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第四十六話
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一週間の謹慎? なぜ!?
私の気持ちはこの一言に尽きるでしょう。確かに私に悪い所はありました。ですが、これは横暴だと思います!
「お姉様!これは「これは姉としてではなく、アースベルト家当主としての命令です」……どうしてなのでしょうか?」
「それはリオン様ならわかるのではないでしょうか」
振り返って、リオン様を見る。
「なんのことかな?」
「リオン様、アリシアに手を出しましたよね?」
「…………いや」
「嘘です。あのアリシアが言葉で説得できるはずありません。どうせ、キスでもしたんでしょう?」
お姉様のキスという言葉に頬が熱くなるのを感じる。そんな私の様子をしっかりた見ていたのでしょう。
「確定……ですね。リオン様、これはどういうつもりですか? まだ婚約は結んでいませんよね? そんな相手に手を出すんですか?」
「何を言う。アリシアが承諾してくれれば婚約は成立。そういう契約だっただろう?」
「その間に陛下並びに王妃様の許可を取るのがあったと思いますけど?」
「ああ、私は約束を守るよ」
「……王族は婚約相手をしっかりと見定めるために直接お会いになるという話は嘘だったのでしょうか?」
「いいや、嘘ではない」
お姉様はチラリと私を見るが、私は心当たりが無さすぎて、首を横に振る。
「覚えがないようですが?」
「いいや、父も母もリーアを可愛がっていたよ」
もう一度お姉様が私を見るので、また首を横に振る。王城で保護していただいた時に会っていたのは、家庭教師であるおじ様と監視役であるメイドの二人のみなのですから。
「はぁ。まあいいです。一週間後、陛下との謁見の場を設けていただけますか? どちらにせよ、そこで顔合わせを済ませましょう」
「ああ、それでいいよ」
良くはありません。このままでは、私は一週間の謹慎のままではないですか。なんとしてでも、撤回していただかないと……
「お姉様「ダメ」……まだ何も言っていないのですが……謹慎を「だからダメと言っているでしょう?」むぅ」
「むくれてもダメ。可愛いけど……。アリシアなら一週間ぐらい学園を休んでも、授業に遅れる事はないでしょ? 大人しく休みなさい」
「……わかりました。ですがせめて、どうしてかだけ教えてもらえませんか?」
お姉様は少し悩んだ後、私を見てため息をつく。
「はぁ。言わないと聞いてくれないわよね。まず一つ。貴方、今の顔わかってる? 常にニヤけてるわよ」
「にやっ……!?」
「そう。とても嬉しそうな顔をしているの。そんな顔を常にしてみなさい。察しのいい令嬢は『あっ、何か進展があったんだな』と思うはずよ」
私はニヤけてなんて……小さいころからほとんど無表情で、笑うのがとても稀だと言われていたのに……
「はぁ。そしてここで二つ目。リオン様と仲が深まった事に対して、良く思わない人物が多くいる事。今でさえ面倒臭い奴に絡まれているのに、リオン様関係で揉める相手を増やしたくないわ。せめて、『しっかりと話し合った上で決めました。これは王族の本意です。』と最初に対外的に示さないと、リオン様の気持ちを考えない利己的な子が増えると思うの。いちいち相手したい?」
私は何度も首を横に振る。
「そうね。私も相手したくないわ。そして三つ目。これが最後かつ、最も重要な事。それはね……」
「それは……」
「リオン様が貴方に手を出したことよ!」
「えっ?」
「ああ。一度手を出してしまえば、もう以前までの理性で耐える事はできないわ。だってアリシアはこんなに可愛いもの。もう以前のようなヘタレではいられないわ。だってアリシアが受け入れてくれる事を理解したもの。だからね。物理的に距離を取る事にしたの。いいわね、アリシア!」
「はっ、はい」
お姉様が早口で捲し立てる。その勢いに押され、思わず、返事をしてしまいました。
「よろしい。それではリオン様ごきげんよう。今日は二人で! 帰らせてもらいますわ」
それがよかったのか、お姉様の機嫌が良くなり、私の手を引いて教室から出る。
「あっ」
「? どうしたのアリシア?」
「お姉様、少し待っていてください」
今日、迷惑をかけた人に謝らないといけない。そう思って、私はもう一度教室に戻る。
「ルーシア様、私を探していただき、ありがとうござます。それと、申し訳ありませんでした」
「お礼なんていりませんわ。アリシア様が無事でよかったです。ですが、そうですわね……。ならば、今度またお茶会をしましょう」
「はい!」
もう一人、今日一番迷惑をかけた人物……
「リリア様、申し訳ありませんでした」
「いえ、そんなっ……私の方こそ、アリシア様のお気持ちを考えるべきでした。申し訳ありません」
「謝らないでください。そもそも、あの手紙の意味を邪推した私が悪いのですから」
「いえ、わかっていないアリシア様に対して、少し意地悪をする様に黙っていたのは私です!」
「「……」」
「ふふっ、それではお互い様という事で」
「はい。それに、ようやく私とも笑ってもらいました」
「えっ? あっ……」
「これで、以前よりも仲良くなれましたね」
「そうですね。これからもよろしくお願いします」
「はい!」
そして、最後に……
「リオン様」
「ん?」
私はリオン様にそっと近づいて、
「私も大好きです」
耳元で今まで言えなかった気持ちを囁いた。
「それでは、また」
お辞儀をして、教室からすぐに出れるよう小走りをする。今の顔は誰にも見られたくなかったのですが――
「アリシア、顔真っ赤だよ? 何を言ってきたのかな~?」
ニヤニヤと揶揄って来るお姉様に、私は何も言えず、ただひたすらに、お姉様が飽きるのを待つしかありませんでした。
私の気持ちはこの一言に尽きるでしょう。確かに私に悪い所はありました。ですが、これは横暴だと思います!
