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第三十四話
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「アリシア、今日はお迎えが来るからね」
「お迎え……ですか?」
朝食を食べ終わってすぐのお姉様の発言に、思わず聞き返してしまいます。
ですが、どうしてなのか、誰が、なんて事を言うつもりはありません。よく考えてみれば、お姉様を迎えに来る人なんて一人しかいないのですから。
「いえ、そうですよね。わかりました。私は一人で「何を言っているの? もちろん、アリシアも一緒に行くのよ?」……えっ?」
「レオス様と二人で行くのではないのですか?」
「レオ? あー、違う違う。レオもいるかもしれないけれど、実際は……まぁ、来てからのお楽しみってことにしましょう」
いえ、レオス様が付き添いとして来るのであれば、王族の方以外にあり得ないのでは……そして、私たちの家に来るような人物は一人しかいません。だって、リオン様以外の王族は皆、婚約者がいるのですから……
「やぁ、少し遅れてしまったかな?」
「いいえ、そんな事ありませんわ」
まるで示し合わせたかのように話す二人に違和感を覚えながらも、馬車に乗せてもらい、学園へと向かう。
馬車の中には四人。お姉様の隣に私、前にはレオス様、そして私の前にはリオン様が座っている。
「あの……どうして今日は……」
どうしても気になってしまい、尋ねると、リオン様はチラリとお姉様を見て、お姉様は小さく首を横に振った。
「レオスがシェリア嬢と学園であまり会えていないからね。いい機会だと思ったんだ」
「……そうなんですか? それなのに私もご一緒させていただき、ありがとうございます」
絶対に嘘。リオン様がレオス様の名前を呼んだ時に、レオス様が少し驚いた顔をしていたのを見逃しませんでした。
きっと、昨日私が眠ってしまった間に何かあったのでしょう。聞いたところで教えてくれるのであれば、最初から教えてもらえるでしょうし……聞いても答えてくれないので聞きませんが。聞いても答えてくれませんので……
「何か訴えられているような気がするが、り……アリシアは昨日はよく眠れたかい?」
り……? リオン様は何を言いかけたのでしょうか? それに、どうしてお姉様はリオン様をジト目で睨んでいるのでしょうか? リオン様もそんなお姉様から目を背けています。
気になる……けれど、今はお礼を言う方が先ですね。
「はい。お陰様でよく眠れました。部屋まで運んでいただき、ありがとうございます」
「それならよかった」
私を見て朗らかに笑うリオン様。その笑顔を見ていると、心臓がドキドキとうるさい。その音を誤魔化すように、私は隣にいるお姉様を見て質問する。
「……どうしてお姉様はリオン様を睨んでいるのですか?」
「ん~、別に何でもないよ? ただこの中に男らしくない人がいるな~と思って」
「ぐっ」
男らしくない人? リオン様が反応しているという事はリオン様のことなのでしょうけど、どうしてお姉様はそんな風に言うのでしょうか?
ベッドに私を運ぶ事は男らしくないのでしょうか?
「そんなことよりも、レオはどうしたの? 怒ってない?」
「……怒ってはいない」
「嘘、私の目を見て言って」
やっぱり、二人の関係は羨ましい。私には全然わからなかった。お姉様がどうして気づいたのでしょうか? 一緒にいた日々? それとも信頼?
「……はぁ。昨日、俺はリオン様に待っておくように言っていたんだよ。それでも、リオン様は行ってしまっていてな。追いかけたが追いつかなかった。もっと早く行動していれば……」
「リオン様はどうしてレオス様を?」
リオン様は何の理由もなしにそんな事はしないと思います。だから、どうしてもレオス様を置いていかないといけない理由があったのではないでしょうか。
「レオスを連れて行けば問題が大きくなると思ったからだ」
「そんな事はありません!」
レオス様の言葉に、レオス様がすぐさま否定をする。しかし、リオン様は反論し始めた。
「じゃあ、お前は目の前でシェリア嬢が罵倒されたとして、手を出さない自信はあるか? 例え正論だとしても、言葉で追い詰めるような事はしないと言えるか? 目的が情報である以上、あの二人に口を噤まれる訳にはいかなかった」
「……申し訳ありません」
「お前はシェリア嬢のために、絶対について来ると思ったから、こんな手を使ってしまった。私の方こそ申し訳ない」
「はい。これで終わりですね。レオも納得した?」
「ああ」
「そう。なら大丈夫ね」
そう話している間に学園に到着する。リオン様とレオス様が先に降り、レオス様がお姉様に手を差し、お姉様がその手をとった。
私はその後にリオン様に手をとってもらい、馬車から降りる。
あの人は演説をしていないみたい。やっと諦めてくれたのでしょうか?
