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日記
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実際の自分…
右腕の話は半ば本当で、実際自分は右腕がおかしい。
2年近く前に脳梗塞になり、脳の一部が死んだ。
どうもそこが右腕を司っている所だったようで、奇跡的に腕は普通に動かせるが、神経がやられたようで、その感覚はかなり鈍い。まるでグローブをはめて豆粒を摘んでいるようだ。
脳梗塞は脳梗塞自体より、その原因になった血管の状態に恐怖がある。
私は無類のチェーンスモーカーで、その上毎日飲酒し、酒のつまみは煙草という、不健康極まりない状況の上に、野菜嫌い、脂身大好きという、まさにコッテリ人間だった。
しかし食生活よりも、呼吸代わりのような喫煙の方に不安があったので、きっと自分の死因は肺癌だろうなと思っていた。だから血管にはまったくの無関心だった。
ある日、急に立てなくなった。
まるで生まれたての馬みたいに、脚がガクガクして、まったく力が入らなくなった。
ただ、気持ちは変に良くて、まるで初めて煙草を吸った時みたいな浮遊感があった。
(以来この感覚は、後遺症のひとつとして時々起こる)
救急病院に行き、即、脳梗塞と診断され入院した。
脳梗塞は脳幹のほんの数ミリ脇で起こっていて、もし少しでもずれて脳幹に入っていたら、おそらく死んでいただろうということだった。
(脳幹は呼吸や心拍を司る、人間の急所)
脳梗塞は他にも大脳に一箇所あった。どちらも親指大あり、壊死部分の大きさとしては大きい方らしかった。
幸い手術には至らず、点滴で血管の中を洗うような治療を受け、10日ほどで退院した。
その間、歩行や身体機能回復のリハビリを受けて、日常動作はすべて回復した。
だが退院後もひと月ほどはひどいふらつきが続き、また異様な眠気にも襲われた。
なので仕事に復帰出来たのは2か月後だった。ただしセーブしながらだった。
食事も野菜中心、禁煙禁酒のまるで仙人みたいな生活になり、他に3種類の薬を一生飲み続けなければならなくなった。まさに不幸のどん底だった。
人間、身体に悪いことがいかに幸せなものなのかが痛いほど分かった。
私の血管は今、古いヒビだらけのゴムホース状態にある。動脈硬化とよく言われるのがこれだ。不摂生していたらこれになりやすい。現に私はなってしまった。
劣化したホースは硬く脆い。そこに泥が溜まると、水が流れにくくなり、圧がかかりヒビの隙間が開き水が漏れる。
これが脳で起これば脳溢血だ。
また血管が詰まって血液が運ぶ栄養や酸素が届かなくなれば、その箇所は壊死する。
それが脳ならば脳梗塞だし、心臓ならば心筋梗塞だ。
一度劣化した血管は二度と元に戻らないと医師に言われた。だから硬くヒビだらけの
ホースの中に、コレステロールという泥を溜めなくする薬と、血液を常にサラサラにする薬は必須となる。
だがこの状態はまるで綱渡りのようなもので、どこかでバランスが崩れたら死が訪れる。脳梗塞の再発率が年を経るに従って高くなるのがそれだ。私の場合、今度は心筋梗塞かも知れない。時々気持ち悪くなったり、心拍や血圧がおかしくなるからだ。
今の私の身体状態は、細かい内出血が身体のあちこちで起こっていて、薬のせいで血が固まりにくいから青タンが多数ある。
要は身体を打ってもいないのに青タンだらけになっているのだ。
しかしそんないつ意識が切れるか分からない日々は、逆に一日の意味を深くしてくれた。この病気のおかげで見えて来たことは多い。
人生何事にも意味があり、決して無駄はないのだが、人はそれに気付かず、悪いことはみんな悲観で済ませて無駄を生産する生き物だなということが、この病気が教えてくれた。
ここに呟きのようなものを残すようになったのも、病気以後の自分の生産した財産を確かめるためだ。中身は大したことないものばかりだが。
とにかく人生無駄はない。どんなことにも意味がある。その意味を感じるアンテナを立てることが生きる上の一番の武器だ。
これを急に書いたのは、オマエ、病気になった時、上の3行をしきりに言い聞かせていたろう?
