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蛆虫

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死体は蛆虫で遊んでいます。
死んでいるのに美しく脚を揃えて大木の前に座って、まるで体中の蛆虫に綺麗な空気を吸わせるように、蛆虫で膨らんだ腹を探り、両手に溢れる蛆虫を空中に放り投げてはまた、腹を探るのです。
実はそれは、溢れかえる蛆虫が死体の腕を動かしている現象で、綺麗に揃った両脚は、ただ死んだ姿のまま硬直しているだけなのです。
しかしその両脚には足先から股の間まで無数の蛆虫が血流のように往復しており、死体全体を見れば、キラキラと光る白肌の、そこそこ肉付きの良いお方が歓喜されているように見えるのです。
蛆虫の一粒一粒は、確実に死肉を食べ、その悪臭も吸っていますから、少し離れて死体を見る私の鼻には、深い森の葉緑素の香りしかして来ません。そして死体は静かに上げていた両腕を下ろし始めます。その色はだんだん茶色く変化しています。蛆虫は、自分の皮の中で蛹になるといいます。死体は静かになり、それはまるで人間の蛹のようです。その姿が夕闇に溶ける頃、私は火を焚き、その朱色を見つめながら思い出します。この死体が死体になった瞬間を。
彼女は内気で、私の他に話せる相手がいませんでした。いつも何かに怯え、体が萎縮して、その動作ひとつひとつがぎこちなく、食も細く体はカリントウのように硬く痩せ、風貌も地味で暗く、とても若い女性には見えませんでした。彼女は私に何者にも怯えず、のびのびと生きたいと常日頃から言っていましたので、こうして私がその夢を叶えたのです。
美しく生かしてねと死の間際に彼女が言いましたから、私は両脚を揃えて少し折り、体育座りのような形にして足首を紐で縛り、曲げた膝裏に岩を置いてあげました。
硬直してから紐をほどき、岩を外してあげると、すらっとした若い女性の脚の姿になりました。
あとは天の恵みを待つばかりでした。天は公平に人に恵みを与えます。それは蛆虫です。死んだ人には忘れることなく蛆虫が湧きます。まるで小さな天女たちが天に上げる魂を取り込むように。
そしてさっきまで、彼女はふくよかな若い女性の姿になり、その喜びの様を私に見せてくれていたのです。額のあたりの蛆虫の群れが、そよ風のように彼女の前髪をなびかせていました。
「よかったね」を私は何度も呟きました。

そして今、蛹は羽化しました。その背には羽が生え、本物の天女として次々と、陽光に羽を煌めかせて森の空に上がって行くのです。その跡には、飽きられた玩具のような彼女の遺骸があり、そのうち髑髏がポトリと落ちるでしょう。
私が使った火は、彼女を見る自分の顔を照らす焚火だけで、その火の中で彼女は焼かれずに火葬されました。

ずいぶん長くここにいましたから、私もどうやら匂って来たようで、さっきから蝿がブンブンと私にまとわりつきます。そこにはさっき天に昇った天女もいるでしょうが、生きている私には舐めるほか何もしてくれません。
私は初めて彼女が羨ましくなりました。

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