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貴族学園
133 喧嘩を売られる
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「だから、アルフレートも訓練に参加させなさいって言ってるのよ!」
問題ってのはこんなに連続しておこるものだったか?
俺の転生話を打ち明けた翌日、学園に戻って領主・騎士科の剣術授業を受けていると、不意にミネッティ伯爵令嬢が現れて教師を恫喝し始めた。
曰く、自分の従者……ゲーム内の主人公だな……を剣術授業に参加させろと。
「ミネッティ伯爵が貴女をどのように教育したのかはわかりませんが、そのような特別待遇は致しかねます」
「はぁっ!? アルフレートはこの世界を救う勇者なのよ!」
ミネッティ伯爵令嬢の言葉に驚いている人間が半数、何言ってんだこいつって目線を送っているのが半数。
前者の人間はおそらく陛下が勇者の称号を廃止したことを知らない、後者は陛下の言を翻すような発言を一介の伯爵令嬢ごときが行ったことを咎めているのだろう。
もちろん俺もクリスタも後者だ。
「たとえ勇者と呼ばれるほどの人間であろうと、学園に入学していない人間を授業に参加させるなど出来ようはずがありません」
ミネッティ伯爵令嬢の言い分には教師がピシャリとノーを突き付ける。
貴族学園では王族よりも教師の方が身分が上というルールがあるから、教師のこの対応は正解だ。
「アルフレートがここにいる誰よりも強いと証明すればいいんでしょ!? アルフレート、やって!」
自棄になったのか、ミネッティ伯爵令嬢がそう叫ぶと、傍にいた主人公が持っていた長剣をすらりと抜く。
主人公が剣を構えた瞬間、俺を含めて辺境育ちの学生連中は戦慄した。
明らかに鍛えていないであろう肉体であるのに、その構えは自然でありながら理想的であったからだ。
「……確かに筋は良さそうですな。ですが、それとこれとは別の話。どのような実力をお持ちであろうと、学生ですらない者を授業に参加はさせられません」
「はぁっ!?」
「ですが、それではミネッティ伯爵令嬢も納得できないでしょう……どうだ? ゲルハルディ。この青年と模擬戦をやってみては」
教師が俺を指名したのは当然で、この中で既に爵位を得ているのが俺だけ……しかも俺は辺境伯で伯爵令嬢とは身分の差があるからだな。
まあ剣術の腕でも俺は学年でトップクラスではあるから、その点も考慮されたのかもしれないが。
「ふんっ、悪役令息になんか負けるはずないじゃない!」
「はあ、わざわざ相手をすることもないとは思いますが、あちらはそれでは納得しないでしょうね」
本当は俺が相手をすることもないんだが、主人公の力量を知りたいという興味もあるし、相手をすることにする。
しかし、素振りを見るだけでも剣の振るい方の理想を見ているだけで感動を覚える……いや、なんかだんだん腹が立ってきたな。
主人公だから何もしなくても剣くらい振れますってか? こちとら数年単位で剣の訓練をしてるってのに、主人公様にかかればその努力も無駄ですってか?
