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お兄ちゃんが先生!?

入学式 最高の高校生活の始まり

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「んんっ」
今日は珍しく、自分の力で起きた。いつもは目覚ましとお母さんに起こされるのに。
「気持ちのいい朝……」
なんだかいい夢を見た気がして、自然と口角が上がり。
あれ、そういや今何時だろって……ふと思ったとき。
「あああああぁぁぁーーーー」
私は大声で叫んだ。ドタドタと騒がしく階段を駆け降りて、リビングに飛び出す。
「おかーさん!起こしてよぉ~」
「何度も起こしたわよ。それより愛和梨あかり、今日高校の入学式でしょ、時間平気なの?」
「平気なわけじゃないじゃん! ああ、初日から遅刻~」
8時には出たかったのに、もう8時半。
「愛和梨、学生手帳忘れるんじゃないぞ~」
「あ!やばい、忘れるところだった。ありがとお父さん!」
「お~。ほんとに母さんそっくりだな」
新聞を読みながらコーヒを飲んでいるルーティン通りのお父さんは、私と違ってのんびりしている。
「全然似てないよ。あれ、おとーさん、お兄ちゃんは?」
和透樹かずきか?昨日言っただろう、あいつも今日から仕事だ。早くに出て行ったよ」
「あ、そっか。だから今日は静かなのね」
「とか言って、ほんとは少し寂しいんじゃないの?構ってもらえなくて」
お母さんがにやにやした顔でこちらへ寄ってくる。
「寂しいわけないでしょ、やめてよお母さん。居ないと静かだから楽だよ」
「ほんとに~?愛和梨はお兄ちゃんっこだからな~」
「違うってば。あ、もう行かないとほんとに遅刻する!じゃあね、行ってきます!」
「今日見に行くからね~」
「はいはーい」
そう言い残して、トーストを口に咥えたまま駅へ全力疾走した。

今日も慌ただしい1日が始まる。



「はぁ」
なんとか間に合い、入学式に無事参加することが出来た私。先生が新入生に向けて、もう10分ほど語っている。
先生の話とかつまらないし、早く終わんないかなぁ。なんてぼんやりと物思いに浸かった。
そういやお兄ちゃん、結局なんの仕事についたのか教えてくれなかったんだよね。まぁなんでもいいんだけど。
そんなことを考えているうちに、気付けば入学式は終わっていた。

「えーっと、あった。私の名前!」
七瀬 愛和梨は、一年……四組っと。
発表されたクラス表の周りには、同じ一年生の子がわいわいと賑わっていた。私は知り合いが居ない場所に来たから、友達作り頑張んないとな。
部活に、恋、たくさん挑戦して楽しい高校生活を迎える。それが私のこの高校生活での目標で。
もう中学の時みたいにお兄ちゃんは居ないからね。新しい自分をスタートさせたい。


「はぁ…はぁ…」
疲れた。なんでこんなに広いの?さすがちょっと知名度のある高校……
元々方向音痴なのもあってか、教室に行くだけなのに迷子になってしまった。
……やっとついた。と思った時には教室にはもうほとんどの人が座っていて。
ギリギリのところで席に着いたと同時にガラガラと音を立てて開いた教室の扉。きっと担任の先生だ。
そんな先生だろうと期待や不安が入り混じる。そして顔を見せたその人に、私は固まってしまった。
けれど御構い無しに、担任の先生であろう人は教卓に手を付いて喋り出す。
「こんにちは、四組の皆さん。今日からこの四組でみんなと一緒に頑張る、七瀬 和透樹かずきと言います。今日からみんなで頑張ろう!」
周りの子達、特に女の子はひそひそとかっこいいとかなんとか言っている。
けど、私はそれどころではない。思いっきり立ち上がって、
「お、おに……!」
教室中に響き渡る声で叫んでしまった。
担任は、こちらを見てニコッと微笑んでいる。それはもう、楽しんでいるかのよう。

夢にも思っていなかったこと。
私の目の前に担任と言って現れたのは、だった。
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