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母上の前で
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アイリスによって母上の前に連れてこられる。マリーから先触れされているはずなので、準備万端で待ち構えているかと思っていたがそうではなかった。
母上は椅子に座り、俺たちが来るのを待っていた。
「アイン、今回は少し重要な話しをします。アイリスちゃんもいいですね?」
「はい。もちろん構いません」
「……はい」
罰を免れると思い、勢いよく提案に飛びついた俺と、少し不満そうにしながらも返事をするアイリス。
「話しとはアインの婚約破棄の件についてです」
「!……はい、もちろんです!」
「いいですね、アイン?」
「……はい」
予想はできていたはずなのに、それを怠った俺が悪いのだろう。先程までの俺とアイリスの感情はひっくり返る事になった。
「じゃあ話してもらえるかしら? あなたがどうして婚約破棄をしようと考えたかについて、ね?」
母上の有無を言わさぬ圧力を感じる。だが、それ以上に――
「アイン様は、私にはあのような何もできない、傲慢な殿方がお似合いだと、そう言いたいのですね……グスン」
明らかに嘘泣きをしているアイリス。ルーカスの評価が酷いのもあるが、あのまま俺の計画が成功していれば、結果としてそうなっていたと思うと心が痛む。
「王妃様、殿下は直前まで泣くほど考えていたんです。あまり殿下を虐めないであげてください」
「そうなんですか!?」
おい、マリー。そう言う事は言わなくていい。アイリス、さっきまでの嘘泣きはどうした。そんな笑顔で早く早くと無言でせがまないでくれ。はぁ……
「お…………私はアイシスに幸せになって欲しかった」
危ない。そこっ! 悔しそうな顔をするな! なんで母上もアイリスもちょっと残念そうな顔をしているんだ!?
ああ、もういい。話しが進まない。
「私にアイリスを幸せにする自信がなかったというのもある。それでも、決め手になったのはアイリスの笑顔……だろうな」
決してアイリスのせいにしたいわけではない。そもそもら俺のコミュニケーション不足だ。それでもやはり、自分に向けられていないアイリスの笑顔は俺にとってかなりのショックだった。
「自分に向けらる事のなかった笑顔。これから先もあの笑顔が私に向けられないと思うと居ても立っても居られなかった。それに……」
「それに?」
「アイリスならこの国を任せられる。それだけ私はアイリスを信頼していた」
例えルーカスがアレであろうとも、アイリスならば……そう考えていたのは間違いない。
あの時の出来事を考えていると、アイリスが段々と不服そうな、それでいて少し悲しそうな顔になる。
「アイリス?」
「信頼と言うなら、もっと違う形で信頼して欲しかったです」
「そうだな。結局、私はアイリスの表面しか見ていなかった」
なにが、『賢い彼女はそれを理解しているからこそ、これから先も言い出す事はないだろう』だ。婚約者という言葉に囚われていたのは俺の方じゃないか。
「そもそも、アイリスは表情が豊かですよ。それを抑え込ませた貴方の落ち度です、アイン」
静かに話しを聞いていた母上が核心を突いてくる。確かにそうだ。そうなのだが……、一つ、気になる事がある。
「なぜアイリスは我慢する様になったんだ?」
母上の目が吊り上がる。だが、俺はアイリスに対して何か言った覚えはない。
「アイン様は覚えていないのですか?」
「……すまない、アイリスに何か直接言ったのか?」
「いえ、直接ではありません。あの時はまだアイン様と婚約者ではありませんでしたから……たまたま聞いてしまっただけです」
アイリスと婚約者になる前、そこで俺とアイリスが会うとすれば、俺が5歳になる誕生日パーティーの時だろうか。そこで何か発言をした……発言したか?
その出来事がきっかけで、アイリスは凛々しくなろうと努力した。凛々しく……まさか。
断片的な記憶の中、俺はある可能性を思い出した。
母上は椅子に座り、俺たちが来るのを待っていた。
「アイン、今回は少し重要な話しをします。アイリスちゃんもいいですね?」
「はい。もちろん構いません」
「……はい」
罰を免れると思い、勢いよく提案に飛びついた俺と、少し不満そうにしながらも返事をするアイリス。
「話しとはアインの婚約破棄の件についてです」
「!……はい、もちろんです!」
「いいですね、アイン?」
「……はい」
予想はできていたはずなのに、それを怠った俺が悪いのだろう。先程までの俺とアイリスの感情はひっくり返る事になった。
「じゃあ話してもらえるかしら? あなたがどうして婚約破棄をしようと考えたかについて、ね?」
母上の有無を言わさぬ圧力を感じる。だが、それ以上に――
「アイン様は、私にはあのような何もできない、傲慢な殿方がお似合いだと、そう言いたいのですね……グスン」
明らかに嘘泣きをしているアイリス。ルーカスの評価が酷いのもあるが、あのまま俺の計画が成功していれば、結果としてそうなっていたと思うと心が痛む。
「王妃様、殿下は直前まで泣くほど考えていたんです。あまり殿下を虐めないであげてください」
「そうなんですか!?」
おい、マリー。そう言う事は言わなくていい。アイリス、さっきまでの嘘泣きはどうした。そんな笑顔で早く早くと無言でせがまないでくれ。はぁ……
「お…………私はアイシスに幸せになって欲しかった」
危ない。そこっ! 悔しそうな顔をするな! なんで母上もアイリスもちょっと残念そうな顔をしているんだ!?
ああ、もういい。話しが進まない。
「私にアイリスを幸せにする自信がなかったというのもある。それでも、決め手になったのはアイリスの笑顔……だろうな」
決してアイリスのせいにしたいわけではない。そもそもら俺のコミュニケーション不足だ。それでもやはり、自分に向けられていないアイリスの笑顔は俺にとってかなりのショックだった。
「自分に向けらる事のなかった笑顔。これから先もあの笑顔が私に向けられないと思うと居ても立っても居られなかった。それに……」
「それに?」
「アイリスならこの国を任せられる。それだけ私はアイリスを信頼していた」
例えルーカスがアレであろうとも、アイリスならば……そう考えていたのは間違いない。
あの時の出来事を考えていると、アイリスが段々と不服そうな、それでいて少し悲しそうな顔になる。
「アイリス?」
「信頼と言うなら、もっと違う形で信頼して欲しかったです」
「そうだな。結局、私はアイリスの表面しか見ていなかった」
なにが、『賢い彼女はそれを理解しているからこそ、これから先も言い出す事はないだろう』だ。婚約者という言葉に囚われていたのは俺の方じゃないか。
「そもそも、アイリスは表情が豊かですよ。それを抑え込ませた貴方の落ち度です、アイン」
静かに話しを聞いていた母上が核心を突いてくる。確かにそうだ。そうなのだが……、一つ、気になる事がある。
「なぜアイリスは我慢する様になったんだ?」
母上の目が吊り上がる。だが、俺はアイリスに対して何か言った覚えはない。
「アイン様は覚えていないのですか?」
「……すまない、アイリスに何か直接言ったのか?」
「いえ、直接ではありません。あの時はまだアイン様と婚約者ではありませんでしたから……たまたま聞いてしまっただけです」
アイリスと婚約者になる前、そこで俺とアイリスが会うとすれば、俺が5歳になる誕生日パーティーの時だろうか。そこで何か発言をした……発言したか?
その出来事がきっかけで、アイリスは凛々しくなろうと努力した。凛々しく……まさか。
断片的な記憶の中、俺はある可能性を思い出した。
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