士たちも俺やレナも馬上で戦闘体制へと移行する。
「マックス様……あれは、馬ではありませんか?」
「レナ、本当かい?」
「はい、魔法で視力を上げてみましたが、騎士が乗っている馬のようです」
レナは風と闇の2属性の魔法を使えるが、魔法の射程が本人の周囲50cmしかないという欠点がある。
ま、風魔法も闇魔法もバフが充実している属性なので、そこまでの欠点ではないのだが、それもあってゲーム内では便利アイテム以上の扱いを受けなかったわけだ。
「クルト、騎士に合図をして速度を落とすようにさせろ」
「はっ!」
クルトに命令すると、護衛騎士の一部が即座に荷物の中から手旗を用意する。
これはゲルハルディ領周辺で使われているもので、騎士同士の連絡手段としても用いられているものだな。
手旗で合図を送ると、土煙はみるみるうちに小さくなり、俺の眼でも走ってきているのが馬に乗った騎士だと確認できるようになった。
「ゲルハルディ伯爵令息様、バルディ男爵令嬢様、御前失礼いたします」
「かしこまった挨拶は良い。バルディ領の騎士のルッツだな。急いでいたようだが、何かあったのか?」
「はっ! 急報です。バルディ領の海上にて不審な船が発見されました。敵襲の恐れがあるので、ゲルハルディ伯爵令息様一行にはゲルハルディ領への避難を、とのことです」
「敵襲!? いつもの交易船とは違うのだな?」
「はっ! マストに掲げている旗がいつもとは違っていたのです。バルディ領に滞在していた交易国の人間によると、南大陸で争っている敵国とのことで」
このタイミングで南大陸からの敵襲……あまりにも、早すぎる!
「クルト、ここからバルディ領まではどれくらいかかる?」
「休息なしで行けば、およそ1日かと」
「では、急ぐぞ! ルッツ、まだ走れるか?」
「ゲルハルディ伯爵令息様! 御身が危険です! 急ぎ避難を!」
「それは聞けん! 友好領……それも大事な婚約者の生まれ故郷が危険にされされているというのに、逃げるなど次期領主として、貴族としてできんことだ!」
「ですが!」
「ルッツ、俺たちはバルディ領へと向かう! その旨をゲルハルディ領にいる父上と母上、それにレナの父であるテオに伝えてくれ。バルディ領のことはこちらに任せてほしいとな」
「~~……はっ! 承知致しました!」
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