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106:死刑宣告
自分自身にショックを受けながらも、ソフィアは落ち込んでばかりはいられなかった。
今回を逃せば、次はいつ話を聞いて貰えるかわからない。
それどころか、そのチャンスは二度と訪れないかもしれないのだ。
「……嵌められました。国王陛下からではなく、王妃殿下に先にグラスを渡したのが何故か、疑問に思っていたのです。きっと私や王妃殿下に皆の意識が集中している間に、国王陛下のグラスへ何か入れたのだと思います。……第二王子夫人が……」
ソフィアはもう、王妃の心情に訴えるしかなかった。
証拠なんて勿論ないし、自分の無実を証明する術もない。
ソフィアは顔面蒼白のまま、唇を”ギュッ”と結び、涙を堪えて王妃を見る。
しかし、王妃は顔色一つ変えることはない。
「残念ながら、あなたはとても不利な状況よ」
ソフィアは奥歯を噛み締める。
(そうでしょうね……)
「……もし私が罪に問われた場合、ジャッカーソン殿下とブライトはどうなりますか?」
「ジャッカーソン殿下は、侍女のことについて虚偽の発言をしているし、あなたの味方とみなされるわね。ブライトのことも、どうなるかはわからないわ」
真顔で言う王妃に、ソフィアはどんどん絶望が広がっていく。
(私が最後に、ジャック様に余計なことを言わなければ……)
ソフィアは、次から次へと後悔ばかりが押し寄せて来る。
(私の浅はかな思考と行動が、大切なジャック様とブライトを傷つけてしまう……。ジャック様とブライトのために、私はこの身を捧げると誓ったのに……)
ソフィアは、必死に涙を零すまいと目を見開く。
それでも零れそうになり、そこで初めて王妃から目を逸らして上を見た。
(今日の空は何色かしら? ジャック様の好きな、青い空だと良いわね……)
灰色のコンクリートの天井を見ながら、ソフィアはふとそんなことを思った。
「王妃殿下」
ソフィアよりも少し背の高い王妃を、再び真正面から少し見上げた。
そして、”ジッ”と目を見て言う。
「私はやっていません。しかし、否認を続けることでジャッカーソン殿下やブライトの立場が悪くなることを望みません。私が全ての罪を請け負います。なので、王妃殿下のお力でジャッカーソン殿下とブライトにはどうか、幸せに暮らすことが出来る道をお示しいただけないでしょうか?」
言い終えた時、ソフィアの頬に一筋の涙が伝った……
ソフィアは、本当は無実を証明することが一番良いことなのは、勿論分かっている。
しかし投獄されている今、成す術はなかった。
それどころか、相手の方が何枚も上手だ。
どう考えても、現状でソフィアは自分の無実を証明出来るとは思わなかった。
(王妃殿下にもよく思われていないしね……)
それも、ソフィアにこのような発言をさせた要因の一つだ。
「……罪を認めると言うの?」
「今はまだ認めておりません。しかし、ジャッカーソン殿下とブライトのことを約束して下さるのであれば、認めます。誰かを処分でもしないと、ことが落ち着かないでしょうから。その役を、わたしが甘んじて受け入れます。その後で、追加で調べるのか終わらせるのかは、お任せいたします」
「……」
「もし、ジャッカーソン殿下とブライトのことを約束して下さるのであれば、私はこう証言いまします。『始めから国王暗殺をもくろんで城入りした。ジャッカーソン殿下も息子も、その道具にすぎない』と」
「反逆者を名乗ると?」
「はい」
「……死んでも良いと?」
「はい。王太子殿下の体調不良が続き、気を病まれている王妃殿下になら、わかっていただけるのではないでしょうか? ”息子のためになら喜んで自分が犠牲になる”という、母親の気持ちが。 ……なので、どうかお願いいたします」
そこで初めて王妃はソフィアから目を逸らし、考え込んだ。
数分後、王妃は一言だけ口にしてから、立ち去る。