アリーシャ様の命を奪った毒草の提供者。一体どんな目的で母にそんな危険な物を渡したのか、あの人の考えている事が何一つわからない。
ただ、顔を合わせずに済んだことにホッとする。
「どうかしたのかい?」
「いいえ、何でもありません」
立ち止まっている私を不審に思ったリオン様に返事をし、教室へと歩き始める。
その瞬間、背中に衝撃が走った。
「お迎え……ですか?」
朝食を食べ終わってすぐのお姉様の発言に、思わず聞き返してしまいます。
ですが、どうしてなのか、誰が、なんて事を言うつもりはありません。よく考えてみれば、お姉様を迎えに来る人なんて一人しかいないのですから。
「いえ、そうですよね。わかりました。私は一人で「何を言っているの? もちろん、アリシアも一緒に行くのよ?」……えっ?」
「レオス様と二人で行くのではないのですか?」
「レオ? あー、違う違う。レオもいるかもしれないけれど、実際は……まぁ、来てからのお楽しみってことにしましょう」
いえ、レオス様が付き添いとして来るのであれば、王族の方以外にあり得ないのでは……そして、私たちの家に来るような人物は一人しかいません。だって、リオン様以外の王族は皆、婚約者がいるのですから……
「やぁ、少し遅れてしまったかな?」
「いいえ、そんな事ありませんわ」
まるで示し合わせたかのように話す二人に違和感を覚えながらも、馬車に乗せてもらい、学園へと向かう。
馬車の中には四人。お姉様の隣に私、前にはレオス様、そして私の前にはリオン様が座っている。
「あの……どうして今日は……」
どうしても気になってしまい、尋ねると、リオン様はチラリとお姉様を見て、お姉様は小さく首を横に振った。
「レオスがシェリア嬢と学園であまり会えていないからね。いい機会だと思ったんだ」
「……そうなんですか? それなのに私もご一緒させていただき、ありがとうございます」
絶対に嘘。リオン様がレオス様の名前を呼んだ時に、レオス様が少し驚いた顔をしていたのを見逃しませんでした。
きっと、昨日私が眠ってしまった間に何かあったのでしょう。聞いたところで教えてくれるのであれば、最初から教えてもらえるでしょうし……聞いても答えてくれないので聞きませんが。聞いても答えてくれませんので……
「何か訴えられているような気がするが、り……アリシアは昨日はよく眠れたかい?」
り……? リオン様は何を言いかけたのでしょうか? それに、どうしてお姉様はリオン様をジト目で睨んでいるのでしょうか? リオン様もそんなお姉様から目を背けています。
気になる……けれど、今はお礼を言う方が先ですね。
「はい。お陰様でよく眠れました。部屋まで運んでいただき、ありがとうございます」
「それならよかった」
私を見て朗らかに笑うリオン様。その笑顔を見ていると、心臓がドキドキとうるさい。その音を誤魔化すように、私は隣にいるお姉様を見て質問する。
「……どうしてお姉様はリオン様を睨んでいるのですか?」
「ん~、別に何でもないよ? ただこの中に男らしくない人がいるな~と思って」
「ぐっ」
男らしくない人? リオン様が反応しているという事はリオン様のことなのでしょうけど、どうしてお姉様はそんな風に言うのでしょうか?
ベッドに私を運ぶ事は男らしくないのでしょうか?
「そんなことよりも、レオはどうしたの? 怒ってない?」
「……怒ってはいない」
「嘘、私の目を見て言って」
やっぱり、二人の関係は羨ましい。私には全然わからなかった。お姉様がどうして気づいたのでしょうか? 一緒にいた日々? それとも信頼?
「……はぁ。昨日、俺はリオン様に待っておくように言っていたんだよ。それでも、リオン様は行ってしまっていてな。追いかけたが追いつかなかった。もっと早く行動していれば……」
「リオン様はどうしてレオス様を?」
リオン様は何の理由もなしにそんな事はしないと思います。だから、どうしてもレオス様を置いていかないといけない理由があったのではないでしょうか。
「レオスを連れて行けば問題が大きくなると思ったからだ」
「そんな事はありません!」
レオス様の言葉に、レオス様がすぐさま否定をする。しかし、リオン様は反論し始めた。
「じゃあ、お前は目の前でシェリア嬢が罵倒されたとして、手を出さない自信はあるか? 例え正論だとしても、言葉で追い詰めるような事はしないと言えるか? 目的が情報である以上、あの二人に口を噤まれる訳にはいかなかった」
「……申し訳ありません」
「お前はシェリア嬢のために、絶対について来ると思ったから、こんな手を使ってしまった。私の方こそ申し訳ない」
「はい。これで終わりですね。レオも納得した?」
「ああ」
「そう。なら大丈夫ね」
そう話している間に学園に到着する。リオン様とレオス様が先に降り、レオス様がお姉様に手を差し、お姉様がその手をとった。
私はその後にリオン様に手をとってもらい、馬車から降りる。
あの人は演説をしていないみたい。やっと諦めてくれたのでしょうか?
アリーシャ様の命を奪った毒草の提供者。一体どんな目的で母にそんな危険な物を渡したのか、あの人の考えている事が何一つわからない。
ただ、顔を合わせずに済んだことにホッとする。
「どうかしたのかい?」
「いいえ、何でもありません」
立ち止まっている私を不審に思ったリオン様に返事をし、教室へと歩き始める。
その瞬間、背中に衝撃が走った。
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