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閑話
101 アイリーンとの話し合い
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「なんで、新しい交易品を王都で売ったらあかんの!?」
「だから言ってるだろ? 米も醤油も味噌も在庫を用意できてるわけじゃない!」
「それは分かってるけど、先に味を知っておいてもらわんと作る方も気合入らんやんか!」
「そもそも! 主食がパンの人間がそこまでゴールディ国の食品に興味を持つわけがない!」
「せやけど、ゲルハルディ家では好評やんか!?」
「ゲルハルディ家は新しいものに対して貪欲なだけだ! その家族にしたって、毎日ゴールディ国の食品になったら嫌がるだろうさ」
「うっ」
レナとの仮婚姻式を終えた俺が真っ先にやっていることは、アイリーンとの口論というか、商品に対しての議論だった。
どうしてこうなった?……と言いたいところだが、正直この展開は予想で来ていた。
フィッシャー商会としては王都に卸せる新商品は喉から手が出るほど欲しいし、ゴールディ国から輸入品が購入できたのなら王都に卸したいと考えるのは普通だ。
だが、パンが主食になってるこの国の人間が目新しいとはいえ、米食に傾倒するかと言われたら疑問だし、そもそも調理法を知ってる人間が少ない。
米を炊けるのはゴールディ国との折衝にあたったウチの料理人と、アンドレ商会の料理人、それに俺くらいだ。
まあ、そんな事情がなくても補充が出来ない米や調味料を王都にあげる気なんてさらさらないのだが。
ゴールディ国から購入した米は半分以上は試験栽培のためにカレンベルク領に置いてきたし、俺の手元にすら潤沢に残っているというわけでもないからな。
「食品に関してはゲルハルディ家で使い、その後に領内の街、傘下の領、王都、そのほかの地域の順に広めていくからな」
「それがええのは分かってるけど、話題性が……」
「その代わり、フィッシャー商会にはゴールディ国から購入した布や小物を一任するから、それをアイリーンの功績にしろ」
「……うちが功績を欲しがってるの知ってたん?」
「領主一族との繋がりを得たのに、交易品に手を出せなければ商会内でいろいろ言われるくらいのことは想像がつく。アイリーンの立場を悪くするのは本意じゃないし、布や小物はゲルハルディ領より王都の方が売りやすいからな」
レナとの結婚前後にいろいろと話し合った結果、結局アイリーンを第二夫人にするということも決定し、呼び方もフィッシャー嬢からアイリーンへと変更した。
正直、嫌がっていたのは俺だけだし、俺にしても別にアイリーンが嫌いというわけではなく、前世の常識を引きずってのなんとなくの嫌悪感だったから諦めた。
レナや母上には、伯爵夫人としての執務をこなしながら俺のしりぬぐいをするのは難しいと、ゴールディ国との交易を絡めてこんこんと説教されてしまったからな。
しかも、陛下から王都への召喚状も貰ってしまい、私信では辺境伯になるから準備をしておくようにとも言われ、第二夫人は受け入れられないなんて言ってる状況じゃなくなってしまった。
「べ、別にそんなんされても嬉しないし」
「あと、陛下からの注文もあったから、それもフィッシャー商会に頼む。陛下からはウイスキーボンボンと王領産のワインのボンボン……あ、こっちはアンドレ商会で製法は確立してる奴だな。あとは宰相閣下からコーヒーのボンボンだな」
「……それって、マックスが王都に行くまでにってこと?」
「俺が王都に着くまでに向こうに届くならその後でもいいぞ?」
「そんなん無理ってわかってるやん」
「ま、フィッシャー商会全体を動かせばできないことでもないだろ。……あとは、ゴールディ国産の布や小物のサンプルを用意してくれれば陛下にも見せておくぞ?」
「さらに仕事追加!? って、国王陛下相手にそんな簡単に商品見せられるん?」
「叙爵のあとにウイスキーボンボンを渡す場が作られるだろうし、その時にでも見せるよ。陛下は布とかには興味ないだろうけど、王妃殿下への贈り物にはしたいだろうし」
父上も母上にプレゼントするためにユリア叔母さんに、ゴールディ国の布を使ったドレスを注文してたし、愛妻家である陛下も同じことをしそうなんだよな。
食品に関しても要請が来そうだけど、そっちは未完成ってことで押し通す予定だし。
「や……やってやるわ!」
「じゃ、ボンボン系は陛下と閣下宛てに20個ずつな。サンプルはそっちの基準に任せるよ」
「やらいでかー!」
なんか、若干壊れたような気もするが気にしないことにするか。