「両者ともに大怪我をさせないようにしろ。あまりにも酷ければ介入するからな」
この辺の言葉は両者に……というよりも主人公とミネッティ伯爵令嬢に言っている。
当然だが、これは剣術の授業なのであって実戦ではないからな、相手に怪我をさせないのは最低限の事項だ。
「はじめっ!」
「うおおおっ」
教師の合図と同時に主人公が叫びながら、俺に向かってくる。
剣の振り方は天才の一言だったが、戦いとなるとまるで素人。
剣を頭の上に振り上げたまま……いわゆる上段の構えのままで突っ込んでくる。
「はあっ!!」
気合一閃、上段から剣を振りぬくが、先ほど見た素振りほどの剣の冴えはない。
剣を合わせるまでもないので軽く横に避けるが、やはり剣だけで見れば主人公級の動きだが、体の使い方はまるで素人。
そういえばゲーム内の主人公は主であるローズマリー嬢が公爵の私設騎士団で訓練させていた……ミネッティ伯爵令嬢はどうしていたか知らんが、伯爵家と公爵家では騎士団の練度も違うだろう。
……いや、この動きの悪さは騎士団で訓練などさせていないのだろう。
その後も主人公の剣は俺にあたらず、逆に主人公は俺の剣をかろうじて弾くという展開が続く。
ミネッティ伯爵令嬢は怒声というか奇声を上げているが、学生連中は冷めた目で攻防を見守っている。
教師からも早く終わらせろというメッセージをアイコンタクトで受け取ったので、主人公の剣を弾いて終わらせる。
「はあっはあっはあっ……」
「剣の腕は悪くないが、動きは素人だな。鍛えたいなら冒険者ギルドの剣術学校にでも通えばいい」
「はあっ!? だから、ここで授業を受けさせなさいって言ってるのよっ!」
「まるでわかってないな。ここは貴族学園の領主・騎士科。……つまり領地、領民、国を守るための技術を学ぶ場。貴族ですらない……貴族になろうともしない人間が通えるところではない」
ミネッティ伯爵令嬢が嚙みついてきたので、わかりやすいように諭してやる。
貴族学園では領地や領民の守り方を学ぶのが主で、主人公のように自分、あるいは仲間を守るための戦い方は学べない。
剣術の授業もあるにはあるが、これは最悪の事態に備えたもので強くなるということよりも死なないための技術を学ぶ場だ。
「身分で差別するつもりねっ!」
「冒険者ギルドでは平民も受け入れている。貴族ですらないのなら、そちらに行けというのが差別だと思うのならそうなのだろうな」
これに関しては平行線だろう。教師の方もこれ以上は無駄だと思ったのか、実力行使に出てミネッティ伯爵令嬢と主人公を訓練場から追い出す。
領主・騎士科には男子生徒も女子生徒もいるので、教師も男女がそろっていたのが幸いだったな。
問題ってのはこんなに連続しておこるものだったか?
俺の転生話を打ち明けた翌日、学園に戻って領主・騎士科の剣術授業を受けていると、不意にミネッティ伯爵令嬢が現れて教師を恫喝し始めた。
曰く、自分の従者……ゲーム内の主人公だな……を剣術授業に参加させろと。
「ミネッティ伯爵が貴女をどのように教育したのかはわかりませんが、そのような特別待遇は致しかねます」
「はぁっ!? アルフレートはこの世界を救う勇者なのよ!」
ミネッティ伯爵令嬢の言葉に驚いている人間が半数、何言ってんだこいつって目線を送っているのが半数。
前者の人間はおそらく陛下が勇者の称号を廃止したことを知らない、後者は陛下の言を翻すような発言を一介の伯爵令嬢ごときが行ったことを咎めているのだろう。
もちろん俺もクリスタも後者だ。
「たとえ勇者と呼ばれるほどの人間であろうと、学園に入学していない人間を授業に参加させるなど出来ようはずがありません」
ミネッティ伯爵令嬢の言い分には教師がピシャリとノーを突き付ける。
貴族学園では王族よりも教師の方が身分が上というルールがあるから、教師のこの対応は正解だ。
「アルフレートがここにいる誰よりも強いと証明すればいいんでしょ!? アルフレート、やって!」
自棄になったのか、ミネッティ伯爵令嬢がそう叫ぶと、傍にいた主人公が持っていた長剣をすらりと抜く。
主人公が剣を構えた瞬間、俺を含めて辺境育ちの学生連中は戦慄した。
明らかに鍛えていないであろう肉体であるのに、その構えは自然でありながら理想的であったからだ。
「……確かに筋は良さそうですな。ですが、それとこれとは別の話。どのような実力をお持ちであろうと、学生ですらない者を授業に参加はさせられません」
「はぁっ!?」
「ですが、それではミネッティ伯爵令嬢も納得できないでしょう……どうだ? ゲルハルディ。この青年と模擬戦をやってみては」
教師が俺を指名したのは当然で、この中で既に爵位を得ているのが俺だけ……しかも俺は辺境伯で伯爵令嬢とは身分の差があるからだな。
まあ剣術の腕でも俺は学年でトップクラスではあるから、その点も考慮されたのかもしれないが。
「ふんっ、悪役令息になんか負けるはずないじゃない!」
「はあ、わざわざ相手をすることもないとは思いますが、あちらはそれでは納得しないでしょうね」
本当は俺が相手をすることもないんだが、主人公の力量を知りたいという興味もあるし、相手をすることにする。
しかし、素振りを見るだけでも剣の振るい方の理想を見ているだけで感動を覚える……いや、なんかだんだん腹が立ってきたな。
主人公だから何もしなくても剣くらい振れますってか? こちとら数年単位で剣の訓練をしてるってのに、主人公様にかかればその努力も無駄ですってか?