「お姉様!これは「これは姉としてではなく、アースベルト家当主としての命令です」……どうしてなのでしょうか?」
「それはリオン様ならわかるのではないでしょうか」
振り返って、リオン様を見る。
「なんのことかな?」
「リオン様、アリシアに手を出しましたよね?」
「…………いや」
「嘘です。あのアリシアが言葉で説得できるはずありません。どうせ、キスでもしたんでしょう?」
お姉様のキスという言葉に頬が熱くなるのを感じる。そんな私の様子をしっかりた見ていたのでしょう。
「確定……ですね。リオン様、これはどういうつもりですか? まだ婚約は結んでいませんよね? そんな相手に手を出すんですか?」
「何を言う。アリシアが承諾してくれれば婚約は成立。そういう契約だっただろう?」
「その間に陛下並びに王妃様の許可を取るのがあったと思いますけど?」
「ああ、私は約束を守るよ」
「……王族は婚約相手をしっかりと見定めるために直接お会いになるという話は嘘だったのでしょうか?」
「いいや、嘘ではない」
お姉様はチラリと私を見るが、私は心当たりが無さすぎて、首を横に振る。
「覚えがないようですが?」
「いいや、父も母もリーアを可愛がっていたよ」
もう一度お姉様が私を見るので、また首を横に振る。王城で保護していただいた時に会っていたのは、家庭教師であるおじ様と監視役であるメイドの二人のみなのですから。
「はぁ。まあいいです。一週間後、陛下との謁見の場を設けていただけますか? どちらにせよ、そこで顔合わせを済ませましょう」
「ああ、それでいいよ」
良くはありません。このままでは、私は一週間の謹慎のままではないですか。なんとしてでも、撤回していただかないと……
「お姉様「ダメ」……まだ何も言っていないのですが……謹慎を「だからダメと言っているでしょう?」むぅ」
「むくれてもダメ。可愛いけど……。アリシアなら一週間ぐらい学園を休んでも、授業に遅れる事はないでしょ? 大人しく休みなさい」
「……わかりました。ですがせめて、どうしてかだけ教えてもらえませんか?」
お姉様は少し悩んだ後、私を見てため息をつく。
「はぁ。言わないと聞いてくれないわよね。まず一つ。貴方、今の顔わかってる? 常にニヤけてるわよ」
「にやっ……!?」
「そう。とても嬉しそうな顔をしているの。そんな顔を常にしてみなさい。察しのいい令嬢は『あっ、何か進展があったんだな』と思うはずよ」
私はニヤけてなんて……小さいころからほとんど無表情で、笑うのがとても稀だと言われていたのに……
「はぁ。そしてここで二つ目。リオン様と仲が深まった事に対して、良く思わない人物が多くいる事。今でさえ面倒臭い奴に絡まれているのに、リオン様関係で揉める相手を増やしたくないわ。せめて、『しっかりと話し合った上で決めました。これは王族の本意です。』と最初に対外的に示さないと、リオン様の気持ちを考えない利己的な子が増えると思うの。いちいち相手したい?」
私は何度も首を横に振る。
「そうね。私も相手したくないわ。そして三つ目。これが最後かつ、最も重要な事。それはね……」
「それは……」
「リオン様が貴方に手を出したことよ!」
「えっ?」
「ああ。一度手を出してしまえば、もう以前までの理性で耐える事はできないわ。だってアリシアはこんなに可愛いもの。もう以前のようなヘタレではいられないわ。だってアリシアが受け入れてくれる事を理解したもの。だからね。物理的に距離を取る事にしたの。いいわね、アリシア!」
「はっ、はい」
お姉様が早口で捲し立てる。その勢いに押され、思わず、返事をしてしまいました。
「よろしい。それではリオン様ごきげんよう。今日は二人で! 帰らせてもらいますわ」
それがよかったのか、お姉様の機嫌が良くなり、私の手を引いて教室から出る。
「あっ」
「? どうしたのアリシア?」
「お姉様、少し待っていてください」
今日、迷惑をかけた人に謝らないといけない。そう思って、私はもう一度教室に戻る。
「ルーシア様、私を探していただき、ありがとうござます。それと、申し訳ありませんでした」
「お礼なんていりませんわ。アリシア様が無事でよかったです。ですが、そうですわね……。ならば、今度またお茶会をしましょう」
「はい!」
もう一人、今日一番迷惑をかけた人物……
「リリア様、申し訳ありませんでした」
「いえ、そんなっ……私の方こそ、アリシア様のお気持ちを考えるべきでした。申し訳ありません」
「謝らないでください。そもそも、あの手紙の意味を邪推した私が悪いのですから」
「いえ、わかっていないアリシア様に対して、少し意地悪をする様に黙っていたのは私です!」
「「……」」
「ふふっ、それではお互い様という事で」
「はい。それに、ようやく私とも笑ってもらいました」
「えっ? あっ……」
「これで、以前よりも仲良くなれましたね」
「そうですね。これからもよろしくお願いします」
「はい!」
そして、最後に……
「リオン様」
「ん?」
私はリオン様にそっと近づいて、
「私も大好きです」
耳元で今まで言えなかった気持ちを囁いた。
「それでは、また」
お辞儀をして、教室からすぐに出れるよう小走りをする。今の顔は誰にも見られたくなかったのですが――
「アリシア、顔真っ赤だよ? 何を言ってきたのかな~?」
ニヤニヤと揶揄って来るお姉様に、私は何も言えず、ただひたすらに、お姉様が飽きるのを待つしかありませんでした。
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