…と、最近薄れていた生の有り難みを思い出すためだ。
…と。長々と書いてしまったので、この話はここで一旦中断する。
というか、中断を断って終わらせておく。
なぜなら終わらせておかないと、いつ自分が、終わってしまうか分からないからだ。
右腕の話は半ば本当で、実際自分は右腕がおかしい。
2年近く前に脳梗塞になり、脳の一部が死んだ。
どうもそこが右腕を司っている所だったようで、奇跡的に腕は普通に動かせるが、神経がやられたようで、その感覚はかなり鈍い。まるでグローブをはめて豆粒を摘んでいるようだ。
脳梗塞は脳梗塞自体より、その原因になった血管の状態に恐怖がある。
私は無類のチェーンスモーカーで、その上毎日飲酒し、酒のつまみは煙草という、不健康極まりない状況の上に、野菜嫌い、脂身大好きという、まさにコッテリ人間だった。
しかし食生活よりも、呼吸代わりのような喫煙の方に不安があったので、きっと自分の死因は肺癌だろうなと思っていた。だから血管にはまったくの無関心だった。
ある日、急に立てなくなった。
まるで生まれたての馬みたいに、脚がガクガクして、まったく力が入らなくなった。
ただ、気持ちは変に良くて、まるで初めて煙草を吸った時みたいな浮遊感があった。
(以来この感覚は、後遺症のひとつとして時々起こる)
救急病院に行き、即、脳梗塞と診断され入院した。
脳梗塞は脳幹のほんの数ミリ脇で起こっていて、もし少しでもずれて脳幹に入っていたら、おそらく死んでいただろうということだった。
(脳幹は呼吸や心拍を司る、人間の急所)
脳梗塞は他にも大脳に一箇所あった。どちらも親指大あり、壊死部分の大きさとしては大きい方らしかった。
幸い手術には至らず、点滴で血管の中を洗うような治療を受け、10日ほどで退院した。
その間、歩行や身体機能回復のリハビリを受けて、日常動作はすべて回復した。
だが退院後もひと月ほどはひどいふらつきが続き、また異様な眠気にも襲われた。
なので仕事に復帰出来たのは2か月後だった。ただしセーブしながらだった。
食事も野菜中心、禁煙禁酒のまるで仙人みたいな生活になり、他に3種類の薬を一生飲み続けなければならなくなった。まさに不幸のどん底だった。
人間、身体に悪いことがいかに幸せなものなのかが痛いほど分かった。
私の血管は今、古いヒビだらけのゴムホース状態にある。動脈硬化とよく言われるのがこれだ。不摂生していたらこれになりやすい。現に私はなってしまった。
劣化したホースは硬く脆い。そこに泥が溜まると、水が流れにくくなり、圧がかかりヒビの隙間が開き水が漏れる。
これが脳で起これば脳溢血だ。
また血管が詰まって血液が運ぶ栄養や酸素が届かなくなれば、その箇所は壊死する。
それが脳ならば脳梗塞だし、心臓ならば心筋梗塞だ。
一度劣化した血管は二度と元に戻らないと医師に言われた。だから硬くヒビだらけの
ホースの中に、コレステロールという泥を溜めなくする薬と、血液を常にサラサラにする薬は必須となる。
だがこの状態はまるで綱渡りのようなもので、どこかでバランスが崩れたら死が訪れる。脳梗塞の再発率が年を経るに従って高くなるのがそれだ。私の場合、今度は心筋梗塞かも知れない。時々気持ち悪くなったり、心拍や血圧がおかしくなるからだ。
今の私の身体状態は、細かい内出血が身体のあちこちで起こっていて、薬のせいで血が固まりにくいから青タンが多数ある。
要は身体を打ってもいないのに青タンだらけになっているのだ。
しかしそんないつ意識が切れるか分からない日々は、逆に一日の意味を深くしてくれた。この病気のおかげで見えて来たことは多い。
人生何事にも意味があり、決して無駄はないのだが、人はそれに気付かず、悪いことはみんな悲観で済ませて無駄を生産する生き物だなということが、この病気が教えてくれた。
ここに呟きのようなものを残すようになったのも、病気以後の自分の生産した財産を確かめるためだ。中身は大したことないものばかりだが。
とにかく人生無駄はない。どんなことにも意味がある。その意味を感じるアンテナを立てることが生きる上の一番の武器だ。
これを急に書いたのは、オマエ、病気になった時、上の3行をしきりに言い聞かせていたろう?
…と、最近薄れていた生の有り難みを思い出すためだ。
…と。長々と書いてしまったので、この話はここで一旦中断する。
というか、中断を断って終わらせておく。
なぜなら終わらせておかないと、いつ自分が、終わってしまうか分からないからだ。
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