「では、希望通り処刑しましょう。……そうね、一週間後に」
今回を逃せば、次はいつ話を聞いて貰えるかわからない。
それどころか、そのチャンスは二度と訪れないかもしれないのだ。
「……嵌められました。国王陛下からではなく、王妃殿下に先にグラスを渡したのが何故か、疑問に思っていたのです。きっと私や王妃殿下に皆の意識が集中している間に、国王陛下のグラスへ何か入れたのだと思います。……第二王子夫人が……」
ソフィアはもう、王妃の心情に訴えるしかなかった。
証拠なんて勿論ないし、自分の無実を証明する術もない。
ソフィアは顔面蒼白のまま、唇を”ギュッ”と結び、涙を堪えて王妃を見る。
しかし、王妃は顔色一つ変えることはない。
「残念ながら、あなたはとても不利な状況よ」
ソフィアは奥歯を噛み締める。
(そうでしょうね……)
「……もし私が罪に問われた場合、ジャッカーソン殿下とブライトはどうなりますか?」
「ジャッカーソン殿下は、侍女のことについて虚偽の発言をしているし、あなたの味方とみなされるわね。ブライトのことも、どうなるかはわからないわ」
真顔で言う王妃に、ソフィアはどんどん絶望が広がっていく。
(私が最後に、ジャック様に余計なことを言わなければ……)
ソフィアは、次から次へと後悔ばかりが押し寄せて来る。
(私の浅はかな思考と行動が、大切なジャック様とブライトを傷つけてしまう……。ジャック様とブライトのために、私はこの身を捧げると誓ったのに……)
ソフィアは、必死に涙を零すまいと目を見開く。
それでも零れそうになり、そこで初めて王妃から目を逸らして上を見た。
(今日の空は何色かしら? ジャック様の好きな、青い空だと良いわね……)
灰色のコンクリートの天井を見ながら、ソフィアはふとそんなことを思った。
「王妃殿下」
ソフィアよりも少し背の高い王妃を、再び真正面から少し見上げた。
そして、”ジッ”と目を見て言う。
「私はやっていません。しかし、否認を続けることでジャッカーソン殿下やブライトの立場が悪くなることを望みません。私が全ての罪を請け負います。なので、王妃殿下のお力でジャッカーソン殿下とブライトにはどうか、幸せに暮らすことが出来る道をお示しいただけないでしょうか?」
言い終えた時、ソフィアの頬に一筋の涙が伝った……
ソフィアは、本当は無実を証明することが一番良いことなのは、勿論分かっている。
しかし投獄されている今、成す術はなかった。
それどころか、相手の方が何枚も上手だ。
どう考えても、現状でソフィアは自分の無実を証明出来るとは思わなかった。
(王妃殿下にもよく思われていないしね……)
それも、ソフィアにこのような発言をさせた要因の一つだ。
「……罪を認めると言うの?」
「今はまだ認めておりません。しかし、ジャッカーソン殿下とブライトのことを約束して下さるのであれば、認めます。誰かを処分でもしないと、ことが落ち着かないでしょうから。その役を、わたしが甘んじて受け入れます。その後で、追加で調べるのか終わらせるのかは、お任せいたします」
「……」
「もし、ジャッカーソン殿下とブライトのことを約束して下さるのであれば、私はこう証言いまします。『始めから国王暗殺をもくろんで城入りした。ジャッカーソン殿下も息子も、その道具にすぎない』と」
「反逆者を名乗ると?」
「はい」
「……死んでも良いと?」
「はい。王太子殿下の体調不良が続き、気を病まれている王妃殿下になら、わかっていただけるのではないでしょうか? ”息子のためになら喜んで自分が犠牲になる”という、母親の気持ちが。 ……なので、どうかお願いいたします」
そこで初めて王妃はソフィアから目を逸らし、考え込んだ。
数分後、王妃は一言だけ口にしてから、立ち去る。
「では、希望通り処刑しましょう。……そうね、一週間後に」
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