というか、ゲルハルディ家と関わると確定して王家とも関わるから今回の比じゃないほどの仕事量になるだろうし、今回のは良い試金石になりそうだな。
「だから言ってるだろ? 米も醤油も味噌も在庫を用意できてるわけじゃない!」
「それは分かってるけど、先に味を知っておいてもらわんと作る方も気合入らんやんか!」
「そもそも! 主食がパンの人間がそこまでゴールディ国の食品に興味を持つわけがない!」
「せやけど、ゲルハルディ家では好評やんか!?」
「ゲルハルディ家は新しいものに対して貪欲なだけだ! その家族にしたって、毎日ゴールディ国の食品になったら嫌がるだろうさ」
「うっ」
レナとの仮婚姻式を終えた俺が真っ先にやっていることは、アイリーンとの口論というか、商品に対しての議論だった。
どうしてこうなった?……と言いたいところだが、正直この展開は予想で来ていた。
フィッシャー商会としては王都に卸せる新商品は喉から手が出るほど欲しいし、ゴールディ国から輸入品が購入できたのなら王都に卸したいと考えるのは普通だ。
だが、パンが主食になってるこの国の人間が目新しいとはいえ、米食に傾倒するかと言われたら疑問だし、そもそも調理法を知ってる人間が少ない。
米を炊けるのはゴールディ国との折衝にあたったウチの料理人と、アンドレ商会の料理人、それに俺くらいだ。
まあ、そんな事情がなくても補充が出来ない米や調味料を王都にあげる気なんてさらさらないのだが。
ゴールディ国から購入した米は半分以上は試験栽培のためにカレンベルク領に置いてきたし、俺の手元にすら潤沢に残っているというわけでもないからな。
「食品に関してはゲルハルディ家で使い、その後に領内の街、傘下の領、王都、そのほかの地域の順に広めていくからな」
「それがええのは分かってるけど、話題性が……」
「その代わり、フィッシャー商会にはゴールディ国から購入した布や小物を一任するから、それをアイリーンの功績にしろ」
「……うちが功績を欲しがってるの知ってたん?」
「領主一族との繋がりを得たのに、交易品に手を出せなければ商会内でいろいろ言われるくらいのことは想像がつく。アイリーンの立場を悪くするのは本意じゃないし、布や小物はゲルハルディ領より王都の方が売りやすいからな」
レナとの結婚前後にいろいろと話し合った結果、結局アイリーンを第二夫人にするということも決定し、呼び方もフィッシャー嬢からアイリーンへと変更した。
正直、嫌がっていたのは俺だけだし、俺にしても別にアイリーンが嫌いというわけではなく、前世の常識を引きずってのなんとなくの嫌悪感だったから諦めた。
レナや母上には、伯爵夫人としての執務をこなしながら俺のしりぬぐいをするのは難しいと、ゴールディ国との交易を絡めてこんこんと説教されてしまったからな。
しかも、陛下から王都への召喚状も貰ってしまい、私信では辺境伯になるから準備をしておくようにとも言われ、第二夫人は受け入れられないなんて言ってる状況じゃなくなってしまった。
「べ、別にそんなんされても嬉しないし」
「あと、陛下からの注文もあったから、それもフィッシャー商会に頼む。陛下からはウイスキーボンボンと王領産のワインのボンボン……あ、こっちはアンドレ商会で製法は確立してる奴だな。あとは宰相閣下からコーヒーのボンボンだな」
「……それって、マックスが王都に行くまでにってこと?」
「俺が王都に着くまでに向こうに届くならその後でもいいぞ?」
「そんなん無理ってわかってるやん」
「ま、フィッシャー商会全体を動かせばできないことでもないだろ。……あとは、ゴールディ国産の布や小物のサンプルを用意してくれれば陛下にも見せておくぞ?」
「さらに仕事追加!? って、国王陛下相手にそんな簡単に商品見せられるん?」
「叙爵のあとにウイスキーボンボンを渡す場が作られるだろうし、その時にでも見せるよ。陛下は布とかには興味ないだろうけど、王妃殿下への贈り物にはしたいだろうし」
父上も母上にプレゼントするためにユリア叔母さんに、ゴールディ国の布を使ったドレスを注文してたし、愛妻家である陛下も同じことをしそうなんだよな。
食品に関しても要請が来そうだけど、そっちは未完成ってことで押し通す予定だし。
「や……やってやるわ!」
「じゃ、ボンボン系は陛下と閣下宛てに20個ずつな。サンプルはそっちの基準に任せるよ」
「やらいでかー!」
なんか、若干壊れたような気もするが気にしないことにするか。
というか、ゲルハルディ家と関わると確定して王家とも関わるから今回の比じゃないほどの仕事量になるだろうし、今回のは良い試金石になりそうだな。
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