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二車線道路
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陸橋の上から見える
二車線道路のこっちと向こうで
男と女が手を挙げた
ふたりはお互いを見て笑っていた
きっと親しい仲か
恋人同士のふたりが
互いの姿に気が付いたんだと思って
今に横断歩道を駆け寄るぞと
ふたりとはぜんぜん関係ないのに
陸橋の上で僕は笑顔になった
ところがそこへ同時に
右行きと左行きのタクシーが来て
タクシーが去った後に
ふたりの姿は消えていた
結局
笑顔で固まった僕だけが
陸橋の上にぽつんと残った
予想が外れたらしい僕は
笑顔がカチカチに固まっているだけに
このままでは僕は
なんだか馬鹿で終わってしまう
そう思えて
僕は僕の笑顔を
馬鹿面で終わらせないために
この現象のストーリーを考え出した
…ふたりのことを僕は知っている
彼と彼女の行き先も僕は知っている
彼と彼女は昔
とても愛し合っていた
でも結局
結ばれることはなかった
なぜなら彼女は
僕のパートナーだからだ
彼女が僕と結婚したのは
ちょっとした運命のいたずらで
結構運命は
あちこちでいたずらするもので
僕にとってはいいいたずらなんだけど
彼女にとっては
気の毒ないたずらだった
彼女の何が気に入らなかったのか
彼は彼女に別れを切り出した
男性はホント勝手で
それからほんのひと月で
彼女に戻ってくれなんて
言ってきたけど
女性はそんなに甘いものではなく
ちゃんと頭を切り替えるから
その時には僕という
自分にとって無理がないだろうと
彼女が判断した相手がいた
でもね
男女の仲は
そう簡単には割り切れないもので
何年かすると時々
彼女は宙を見る日が増えて
まぁ結局は
頭が切り替わり過ぎて
また彼のことを
考えていたというわけ
僕というやつは変わっているのか
そんな彼女に腹が立つよりも
そんな彼女なら
失ってしまうのがいいのかなと
ふたつの理由で考え始めた
ひとつは完璧主義者であること
僕の他に好きな相手がある女性には
割り切れない違和感を感じてしまうこと
もうひとつはマゾヒストであること
大切な人をわざと失って
自ら悲しみに暮れたいということ
そこで彼女にこう言った
二車線道路の向こうとこちらに
タクシーを呼ぶ企てをすると
まだ彼が好きなんだろう?と
彼女を問い詰めて
うん
という返事を聞き出して
嫉妬に悶絶して
それでも敢えて優しく
彼に連絡しな
あそこの二車線道路の
あっちとこっちで再会して
笑顔で手を挙げて
止まったタクシーに乗るんだ
そして運転手に
僕が決めた
同じ行き先を告げるんだ
行き先は同じホテルの
同じ部屋だ
それから先は
彼と幸せになれよって
喪失感に苛まれながら
彼女に言った結果がこれ
これでいいんだと
僕はふたりを
笑顔で見送る
なんて
彼女との思い出もないのに
すっかり
思い出し笑いで固まっている
僕というおめでたいやつ
という
この笑顔にまつわる話を考え終えて
ヒマだけが恋人だなと
僕は自分に苦笑した
結局この笑顔は
苦笑いでしたという結果で
陸橋の上の僕の笑顔は
やっと本物になった
二車線道路のこっちと向こうで
男と女が手を挙げた
ふたりはお互いを見て笑っていた
きっと親しい仲か
恋人同士のふたりが
互いの姿に気が付いたんだと思って
今に横断歩道を駆け寄るぞと
ふたりとはぜんぜん関係ないのに
陸橋の上で僕は笑顔になった
ところがそこへ同時に
右行きと左行きのタクシーが来て
タクシーが去った後に
ふたりの姿は消えていた
結局
笑顔で固まった僕だけが
陸橋の上にぽつんと残った
予想が外れたらしい僕は
笑顔がカチカチに固まっているだけに
このままでは僕は
なんだか馬鹿で終わってしまう
そう思えて
僕は僕の笑顔を
馬鹿面で終わらせないために
この現象のストーリーを考え出した
…ふたりのことを僕は知っている
彼と彼女の行き先も僕は知っている
彼と彼女は昔
とても愛し合っていた
でも結局
結ばれることはなかった
なぜなら彼女は
僕のパートナーだからだ
彼女が僕と結婚したのは
ちょっとした運命のいたずらで
結構運命は
あちこちでいたずらするもので
僕にとってはいいいたずらなんだけど
彼女にとっては
気の毒ないたずらだった
彼女の何が気に入らなかったのか
彼は彼女に別れを切り出した
男性はホント勝手で
それからほんのひと月で
彼女に戻ってくれなんて
言ってきたけど
女性はそんなに甘いものではなく
ちゃんと頭を切り替えるから
その時には僕という
自分にとって無理がないだろうと
彼女が判断した相手がいた
でもね
男女の仲は
そう簡単には割り切れないもので
何年かすると時々
彼女は宙を見る日が増えて
まぁ結局は
頭が切り替わり過ぎて
また彼のことを
考えていたというわけ
僕というやつは変わっているのか
そんな彼女に腹が立つよりも
そんな彼女なら
失ってしまうのがいいのかなと
ふたつの理由で考え始めた
ひとつは完璧主義者であること
僕の他に好きな相手がある女性には
割り切れない違和感を感じてしまうこと
もうひとつはマゾヒストであること
大切な人をわざと失って
自ら悲しみに暮れたいということ
そこで彼女にこう言った
二車線道路の向こうとこちらに
タクシーを呼ぶ企てをすると
まだ彼が好きなんだろう?と
彼女を問い詰めて
うん
という返事を聞き出して
嫉妬に悶絶して
それでも敢えて優しく
彼に連絡しな
あそこの二車線道路の
あっちとこっちで再会して
笑顔で手を挙げて
止まったタクシーに乗るんだ
そして運転手に
僕が決めた
同じ行き先を告げるんだ
行き先は同じホテルの
同じ部屋だ
それから先は
彼と幸せになれよって
喪失感に苛まれながら
彼女に言った結果がこれ
これでいいんだと
僕はふたりを
笑顔で見送る
なんて
彼女との思い出もないのに
すっかり
思い出し笑いで固まっている
僕というおめでたいやつ
という
この笑顔にまつわる話を考え終えて
ヒマだけが恋人だなと
僕は自分に苦笑した
結局この笑顔は
苦笑いでしたという結果で
陸橋の上の僕の笑顔は
やっと本物になった
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