【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!

白キツネ

文字の大きさ
25 / 25

最終話

しおりを挟む
 卒業パーティーが終わってから、月日が過ぎました。私はジーク様と無事結婚し、今は8歳の息子と5歳の娘に囲まれて過ごしています。
 二人にジーク様との出会いを聞かれたので、話していたのですが、唐突に質問タイムが始まってしまいました。

「お母様は一人が嫌だったのー?」
「ええ、そうですよ。一人は寂しく、悲しいものですから」
「そっかー。じゃあ、お母様は今は寂しくない?」
「ええ、私にはお父様がいて、あなた達がいますから、寂しくありませんよ」
「ふふっ、そっかー」
「母上、その後の王家はどうなったのですか?」

 あの卒業パーティーの後、第一王子と陛下、それと……愛人さん。ダメです。愛人さんの名前が思い出せません。元男爵令嬢だったということは覚えているのですが、まあ、良いでしょう。必要ありませんしね。

 嘘か本当か、その三人は国を私物化しようとした罪で幽閉されました。その後のことは詳しくは発表されることはありませんでしたが、恐らくは…これ以上はいけませんね。

 それにしても我が息子ながら、そのことを聞いてきますか。正直私も詳しくはわかっていないのですよね。ジーク様に聞いても何も答えてくれませんし、第一王子の話をしようものなら、口を物理的に塞がれてしまうのです。私はずっとジーク様のことを思っているというのに、ジーク様はいつまで嫉妬してくれるのでしょうか。まあ、普段見ることができないジーク様のかわいい姿が見れて私も嬉しいのですが…
 はっ、いけません。今は8歳だというのに、ジーク様ににて利発的な息子の質問に答えないといけませんね。さて、どう答えましょうか…、そうですね、話を少し切り替えてしまいましょう!

「…ルークは今の王様はいやですか?」
「いいえ、今のこの国はとても良いところだと思います」
「ええ、セシル殿下が陛下になってからは、この国はスラムも減り、無駄な出費もなくなったことから豊かになっていきました。なので、過去を見ずに今を見ましょう。確かに過去も大事です。けれど今を見るのはもっと大事ですから」
「…母上、何か誤魔化していませんか?」
「そ、そそ、そんなことはありませんよ」

 ジーク様とそっくりなジト目で私を見つめてきます。うう、その目には私、弱いのです。

「もう!お兄様のお話は難しくて嫌い!もう良いです!私もお母様がお父様と出会ったように王子様を見つけに行きます!」
「どこに行くのシェリー?」
「もちろん、スラムにです!」

 その答えに驚いている間に、シェリーが走っていってしまいます。いけない、追いかけないと!そう思い、椅子から立ち上がったところで、ジーク様が声をかけてくれます。

「スラムと聞こえたが、一体どんなことを話していたんだ?」

 ジーク様がシェリーを捕まえてきてくれたので、私は安心して、上げていた腰を下ろします。怖かったー。ジーク様がいなかったら、どうなっていたものか。もしかしたらもう帰って来なかったかもしれません。そう考えただけで涙が出てきそうになり、顔を手で覆います。

「何があったかはわからないが、シェリー、ちゃんとアリシアに謝りなさい」
「お、お母様、ごめんなさい」
「良いのですよ。でも、今回のように勝手に家を出ようとはしないでね」
「はい」

 しょんぼりしている娘を抱きしめます。今回のことは私の話し方が悪かったですね。思わず、ジーク様との出会いを年甲斐もなくはしゃいで話してしまったのが悪かったです。反省しませんと。

「シェリー、ちゃんと聞いてね。さっきの話で、お父様に私がスラムで見つけてもらった。そう話しましたね」
「…うん」
「実はね。その時に初めてお父様とあったのではないの。本当はずっと前に会っていたの」
「そうなの?」
「ええ、だから、出会いは場所じゃないの。危険なことはしなくていいの。平穏に暮らしているだけで良い出会いはやってくるわ」
「お母様のように?」
「ええ、もちろん。だって、あなたたちは私とお父様の最愛の子供達なのだから」
「わかった!」

 伯父や第一王子に巻き込まれた時には悲しいことや、理不尽なこと、嫌なことがたくさんありました。けれども、そんな時にはジーク様やシシリー様を初め、お義父様やお義母様が助けてくれました。愛してくれました。この恩は私が一生かけても返せるものではないでしょう。だけど、笑って私を受け入れてくれました。

 お父様、お母様、私はもう一人ではありません。大切な人ができて、家族ができました。お母様が私を愛してくれたように、お父様が私を守ってくれたように、私はジーク様とともにこの子達を愛し、守っていこうと思います。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

てらむ
2022.05.03 てらむ

久しぶりに読み返し、一気に読んでしまいました。
やっぱり面白かったです!

気になるのが、従姉妹の姉という表記と、従姉とアリシアの母の名前が同じアイリスだったことです。
伯父側の従姉妹が一人であれば、従姉妹だけもしくはアリシアより年上としたいなら従姉でいいと思います。従姉妹が二人いるのかと思ったので。
名前も、伯父夫婦なら娘に憎き弟嫁と同じ名前はつけないでしょう。

2022.05.05 白キツネ

読んでいただきありがとうございます!

