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間話:彼女の心配事
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昼食は三人で保健室で取らせてもらい、グラウンドに向かう途中で、先輩たちに囲まれてしまう。謝罪をしているよなので、さやかと二人で様子を見ていたが、遠くから、樹を傷つけた先輩がやってきた。彼の方を見ると、体が震えている。体がすくんでしまう。私は左手を、さやかは右手を同時に握る。
先輩が近づく前に、彼を運んでくれた先輩が私たちの前に立ち、その先輩と対峙した後、あの先輩が目の前に立って頭を下げる。
「すまなかった」
彼はたぶん、許してしまうのだろう。けれど、私は許すことができないので睨んでしまう。
借り物競走が始まるため、二人で集合場所に向かうが、嫌な感じがしてしまう。
「…樹、もし、もしも、借り物競走で何かあったら、絶対に私を探して」
「約束する。何かあったら、絶対に冬花を頼るよ」
彼の返事を聞いて、少し落ち着く。けれど、嫌な予感が拭い去れない。できるだけ、彼から目を離さないようにしないと…
競技が始まり、彼と一緒にお題が書かれた紙を置いてある場所に向かう。けれど、お題を吟味しているのか、先についた人が多く、樹とはぐれてしまう。
人の流れが保護者席に向かう。この中では彼を見つけられない。なぜこんなにも不安になっているかはわからない。だが、とりあえず流れにそって進む。
すると急に、服の裾が引っ張られる。
誰っ!
そう思い振り返ると、青を通り越して白くなっている樹が私をつかんでいる。
「…冬花ごめん、頼らせて…、お願い、手を握って…」
こんな彼に私が何をできるかわからない。けれども、彼の手を握る。何があったかは確認しないと。たぶん、彼の家族関係のことだと思うのだけど…
「紗夜大丈夫なの?お題は?」
彼のお題が書かれた紙を見る。よりにもよって、家族ではなく、両親か…。彼に一番ないものを引いてくるとは、彼もよっぽど運がない。
「よりにもよって、ほら私の紙と交換して。今なら人混みでわからないから」
私は他の人から、できるだけ彼が見えないようにし、紙を交換する。そういえば、お題を確認していなかったので、一緒に確認する。お題は『同じ色のチームの先輩、三年なら後輩』だった。
「まあ、どっちもどっちだけど、これよりはマシでしょ」
私は彼のお題をひらひらさせる。
私のお題はお母さんがいるから、大丈夫。あとは、彼のお題である先輩を探さないといけない。そう思っていると、お母さんが保護者席からやってくる。
理由を尋ねると、彼の様子から察したらしい。
あとは先輩を探さないと…
「おっ、いたいた」
彼を運んでくれた先輩が話しかけ11れくる。ちょうどよかったのかな。先輩が言うには、このめんどくさいお題は嫌がらせみたい。「まったく嫌になるな」という先輩の発言には同意するが、先輩のお題は『訳あり生徒』だった。借り物競争では最後にお題が発表される。そんなお題を発表させるわけにはいかない。とめに入ろうとすると、お母さんから止められてしまう。
「心苦しいが、一応念のためと思ってな、一緒にゴールしてくれねえか?」
「先輩、私は大丈夫なので、ゴールまで連れて行ってもらえますか?」
彼自身がそう言っているのに、私が止めるわけにはいかない。そのまま四人でゴールに入り、お題が確認される。係の人が驚いた顔をし、彼に話しかける。
どうやら発表の内容は変えてもらえるらしい。よかった。
無事に体育祭が終わり、お母さんと帰宅する。
「…お母さん、どうして、あの時、止めたの?」
「あの時って、『訳あり生徒』の時のこと?」
「そう」
「冬花ちゃんは、なんでも守りすぎだと思うの。それは紗夜ちゃんのためにはならないんじゃないかな?」
「けれど、あれは」
「実際、紗夜ちゃんは呼ばれてもいいと判断した。結果は違うようになったかもしれないけれど、自分で考え、行動していた。ちゃんと前に進もうとしているのよ」
「それは…」
「けれど、今回は冬花ちゃんが彼の成長を遮ろうとしていた」
私がしようとしていたことは間違っていたのかな
「あなたの行動は間違っていないわ。あの手を握ってあげるのは良かったと思うわよ。ふふっ」
「ちがっ!そう言うわけじゃ」
「別に意味なんてなんでもいいのよ。だけど、あなたのおかげで、紗夜ちゃんが助かっているのも事実だと思うわ。だから、あなたは支えてあげればいいの。彼の選択肢を奪うのではなく、彼の考えや行動を支えてあげるの」
選択肢を奪うのではなく、支える。
私にできるかな?