「両者ともに大怪我をさせないようにしろ。あまりにも酷ければ介入するからな」
この辺の言葉は両者に……というよりも主人公とミネッティ伯爵令嬢に言っている。
当然だが、これは剣術の授業なのであって実戦ではないからな、相手に怪我をさせないのは最低限の事項だ。
「はじめっ!」
「うおおおっ」
教師の合図と同時に主人公が叫びながら、俺に向かってくる。
剣の振り方は天才の一言だったが、戦いとなるとまるで素人。
剣を頭の上に振り上げたまま……いわゆる上段の構えのままで突っ込んでくる。
「はあっ!!」
気合一閃、上段から剣を振りぬくが、先ほど見た素振りほどの剣の冴えはない。
剣を合わせるまでもないので軽く横に避けるが、やはり剣だけで見れば主人公級の動きだが、体の使い方はまるで素人。
そういえばゲーム内の主人公は主であるローズマリー嬢が公爵の私設騎士団で訓練させていた……ミネッティ伯爵令嬢はどうしていたか知らんが、伯爵家と公爵家では騎士団の練度も違うだろう。
……いや、この動きの悪さは騎士団で訓練などさせていないのだろう。
その後も主人公の剣は俺にあたらず、逆に主人公は俺の剣をかろうじて弾くという展開が続く。
ミネッティ伯爵令嬢は怒声というか奇声を上げているが、学生連中は冷めた目で攻防を見守っている。
教師からも早く終わらせろというメッセージをアイコンタクトで受け取ったので、主人公の剣を弾いて終わらせる。
「はあっはあっはあっ……」
「剣の腕は悪くないが、動きは素人だな。鍛えたいなら冒険者ギルドの剣術学校にでも通えばいい」
「はあっ!? だから、ここで授業を受けさせなさいって言ってるのよっ!」
「まるでわかってないな。ここは貴族学園の領主・騎士科。……つまり領地、領民、国を守るための技術を学ぶ場。貴族ですらない……貴族になろうともしない人間が通えるところではない」
ミネッティ伯爵令嬢が嚙みついてきたので、わかりやすいように諭してやる。
貴族学園では領地や領民の守り方を学ぶのが主で、主人公のように自分、あるいは仲間を守るための戦い方は学べない。
剣術の授業もあるにはあるが、これは最悪の事態に備えたもので強くなるということよりも死なないための技術を学ぶ場だ。
「身分で差別するつもりねっ!」
「冒険者ギルドでは平民も受け入れている。貴族ですらないのなら、そちらに行けというのが差別だと思うのならそうなのだろうな」
これに関しては平行線だろう。教師の方もこれ以上は無駄だと思ったのか、実力行使に出てミネッティ伯爵令嬢と主人公を訓練場から追い出す。
領主・騎士科には男子生徒も女子生徒もいるので、教師も男女がそろっていたのが幸いだったな。
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