なるほど…それは私の勉強不足でした。ややこしくしてしまい申し訳ありません。確かにてらむ様の言う通りですね。

これからの糧にさせていただきたいと思います!

指摘、ありがとうございました!

解除
きこ
2021.10.07 きこ

最後までいっきに読ませていただきました!
面白かったです♪

2021.10.08 白キツネ

読んでいただきありがとうございます!

面白いと言っていただけて、とても嬉しいです!

解除
クリ
2021.09.07 クリ

初めまして。最後まで一気に読ませて頂きました。
主人公が幸せになって良かったです。

所々誤字があったのですが、「おじ」の表記がとても気になりました。
親の上の兄弟は伯父伯母、下の兄弟は叔父叔母なので、父親の兄である長男は伯父になると思います。

2021.09.08 白キツネ

読んでいただきありがとうございます。
また、誤字の報告もありがとうございます。
自分でも読み返しているのですけどね…
報告していただけてとても嬉しいです。ありがとうございます!

解除

あなたにおすすめの小説

知らない男に婚約破棄を言い渡された私~マジで誰だよ!?~

京月
恋愛
 それは突然だった。ルーゼス学園の卒業式でいきなり目の前に現れた一人の学生。隣には派手な格好をした女性を侍らしている。「マリー・アーカルテ、君とは婚約破棄だ」→「マジで誰!?」

捨てられた騎士団長と相思相愛です

京月
恋愛
3年前、当時帝国騎士団で最強の呼び声が上がっていた「帝国の美剣」ことマクトリーラ伯爵家令息サラド・マクトリーラ様に私ルルロ侯爵令嬢ミルネ・ルルロは恋をした。しかし、サラド様には婚約者がおり、私の恋は叶うことは無いと知る。ある日、とある戦場でサラド様は全身を火傷する大怪我を負ってしまった。命に別状はないもののその火傷が残る顔を見て誰もが彼を割け、婚約者は彼を化け物と呼んで人里離れた山で療養と言う名の隔離、そのまま婚約を破棄した。そのチャンスを私は逃さなかった。「サラド様!私と婚約しましょう!!火傷?心配いりません!私回復魔法の博士号を取得してますから!!」

神託を聞けた姉が聖女に選ばれました。私、女神様自体を見ることが出来るんですけど… (21話完結 作成済み)

京月
恋愛
両親がいない私達姉妹。 生きていくために身を粉にして働く妹マリン。 家事を全て妹の私に押し付けて、村の男の子たちと遊ぶ姉シーナ。 ある日、ゼラス教の大司祭様が我が家を訪ねてきて神託が聞けるかと質問してきた。 姉「あ、私聞けた!これから雨が降るって!!」  司祭「雨が降ってきた……!間違いない!彼女こそが聖女だ!!」 妹「…(このふわふわ浮いている女性誰だろう?)」 ※本日を持ちまして完結とさせていただきます。  更新が出来ない日があったり、時間が不定期など様々なご迷惑をおかけいたしましたが、この作品を読んでくださった皆様には感謝しかございません。  ありがとうございました。

婚約を破棄して妹と結婚?実は私もう結婚してるんです。

京月
恋愛
グレーテルは平凡だ。しかし妹は本当に同じ血が流れているのかと疑いが出るほど美人で有名だった。ある日婚約者から一言「俺はお前との婚約を破棄してお前の妹と結婚する」→「ごめんなさい、実は私もう結婚しているんです」

知りませんでした?私再婚して公爵夫人になりました。

京月
恋愛
学生時代、家の事情で士爵に嫁がされたコリン。 他国への訪問で伯爵を射止めた幼馴染のミーザが帰ってきた。 「コリン、士爵も大変よね。領地なんてもらえないし、貴族も名前だけ」 「あらミーザ、知りませんでした?私再婚して公爵夫人になったのよ」 「え?」

王子に買われた妹と隣国に売られた私

京月
恋愛
スペード王国の公爵家の娘であるリリア・ジョーカーは三歳下の妹ユリ・ジョーカーと私の婚約者であり幼馴染でもあるサリウス・スペードといつも一緒に遊んでいた。 サリウスはリリアに好意があり大きくなったらリリアと結婚すると言っており、ユリもいつも姉さま大好きとリリアを慕っていた。 リリアが十八歳になったある日スペード王国で反乱がおきその首謀者として父と母が処刑されてしまう。姉妹は王様のいる玉座の間で手を後ろに縛られたまま床に頭をつけ王様からそして処刑を言い渡された。 それに異議を唱えながら玉座の間に入って来たのはサリウスだった。 サリウスは王様に向かい上奏する。 「父上、どうか"ユリ・ジョーカー"の処刑を取りやめにし俺に身柄をくださいませんか」 リリアはユリが不敵に笑っているのが見えた。

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

裏切られ追放されたけど…精霊様がついてきました。

京月
恋愛
 精霊の力を宿したペンダント。  アンネは婚約者のジーク、商人のカマダル、友人のパナに裏切られ、ペンダントを奪われ、追放されてしまった。  1人で泣いているアンネ。 「どうして泣いているの?」  あれ?何でここに精霊様がいるの? ※5話完結です。(もう書き終わってます)    

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。