125 / 140
貴族学園
125 シャウナ男爵令息との決闘
しおりを挟む
「ゲルハルディ! 俺と勝負しろ!」
レナと情報共有をしてから、しばらくの間は平和というか、シャウナ男爵令息も様子見をしていたようだが、とうとうしびれを切らしたのか剣術の授業中に勝負を吹っかけてきた。
ここまでの間にシャウナ男爵令息についても、詳しく調査してみたが、裏はなし。
王家派の貴族の入れ知恵だとか、ミネッティ伯爵令嬢との繋がりも考えて調査したが、何もなくて逆に驚いたくらいだ。
「あー、ゲルハルディ。どうする?」
俺がしょっぱい顔をしていたからか、それとも授業中だからか、教師が俺にどうするかを聞いてきた。
学園側もシャウナ男爵令息が噂をばらまいていることや、授業中に俺をにらみつけていることは確認しているようで、どう対応するかを相談されたこともあるからな。
こちらとしてはゲルハルディ領ではなく、あくまでも俺が喧嘩を売られているだけの状態で、噂に関してもまともな貴族は無視している現状だから、ほっといていいと答えていた。
「彼とは実力が違いすぎますし、授業の邪魔になるのでは?」
剣術の授業は基本的に型の練習や、実力が近い者同士での1対1がメインだ。
俺もマルクスもクリスタも入試で上位を取り、その後も上位を維持している上位陣だ。
反面、喧嘩を売ってきたシャウナ男爵令息は男爵家の次男ということもあり、入試では騎士家系の生徒と同格の下位、その後の授業でも目立ったところはなく下位のままだ。
「はっ! 辺境に住んでいる野蛮人のくせに逃げ出すのか!? 次期領主がこれじゃあ、ゲルハルディ領ってのも大したことはないんだろうな」
はあっ!?
俺が心の中でぶち切れていた瞬間から、周囲がざわついたのが分かった。
ヴァイセンベルク王国では中央に住んでいる貴族は辺境を野蛮とバカにし、辺境に住んでいる貴族は中央を軟弱と罵る傾向にある。
だが、それは心の中に秘めるのが暗黙の了解で、派閥内ならともかく、公衆の面前で口にすれば相手に何をされても文句は言えないものなのだ。
「はあ、これは収まらんな。シャウナ、ゲルハルディ、両者の決闘を正式に認める」
「ゲルハルディ、俺が勝ったら貴様はレナ嬢の婚約者の座を降りろ!」
シャウナ男爵令息……いや、もうクソ男でいいや。クソ男が未だに的外れなことを言っているが、俺はレナの旦那であって、婚約者じゃないから座から降りるもクソもないんだよな。
「ああそれでいい。俺が勝ったらゲルハルディ領とシャウナ男爵領との取引は全面的に停止させてもらう。シャウナ男爵にもおたくの次男が吹っかけてきた決闘で正式に決まったことと通達させてもらう」
正直、俺が提示されている条件に対してクソ男側のリスクが少なすぎるが、こんなクソ男に求める事なんて何一つないんだよな。
シャウナ男爵領との取引がなくなるなんて事態になれば、シャウナ男爵がこいつを貴族学園をやめさせるだろうしさ。
上位貴族に対して決闘で勝てる実力があるならともかく、一方的に喧嘩を売って負けることがあれば、縁を切るのにためらいはないだろう。
「はっ! 辺境との取引など、こちらから願い下げだ。田舎臭いものなど、我がシャウナ男爵領には不要というものよ!」
周囲の反応は領主候補は何を言っているんだ? というもので、騎士に近い人間ほどなるほどという反応だった。
領主の勉強を行っている者なら、辺境の物品が中央の経済を活発化させているのを理解しているが、騎士を目指していて勉強をしない人間にはそれがわからないのだろう。
「両者が合意しているのなら、決闘を始めよう。武器に関しては授業で使っているものを使うように」
さっきも言ったが、授業では1対1を行うこともあるから、刃引きをしている武器が用意されている。
俺はオーソドックスにロングソードとマンゴーシュを使った二刀流で、子供の頃に使っていた盾の代わりに左手にマンゴーシュを握っている。
対するクソ男は体格に見合わない両手剣。
父上が振るうなら恐ろしいソレも、目の前のクソ男では明らかに力量不足だろう。
「危なくなれば止めに入るが、2人とも極力、相手にけがをさせないように。……はじめっ!」
「うおおぉぉぉっ!!!」
教師の合図と同時にクソ男が突っ込んでくる。
思い切りの良さだけは買うが、持っている両手剣を引きずるように走っているのを見る限り、明らかに修練不足だな。
態勢を生かして下段から切り払ってくるのかと思ったが、わざわざ間合いの一歩手前で止まってから上段に持ち替えて切り下してきた。
メーリング領から預かった若手たちも慣れないうちはこんな動きをしていたから、俺としては慣れたもんでマンゴーシュで受け流しつつロングソードで腕を切りつける。
当然だが、致命傷とは判断されず、決闘は続けられる。
俺だけならともかく、ゲルハルディ領、ひいては領民を馬鹿にしたクソ男を簡単に許す気にもなれず、決闘が終わるころにはクソ男は青あざだらけの酷い姿になっていた。
レナと情報共有をしてから、しばらくの間は平和というか、シャウナ男爵令息も様子見をしていたようだが、とうとうしびれを切らしたのか剣術の授業中に勝負を吹っかけてきた。
ここまでの間にシャウナ男爵令息についても、詳しく調査してみたが、裏はなし。
王家派の貴族の入れ知恵だとか、ミネッティ伯爵令嬢との繋がりも考えて調査したが、何もなくて逆に驚いたくらいだ。
「あー、ゲルハルディ。どうする?」
俺がしょっぱい顔をしていたからか、それとも授業中だからか、教師が俺にどうするかを聞いてきた。
学園側もシャウナ男爵令息が噂をばらまいていることや、授業中に俺をにらみつけていることは確認しているようで、どう対応するかを相談されたこともあるからな。
こちらとしてはゲルハルディ領ではなく、あくまでも俺が喧嘩を売られているだけの状態で、噂に関してもまともな貴族は無視している現状だから、ほっといていいと答えていた。
「彼とは実力が違いすぎますし、授業の邪魔になるのでは?」
剣術の授業は基本的に型の練習や、実力が近い者同士での1対1がメインだ。
俺もマルクスもクリスタも入試で上位を取り、その後も上位を維持している上位陣だ。
反面、喧嘩を売ってきたシャウナ男爵令息は男爵家の次男ということもあり、入試では騎士家系の生徒と同格の下位、その後の授業でも目立ったところはなく下位のままだ。
「はっ! 辺境に住んでいる野蛮人のくせに逃げ出すのか!? 次期領主がこれじゃあ、ゲルハルディ領ってのも大したことはないんだろうな」
はあっ!?
