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105:取り調べと指輪
一日後。
取り調べと身体検査を受けたソフィアは、客間から牢屋へ移動させられた。
(何故、牢に移動を……?)
もちろん警備員に聞いても、誰も教えてはくれない。
しかし、状況が良くないことは明らかだった。
(国王陛下はご無事かしら……? 第二王子夫人はどうなったのかしら? 完全に嵌められたのだから、きっと上手く逃げているのでしょうね……。ジャック様やブライトは、普通に生活出来ていると良いのだけれど……)
昨晩ソフィアは、眠れぬ夜を過ごした。
考えることは"たられば"ばかりだ。
"第二王子夫人の言う通りに行動しなければ……"
"噂話のような、程度の低い嫌がらせをされるだけだろうと決めつけていなければ……"
"ジャックにきちんと話しておくことが出来ていたら……"
"もっと警戒していれば……"
(ジャック様と陛下は、王太子殿下の体調不良に第二王子夫妻が関わっていると疑っておられたわ。それだけ危険人物だということなのに……。何故私は……)
後悔ばかりが押し寄せて来る。
自分が情けなくて仕方がなかった。
しかしソフィアは、泣きたい気持ちをグッと堪える。
(まだ何の情報もないわ。情報が入るまで待つのよ)
泣くのは簡単だ。
(自分がしでかしてしまったことよ。どうにかしないと……)
ソフィアは、ジャックとブライトのことしか頭になかった。
自分が牢屋に入れられている現状や自分の未来より、二人の現状と未来にしか関心はない。
(私はどうなっても良いわ……。どうか2人にとって穏便に済ますことが出来ますように……)
その翌日。
ソフィアの元を訪ねて来たのは、王妃だった。
ソフィアはゴクッと唾をのみ、静かにその場に立ち上がる。
そして牢の向こうに立つ王妃を見つめながら、恐る恐る口を開けた。
「……国王陛下はご無事ですか?」
「……ええ」
心からホッとしているソフィアを見ながら、王妃はいつもの無表情で言う。
「ソフィア様……あなたが食事会の時につけていた指輪には、仕掛けが施されていたわ。宝石周辺が蓋になっていて、つけたままで簡単に蓋を開けることが出来るという」
「……仕掛け……?」
神妙な面持ちの王妃は、”ジッ”とソフィアを見たまま続ける。
「中には粉が入っていました」
それを聞いた瞬間、ソフィアは一気に絶望が全身を駆け巡った。
「中に少し残っていた粉については、現在調査中よ。……弁解はある?」
真っ青な顔のソフィアは、目の前の王妃を見る。
「……食事会の直前に、第二王子夫人に戴いた指輪です。必ずつけて来るようにと言われました」
「……」
王妃はソフィアから一瞬も目を離さない。
「私の侍女に聞いていただければ……」
「……ジャッカーソン殿下から聞き、侍女に確認しました。けれど、あなたの侍女は『何も知らないし誰も会いに来ていない』と言っているわ」
ソフィアは目を見開くと同時に、自分の浅はかさを痛感した。
(私はなんてミスを犯していたの! 私の侍女も、第二王子夫人に脅されていたに違いないのに! 3人の使用人がやめた時にあの子は城に残ったことを、何故疑問に思わなかったのよ! 何故、未だに第二王子夫人と繋がっていることを疑わなかったの……!?)
ソフィアは、お気楽だった過去の自分に絶望するしかない。
食事会の前にソフィアが指輪を見ようとした時や、ジャックに伝えようとした時に、やたらと侍女に邪魔をされたことを思い出していた。
(ああ、私は何て馬鹿なの……!)
取り調べと身体検査を受けたソフィアは、客間から牢屋へ移動させられた。
(何故、牢に移動を……?)
もちろん警備員に聞いても、誰も教えてはくれない。
しかし、状況が良くないことは明らかだった。
(国王陛下はご無事かしら……? 第二王子夫人はどうなったのかしら? 完全に嵌められたのだから、きっと上手く逃げているのでしょうね……。ジャック様やブライトは、普通に生活出来ていると良いのだけれど……)
昨晩ソフィアは、眠れぬ夜を過ごした。
考えることは"たられば"ばかりだ。
"第二王子夫人の言う通りに行動しなければ……"
"噂話のような、程度の低い嫌がらせをされるだけだろうと決めつけていなければ……"
"ジャックにきちんと話しておくことが出来ていたら……"
"もっと警戒していれば……"
(ジャック様と陛下は、王太子殿下の体調不良に第二王子夫妻が関わっていると疑っておられたわ。それだけ危険人物だということなのに……。何故私は……)
後悔ばかりが押し寄せて来る。
自分が情けなくて仕方がなかった。
しかしソフィアは、泣きたい気持ちをグッと堪える。
(まだ何の情報もないわ。情報が入るまで待つのよ)
泣くのは簡単だ。
(自分がしでかしてしまったことよ。どうにかしないと……)
ソフィアは、ジャックとブライトのことしか頭になかった。
自分が牢屋に入れられている現状や自分の未来より、二人の現状と未来にしか関心はない。
(私はどうなっても良いわ……。どうか2人にとって穏便に済ますことが出来ますように……)
その翌日。
ソフィアの元を訪ねて来たのは、王妃だった。
ソフィアはゴクッと唾をのみ、静かにその場に立ち上がる。
そして牢の向こうに立つ王妃を見つめながら、恐る恐る口を開けた。
「……国王陛下はご無事ですか?」
「……ええ」
心からホッとしているソフィアを見ながら、王妃はいつもの無表情で言う。
「ソフィア様……あなたが食事会の時につけていた指輪には、仕掛けが施されていたわ。宝石周辺が蓋になっていて、つけたままで簡単に蓋を開けることが出来るという」
「……仕掛け……?」
神妙な面持ちの王妃は、”ジッ”とソフィアを見たまま続ける。
「中には粉が入っていました」
それを聞いた瞬間、ソフィアは一気に絶望が全身を駆け巡った。
「中に少し残っていた粉については、現在調査中よ。……弁解はある?」
真っ青な顔のソフィアは、目の前の王妃を見る。
「……食事会の直前に、第二王子夫人に戴いた指輪です。必ずつけて来るようにと言われました」
「……」
王妃はソフィアから一瞬も目を離さない。
「私の侍女に聞いていただければ……」
「……ジャッカーソン殿下から聞き、侍女に確認しました。けれど、あなたの侍女は『何も知らないし誰も会いに来ていない』と言っているわ」
ソフィアは目を見開くと同時に、自分の浅はかさを痛感した。
(私はなんてミスを犯していたの! 私の侍女も、第二王子夫人に脅されていたに違いないのに! 3人の使用人がやめた時にあの子は城に残ったことを、何故疑問に思わなかったのよ! 何故、未だに第二王子夫人と繋がっていることを疑わなかったの……!?)
ソフィアは、お気楽だった過去の自分に絶望するしかない。
食事会の前にソフィアが指輪を見ようとした時や、ジャックに伝えようとした時に、やたらと侍女に邪魔をされたことを思い出していた。
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