エルと銀之助

エル

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8話

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「よし銀ちゃん。もう風呂入って寝よう。
 私も出社だし、銀ちゃんも明日も出社でしょ」


もう9時じゃん、とふと時計をみてエルが言った。


「・・・」


「・・・あーあ。今日が金曜日だったら、ロードショーが今からやる至福の時間なのになー。ね、銀ちゃん。

 だけどしゃあない、早く、風呂入ってきて!

で、今銀ちゃんが着てる服、その間に洗濯機回すから、早く脱いでこっちに寄こしな!」


「・・・うん」


なんかとっても変な急かされ方をされてるが、もう彼にとってはいつものことなので、
銀之助はいつもどおり普通に頷くと、速やかに脱衣所に行って普通にそれらを脱ぎ、代わりに腰にタオルを巻いた。

そしてなぜか脱いだ服を律儀に畳んで、いつもの籠に入れると、それをそっと彼女の方に押し出した。


以前、『くつ下、何で脱いだら丸まったままなの?この間も言ったよね』と彼女に何度かしつこく言われまくったことがあるので、くつ下は特に注意して、まっすぐにして丁寧に畳んでおいた。






「・・・」

湯船につかりながら、彼は思った。


いつもは帰ってきたらすぐご飯の前に風呂に入らされて、バタバタだったけど、今日は違った。


たまに、そういうことがあるけど、敢えて追求しない方がいい。



共働きなのに、家事も黙って、自分より比較的多くやってくれているのは知っている。




そして、『まだ、子供はいらない。まだまだ働きたいから』と言うのも、この前彼女から聞いた。

・・・自分は正直その逆だったから、つい追及してしまったら、喧嘩になってしまったけど。




色んな意味で、『正反対』な自分と向き合ってくれている彼女が、可愛い。と、そっと彼は思った。




続く


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