俺が心の中でぶち切れていた瞬間から、周囲がざわついたのが分かった。
ヴァイセンベルク王国では中央に住んでいる貴族は辺境を野蛮とバカにし、辺境に住んでいる貴族は中央を軟弱と罵る傾向にある。
だが、それは心の中に秘めるのが暗黙の了解で、派閥内ならともかく、公衆の面前で口にすれば相手に何をされても文句は言えないものなのだ。
「はあ、これは収まらんな。シャウナ、ゲルハルディ、両者の決闘を正式に認める」
「ゲルハルディ、俺が勝ったら貴様はレナ嬢の婚約者の座を降りろ!」
シャウナ男爵令息……いや、もうクソ男でいいや。クソ男が未だに的外れなことを言っているが、俺はレナの旦那であって、婚約者じゃないから座から降りるもクソもないんだよな。
「ああそれでいい。俺が勝ったらゲルハルディ領とシャウナ男爵領との取引は全面的に停止させてもらう。シャウナ男爵にもおたくの次男が吹っかけてきた決闘で正式に決まったことと通達させてもらう」
正直、俺が提示されている条件に対してクソ男側のリスクが少なすぎるが、こんなクソ男に求める事なんて何一つないんだよな。
シャウナ男爵領との取引がなくなるなんて事態になれば、シャウナ男爵がこいつを貴族学園をやめさせるだろうしさ。
上位貴族に対して決闘で勝てる実力があるならともかく、一方的に喧嘩を売って負けることがあれば、縁を切るのにためらいはないだろう。
「はっ! 辺境との取引など、こちらから願い下げだ。田舎臭いものなど、我がシャウナ男爵領には不要というものよ!」
周囲の反応は領主候補は何を言っているんだ? というもので、騎士に近い人間ほどなるほどという反応だった。
領主の勉強を行っている者なら、辺境の物品が中央の経済を活発化させているのを理解しているが、騎士を目指していて勉強をしない人間にはそれがわからないのだろう。
「両者が合意しているのなら、決闘を始めよう。武器に関しては授業で使っているものを使うように」
さっきも言ったが、授業では1対1を行うこともあるから、刃引きをしている武器が用意されている。
俺はオーソドックスにロングソードとマンゴーシュを使った二刀流で、子供の頃に使っていた盾の代わりに左手にマンゴーシュを握っている。
対するクソ男は体格に見合わない両手剣。
父上が振るうなら恐ろしいソレも、目の前のクソ男では明らかに力量不足だろう。
「危なくなれば止めに入るが、2人とも極力、相手にけがをさせないように。……はじめっ!」
「うおおぉぉぉっ!!!」
教師の合図と同時にクソ男が突っ込んでくる。
思い切りの良さだけは買うが、持っている両手剣を引きずるように走っているのを見る限り、明らかに修練不足だな。
態勢を生かして下段から切り払ってくるのかと思ったが、わざわざ間合いの一歩手前で止まってから上段に持ち替えて切り下してきた。
メーリング領から預かった若手たちも慣れないうちはこんな動きをしていたから、俺としては慣れたもんでマンゴーシュで受け流しつつロングソードで腕を切りつける。
当然だが、致命傷とは判断されず、決闘は続けられる。
俺だけならともかく、ゲルハルディ領、ひいては領民を馬鹿にしたクソ男を簡単に許す気にもなれず、決闘が終わるころにはクソ男は青あざだらけの酷い姿になっていた。
97
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
ソードオブマジック 異世界無双の高校生
@UnderDog
ファンタジー
高校生が始める異世界転生。
人生をつまらなく生きる少年黄金黒(こがねくろ)が異世界へ転生してしまいます。
親友のともはると彼女の雪とともにする異世界生活。
大事な人を守る為に強くなるストーリーです!
是非読んでみてください!
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる