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リオン視点3
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昨日大量に置かれていた書類を片付けても、さらに追加された書類を見てこの場から逃げ出したくなる。が、そんな事を言っている暇はないので、大人しく席に座り、作業を開始する。
「それで、アリシアは何に悩んでいたんだい」
「…………」
手を動かしながら、今日アリシアから聞いたことをレオスに確認しようとしたのだが、レオスの反応が悪い。どう言えばいいのか迷っているというよりも、どうやら私に伝えるかどうか迷っているらしい。
「私には言えない事だったか?」
「……いいえ、そう言うわけではありません。あいつは……、あー、クソっ」
レオスは急に頭を思いっきり掻きむしり、もう一度私を見る。
「はぁ、アリシアの様子がおかしかったのは嫉妬だからだそうだ」
「嫉妬?」
「ああ、婚約者と平等に接しているシェリーやルーシア嬢に嫉妬したらしい。そして、そんな感情を抱いた自分が気に入らなかったんだろう。昨日、リアム様が行っていた事が本当だったと言う事だ」
「そうか……。他には」
「お前の事が好きだとよ」
「……ッ……」
頬が熱くなる。そして我慢しないと顔がニヤけてしまいそうになるので、必死に堪える。
「だが、お前の隣には立てないってさ」
「どうして!」
レオスにジッと見つめられ冷静になる。ふぅ。
「すまない、続けてくれ」
「……自分の立場はお前には釣り合わないと行っていた。それは元平民ということよりも、犯罪者の子供ということが、あいつの中では大きいらしい」
「…………」
アリシアはアリーシャ殿の事を本当に慕っていた。彼女を殺したのが、自分の両親だと言う事、その発端が自分であると言う事。実際には違うが、アリシアはその二つの鎖に絡め取られている。
「それと……」
「どうした?」
「俺は言われるまで気がつかなかった。アリシアがあの日から笑えなくなっている事に……」
「なっ!?」
確かにアリシアが笑っている姿を最近は見ていない。最近? いつから見ていないんだ私は。
ギュッと両手に力が入るのがわかる。好きだと思いながら、私は彼女の異常に気づいていなかった。
「自分は壊れている。だから隣に立つことはできない。あいつはそう言っていた。それで、どうするんだリオン? 笑えない女は好きじゃないか?」
「馬鹿を言うな。そんな事で私の長年の恋がなくなるとでも?」
確かにショックはショックだった。だが、それはアリシアが笑えないということではない。アリシアが笑えなくなったと言うことに気づいていなかったことに対してだ。
「……この事をシェリア嬢には?」
「シェリーにはまだ話していない。今度それとなく話してみるつもりだ」
「それがいいだろう。今日、アリシアが早く出かけただけであんなに影響を受けていたんだ。この話は慎重に取り扱うべきだろう」
「ああ、それともう一つ」
「まだ何かあるのか」
「監視対象であるミラ・レーソンが接触してきた」
「なに?」
接触してくるのであれば私かと思っていたが勘違いか? それとも、私の護衛でもあるレオスを利用しようとでも考えているのか?
「続けてくれ」
「シェリーは新侯爵と継母、アリシアによって虐待されていると。そして、私はシェリーを助けるためにアリシアの婚約者となっていると「ほう」……やめろ、嘘だってわかっているだろ! いちいち睨むな!」
「すまない、少し考えてしまった。それよりもあの女は何を根拠にそんな事を? 前世とやらか?」
「そのようだが、どうやらアレの知っている世界とは別物のようらしい。言っていることが違いすぎる。シェリーのことに関しても、俺のことに関しても。だが、アリシアを貶めたいのは本当のようだ」
「その理由はなんだ? 正義感か何かか?」
「そこまではわからないが、このままではアリシアが破滅すると言っていた。なのに俺の味方という事を強調したということは、手を下すのはアレという事なんだろう」
男爵令嬢である彼女が、侯爵令嬢であるアリシアに手を下す。そんな馬鹿なと言いたいところではあるが、彼女が言っていることは馬鹿にはできない。
アリシアはわからない。しかし、あの時、アリシアが毒草を私に渡してくれていなければ、必ずと言っていいほど彼女の言う通り、シェリア嬢は虐待されていただろうから。
「しかし、現当主はシェリア嬢ということは有名だろう? どうして知らないんだ? レーソン男爵は何をしている」
「アレは自分の知識が間違っているとは思っていないとかだろ。絶対に他人の話を聞く奴じやないからな。レーソン男爵も苦労しているんじゃないですか?」
レオスの言葉に納得する。言葉が通じない者とやりとりをするのはとても疲れるが、アリシアが関わる以上、放っておく訳にはいかない。
「とりあえず、ミラ・レーソンの監視を強める。今はまだこのぐらいしかできないが、やらないよりはましだろう」
アリシアにはこんなことに手を煩わせるのではなく、心置きなく以前のように笑ってもらいたい。気づいていなかった私がそう思うのは情けないが、今日知ることができて本当によかった。
「それで、アリシアは何に悩んでいたんだい」
「…………」
手を動かしながら、今日アリシアから聞いたことをレオスに確認しようとしたのだが、レオスの反応が悪い。どう言えばいいのか迷っているというよりも、どうやら私に伝えるかどうか迷っているらしい。
「私には言えない事だったか?」
「……いいえ、そう言うわけではありません。あいつは……、あー、クソっ」
レオスは急に頭を思いっきり掻きむしり、もう一度私を見る。
「はぁ、アリシアの様子がおかしかったのは嫉妬だからだそうだ」
「嫉妬?」
「ああ、婚約者と平等に接しているシェリーやルーシア嬢に嫉妬したらしい。そして、そんな感情を抱いた自分が気に入らなかったんだろう。昨日、リアム様が行っていた事が本当だったと言う事だ」
「そうか……。他には」
「お前の事が好きだとよ」
「……ッ……」
頬が熱くなる。そして我慢しないと顔がニヤけてしまいそうになるので、必死に堪える。
「だが、お前の隣には立てないってさ」
「どうして!」
レオスにジッと見つめられ冷静になる。ふぅ。
「すまない、続けてくれ」
「……自分の立場はお前には釣り合わないと行っていた。それは元平民ということよりも、犯罪者の子供ということが、あいつの中では大きいらしい」
「…………」
アリシアはアリーシャ殿の事を本当に慕っていた。彼女を殺したのが、自分の両親だと言う事、その発端が自分であると言う事。実際には違うが、アリシアはその二つの鎖に絡め取られている。
「それと……」
「どうした?」
「俺は言われるまで気がつかなかった。アリシアがあの日から笑えなくなっている事に……」
「なっ!?」
確かにアリシアが笑っている姿を最近は見ていない。最近? いつから見ていないんだ私は。
ギュッと両手に力が入るのがわかる。好きだと思いながら、私は彼女の異常に気づいていなかった。
「自分は壊れている。だから隣に立つことはできない。あいつはそう言っていた。それで、どうするんだリオン? 笑えない女は好きじゃないか?」
「馬鹿を言うな。そんな事で私の長年の恋がなくなるとでも?」
確かにショックはショックだった。だが、それはアリシアが笑えないということではない。アリシアが笑えなくなったと言うことに気づいていなかったことに対してだ。
「……この事をシェリア嬢には?」
「シェリーにはまだ話していない。今度それとなく話してみるつもりだ」
「それがいいだろう。今日、アリシアが早く出かけただけであんなに影響を受けていたんだ。この話は慎重に取り扱うべきだろう」
「ああ、それともう一つ」
「まだ何かあるのか」
「監視対象であるミラ・レーソンが接触してきた」
「なに?」
接触してくるのであれば私かと思っていたが勘違いか? それとも、私の護衛でもあるレオスを利用しようとでも考えているのか?
「続けてくれ」
「シェリーは新侯爵と継母、アリシアによって虐待されていると。そして、私はシェリーを助けるためにアリシアの婚約者となっていると「ほう」……やめろ、嘘だってわかっているだろ! いちいち睨むな!」
「すまない、少し考えてしまった。それよりもあの女は何を根拠にそんな事を? 前世とやらか?」
「そのようだが、どうやらアレの知っている世界とは別物のようらしい。言っていることが違いすぎる。シェリーのことに関しても、俺のことに関しても。だが、アリシアを貶めたいのは本当のようだ」
「その理由はなんだ? 正義感か何かか?」
「そこまではわからないが、このままではアリシアが破滅すると言っていた。なのに俺の味方という事を強調したということは、手を下すのはアレという事なんだろう」
男爵令嬢である彼女が、侯爵令嬢であるアリシアに手を下す。そんな馬鹿なと言いたいところではあるが、彼女が言っていることは馬鹿にはできない。
アリシアはわからない。しかし、あの時、アリシアが毒草を私に渡してくれていなければ、必ずと言っていいほど彼女の言う通り、シェリア嬢は虐待されていただろうから。
「しかし、現当主はシェリア嬢ということは有名だろう? どうして知らないんだ? レーソン男爵は何をしている」
「アレは自分の知識が間違っているとは思っていないとかだろ。絶対に他人の話を聞く奴じやないからな。レーソン男爵も苦労しているんじゃないですか?」
レオスの言葉に納得する。言葉が通じない者とやりとりをするのはとても疲れるが、アリシアが関わる以上、放っておく訳にはいかない。
「とりあえず、ミラ・レーソンの監視を強める。今はまだこのぐらいしかできないが、やらないよりはましだろう」
アリシアにはこんなことに手を煩わせるのではなく、心置きなく以前のように笑ってもらいたい。気づいていなかった私がそう思うのは情けないが、今日知ることができて本当によかった。
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