猫と私と犬の小説家

瀧川るいか

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猫のねっこ

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二匹の茶トラ猫はご主人を見送った。
「あ~行っちゃったね~」
「うん」
「りむいないと退屈なんだよなぁ~」
「そうだねぇ」
「なんかチャチャはそんな感じしないぞ!」
「そんな事ないよ~りむいないと寂しい」
「だったらさぁ~もっと引き止めないとじゃん!」
「そんな事したらりむが困るよ~」
「一緒にいたいじゃん!」
「わかるけど~取り敢えず部屋にいこうよ~」
「わかったー!」
茶トラの二匹は、この部屋のご主人が微かに残したぬくもりを辿り部屋に戻って行った。
部屋に入るとチャチャはベッドに横たわり、ゴロゴロし始めた。
「あ~チャチャだけ!ずるいぞ!」
メーはチャチャに続きベッドに横たわった。
「メーはいつもりむが出掛けようとする邪魔したりするけどあまり良くないと思うよ~」
「なんで?!だって一緒にいたいじゃん!」
「わかるけど~。りむはね~僕らの為に頑張って働いてるんだよ~」
「うーん」
「だからお化粧してる時とか邪魔したりするのは良くないよ~」
「うーん」
「それに前さぁ~ご飯が美味しくないとかメー言ってたでしょ」
「うん!あれ嫌い!」
「あれね~病院とかで売ってる健康に気を使ったご飯なんだよ。けっこう高いんだって」
「そうなんだ?」
「だからね~わがまま言ったらダメだよ!りむは僕らの事を大事に思ってるんだ。長く一緒に居たいと思ってるから毎日食べるものには凄く気を使ってくれてるんだよ。自分の食べるものより僕らの食べ物の方ばっかり気を付けてるんだよ」
「ふーん」
「だからりむがお外行く時は元気に見送ってあげようよ~」
「うーん」
「メーの甘えたい気持ちはわかるよ。僕だっていっぱい構ってもらいたいけどお化粧してる時は我慢して見守る事にしてる。だってりむが僕らの事を大好きなのはわかってるでしょ?」
「そうだね~今度から気を付ける!」
「あの子は優しいから僕らに怒ったりしないよ。だから何をしてもいいわけではないよ。きっと何をしても優しくしてくれる」
「でも僕らは家族なんだから一緒にいたいじゃん!」
「わかるわかる。りむは僕らと一緒に居たいと思ってるからお外に行くんだよ。もしもりむが働かないでずっとお家に居たら僕らは今一緒には居れないよ」
「そうだねぇ。なんか難しいな~」
「だから元気に見送って元気に迎えれるようにしようよ~。メーはりむの事大好き?」
「好き!大好き!当たり前!」
「なら良い子にしてようよ」
「わかったー!しかしチャチャは大人だなぁ」
「まぁね~。メーよりも少しだけりむとは付き合い長いからさぁ」
「そっかぁ」
「あっち行って遊ぼ~」
チャチャはベッドから飛び降りて部屋にある大きなキャットタワーで遊び始めた。
「行くー!」
メーはチャチャがくつろいでいるタワーのてっぺんまで直ぐに登りつめた。狭いスペースで茶トラの二匹は場所の取り合いを始めた。
「狭いな~てっぺんは。チャチャは降りてよ!」
「メーが降りな~」
「チャチャはいつもノロノロしてるから下!」
「メーは落ち着きがないから下~」
てっぺんを譲らないメー。
そんなメーにチャチャ丸はゆっくり下に降りた。
「しょうがないなぁ~」
「やったぁー!てっぺんだぁー!」
キャットタワーのてっぺんでメーは優雅に毛繕いを始めた。一段下にいるチャチャを得意気に見ている。
「いいか~メー。りむはこのキャットタワーを僕らがケンカする為に置いてくれたんじゃないよ~」
「なんでー?」
「仲良くして欲しいから僕らにくれたんだよ」
「うーん。なんやかんやで色々と考えてくれてるんだなぁ~」
「何よりも一番に考えてくれてるよ、りむは」
「まぁ~何不自由なく暮らせてるのはりむのおかげだからなぁ~」
「でしょ?」
「うん!」
「前さぁメーが気持ちいいって言ってたアレやめた方がいいよ~」
「アレって?」
「自動で出る石鹸浴びるの」
「えぇー!あれ気持ちいいじゃん!」
「アレはね~人間さんが手洗うのに使う用だから僕ら向きじゃないから体に良くないし、帰ってきて泡だらけのメーを見てりむ心配してたじゃん?だからあれはやめよ~」
「そうだねぇ~アレするとりむが真っ先に構ってくれるからついつい」
「わかるけど。心配はさせたらダメだよ~」
「わかったー!」
「僕らは家族なんだから。りむがお外行ってる時はりむの代わりにお家を守るの。りむが安心して帰ってこれる場所を大切にしよ~」
「そうだねぇ~チャチャはなんかんやでりむの事大好きなんだなぁ」
「うん。だって家族だもん」
「家族かぁ」

コツコツコツコツコツコツコツコツコツ

廊下の方から靴音が聞こえてきた。
チャラチャラと鍵がぶつかる音も聞こえる。
「りむが帰ってきたよ。メー!」
「やっと帰ってきたー!」
嬉しそうにメーは玄関の下駄箱の上で待機。
チャチャは置物のように玄関に座り込んだ。

ガチャ!

玄関の扉がゆっくりと開いて赤いチークではなく少し頬が赤く染まったりむが帰宅した。
「チャチャ!なんか酔っ払ってるぞ?」
「メー。そんな時もあるよ~お酒呑むくらい許してあげようよ~」
「お酒の匂い少しだけ苦手なんだよなぁ~」
「でもね、りむはりむで僕らの家族でご主人様なんだからいいじゃん」
酔っ払って帰っきたりむにチャチャとメーはいつも変わらない様子で迎えた。
「ただいまぁ~。愛しのお姫様が帰宅したよ~。チャチャ、メー良い子にしてたかぁ~?今日はお友達とお酒呑んできたから~すぐ寝たいぞぉ~」
ふらふらになりながらベッドを目指すりむに駆け足で付いて行く茶トラの二匹。
ベッドに飛び込むりむを見守る茶トラの二匹。
「あーあ。もう寝ちゃったよ~チャチャどうする?」
「そうだねぇ。いつもみたいに一緒に寝ようよ~」
「一人で寝るのはりむも寂しいと思うよ?この子は寂しいのは嫌いだから~」
「だね!しかし化粧落とさないで大丈夫かなぁ?」
「そうだねぇ。起きた時にまた騒がしくなるのも、りむが元気な証拠だし」
「じゃあ今日はもう一緒に寝ちゃおう!だって家族だもん」
「そうだそうだ!寝るのも騒ぐのも何でもね~りむと一緒一緒!」

「今日も一日お疲れ様!」

「おやすみ!りむ」




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