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とりとめなく書く味
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「100%ビーフハンバーグが牛になってます!」
「100%ビーフだから当たり前だろ?」
「あ、そうでした」
「で?」
「あそこで料理してます」
「料理だから当たり前だろ?」
「あ、そうですね」
「で?」
「美味そうな料理です」
「ハンバーグが作るんだから当たり前だろ!」
「そうですよね」
「で、何作ってるの?」
ハンバーグは今日も料理をする。
相手はいつも一人の女の子だ。
ハンバーグは女の子を女の人にするために毎日料理をして食べさせる。
今日はオムレツをアレンジした卵丼だ。
まず卵。
3つがいい量だろう。
ガラスのボールに割り入れる。
ハンバーグの手が動くたび、なんだか一瞬ハンバーグの香りがする。
見ている女の子はこの香りでお腹が鳴る。
「いつもの香り」
そう言って女の子は笑う。
ハンバーグはそれが嬉しい。
ボールの卵をかき混ぜる。
卵の中に感じる繊維感がなくなるまで。
きめの細かい卵液ができる。
しょうゆを卵液に入れ和風の卵焼きの味付けをしておく。
丼に熱々のごはんをよそう。
ハンバーグの香り越しに白ごはんから上がる湯気が見える。
女の子が目を細める。
かたわらのコンロに火をつける。
強火にして鉄のフライパンを乗せる。
フライパンから煙が上がるまで熱する。
熱がハンバーグの肉汁を呼ぶ。
肉汁を垂らしながらハンバーグはフライパンにサラダオイルを入れる。
多めに。
オイルはすぐにほどけてフライパンに広がる。
熱にハンバーグは目を細める。
肉汁が流れる。
そして卵液を入れて一気にかき混ぜる。
卵液はフワフワ膨れながら固まっていく。
火は弱めない。
フライパンの上下だけで、かきまぜながら卵に熱を入れていく。
半熟のうちにフライパンを傾け、卵を端に寄せて一気にフライパンを振り折りたたむ。
折りたたんだしょうゆ味の半熟オムレツを丼の白ごはんに乗せる。
もみ海苔を振りかける。
フライパンに残る油を残らず垂らす。
海苔が油でしんなりする。
バターを乗せる。
すぐに溶け始める。
女の子は知っている。
出されたらすぐにぐちゃぐちゃに混ぜること。ハンバーグをこねるみたいに。
ハンバーグの香りの向こうから出された
卵焼き味のオムレツ丼を、女の子はかき混ぜて無心に食べる。
オムレツ丼は女の子の体になっていく。
今日はしょうゆが染みていく。
女の子を見ながらハンバーグはニンジンとキャベツを極細の千切りにしている。
フレンチドレッシングをかけて女の子に出す。
栄養バランスを考えてドレッシングは少しだけ。
生野菜の向こうでハンバーグがフライパンを拭いている。
鉄に油をなじませている。
女の子にとってはいつもの景色だ。
女の子を見ながら、ハンバーグは明日何作ろうか考え始めた。
「100%ビーフだから当たり前だろ?」
「あ、そうでした」
「で?」
「あそこで料理してます」
「料理だから当たり前だろ?」
「あ、そうですね」
「で?」
「美味そうな料理です」
「ハンバーグが作るんだから当たり前だろ!」
「そうですよね」
「で、何作ってるの?」
ハンバーグは今日も料理をする。
相手はいつも一人の女の子だ。
ハンバーグは女の子を女の人にするために毎日料理をして食べさせる。
今日はオムレツをアレンジした卵丼だ。
まず卵。
3つがいい量だろう。
ガラスのボールに割り入れる。
ハンバーグの手が動くたび、なんだか一瞬ハンバーグの香りがする。
見ている女の子はこの香りでお腹が鳴る。
「いつもの香り」
そう言って女の子は笑う。
ハンバーグはそれが嬉しい。
ボールの卵をかき混ぜる。
卵の中に感じる繊維感がなくなるまで。
きめの細かい卵液ができる。
しょうゆを卵液に入れ和風の卵焼きの味付けをしておく。
丼に熱々のごはんをよそう。
ハンバーグの香り越しに白ごはんから上がる湯気が見える。
女の子が目を細める。
かたわらのコンロに火をつける。
強火にして鉄のフライパンを乗せる。
フライパンから煙が上がるまで熱する。
熱がハンバーグの肉汁を呼ぶ。
肉汁を垂らしながらハンバーグはフライパンにサラダオイルを入れる。
多めに。
オイルはすぐにほどけてフライパンに広がる。
熱にハンバーグは目を細める。
肉汁が流れる。
そして卵液を入れて一気にかき混ぜる。
卵液はフワフワ膨れながら固まっていく。
火は弱めない。
フライパンの上下だけで、かきまぜながら卵に熱を入れていく。
半熟のうちにフライパンを傾け、卵を端に寄せて一気にフライパンを振り折りたたむ。
折りたたんだしょうゆ味の半熟オムレツを丼の白ごはんに乗せる。
もみ海苔を振りかける。
フライパンに残る油を残らず垂らす。
海苔が油でしんなりする。
バターを乗せる。
すぐに溶け始める。
女の子は知っている。
出されたらすぐにぐちゃぐちゃに混ぜること。ハンバーグをこねるみたいに。
ハンバーグの香りの向こうから出された
卵焼き味のオムレツ丼を、女の子はかき混ぜて無心に食べる。
オムレツ丼は女の子の体になっていく。
今日はしょうゆが染みていく。
女の子を見ながらハンバーグはニンジンとキャベツを極細の千切りにしている。
フレンチドレッシングをかけて女の子に出す。
栄養バランスを考えてドレッシングは少しだけ。
生野菜の向こうでハンバーグがフライパンを拭いている。
鉄に油をなじませている。
女の子にとってはいつもの景色だ。
女の子を見ながら、ハンバーグは明日何作ろうか考え始めた。
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