「今までのようにすればいいのよ。あなたは今のままで十分、彼のためになっているわ」
先輩が近づく前に、彼を運んでくれた先輩が私たちの前に立ち、その先輩と対峙した後、あの先輩が目の前に立って頭を下げる。
「すまなかった」
彼はたぶん、許してしまうのだろう。けれど、私は許すことができないので睨んでしまう。
借り物競走が始まるため、二人で集合場所に向かうが、嫌な感じがしてしまう。
「…樹、もし、もしも、借り物競走で何かあったら、絶対に私を探して」
「約束する。何かあったら、絶対に冬花を頼るよ」
彼の返事を聞いて、少し落ち着く。けれど、嫌な予感が拭い去れない。できるだけ、彼から目を離さないようにしないと…
競技が始まり、彼と一緒にお題が書かれた紙を置いてある場所に向かう。けれど、お題を吟味しているのか、先についた人が多く、樹とはぐれてしまう。
人の流れが保護者席に向かう。この中では彼を見つけられない。なぜこんなにも不安になっているかはわからない。だが、とりあえず流れにそって進む。
すると急に、服の裾が引っ張られる。
誰っ!
そう思い振り返ると、青を通り越して白くなっている樹が私をつかんでいる。
「…冬花ごめん、頼らせて…、お願い、手を握って…」
こんな彼に私が何をできるかわからない。けれども、彼の手を握る。何があったかは確認しないと。たぶん、彼の家族関係のことだと思うのだけど…
「紗夜大丈夫なの?お題は?」
彼のお題が書かれた紙を見る。よりにもよって、家族ではなく、両親か…。彼に一番ないものを引いてくるとは、彼もよっぽど運がない。
「よりにもよって、ほら私の紙と交換して。今なら人混みでわからないから」
私は他の人から、できるだけ彼が見えないようにし、紙を交換する。そういえば、お題を確認していなかったので、一緒に確認する。お題は『同じ色のチームの先輩、三年なら後輩』だった。
「まあ、どっちもどっちだけど、これよりはマシでしょ」
私は彼のお題をひらひらさせる。
私のお題はお母さんがいるから、大丈夫。あとは、彼のお題である先輩を探さないといけない。そう思っていると、お母さんが保護者席からやってくる。
理由を尋ねると、彼の様子から察したらしい。
あとは先輩を探さないと…
「おっ、いたいた」
彼を運んでくれた先輩が話しかけ11れくる。ちょうどよかったのかな。先輩が言うには、このめんどくさいお題は嫌がらせみたい。「まったく嫌になるな」という先輩の発言には同意するが、先輩のお題は『訳あり生徒』だった。借り物競争では最後にお題が発表される。そんなお題を発表させるわけにはいかない。とめに入ろうとすると、お母さんから止められてしまう。
「心苦しいが、一応念のためと思ってな、一緒にゴールしてくれねえか?」
「先輩、私は大丈夫なので、ゴールまで連れて行ってもらえますか?」
彼自身がそう言っているのに、私が止めるわけにはいかない。そのまま四人でゴールに入り、お題が確認される。係の人が驚いた顔をし、彼に話しかける。
どうやら発表の内容は変えてもらえるらしい。よかった。
無事に体育祭が終わり、お母さんと帰宅する。
「…お母さん、どうして、あの時、止めたの?」
「あの時って、『訳あり生徒』の時のこと?」
「そう」
「冬花ちゃんは、なんでも守りすぎだと思うの。それは紗夜ちゃんのためにはならないんじゃないかな?」
「けれど、あれは」
「実際、紗夜ちゃんは呼ばれてもいいと判断した。結果は違うようになったかもしれないけれど、自分で考え、行動していた。ちゃんと前に進もうとしているのよ」
「それは…」
「けれど、今回は冬花ちゃんが彼の成長を遮ろうとしていた」
私がしようとしていたことは間違っていたのかな
「あなたの行動は間違っていないわ。あの手を握ってあげるのは良かったと思うわよ。ふふっ」
「ちがっ!そう言うわけじゃ」
「別に意味なんてなんでもいいのよ。だけど、あなたのおかげで、紗夜ちゃんが助かっているのも事実だと思うわ。だから、あなたは支えてあげればいいの。彼の選択肢を奪うのではなく、彼の考えや行動を支えてあげるの」
選択肢を奪うのではなく、支える。
私にできるかな?
「今までのようにすればいいのよ。あなたは今のままで十分、彼のためになっているわ」
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