標識上のユートピア

さとう

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二章

四十二話

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 長い現実逃避の旅から帰って来た俺は、布団を被ったまま岸本に電話をかけた。彼はすぐに出た。
『身どもなのだ』 
「こんなことは言いたくないが、お前の友達ちょっと異常だぞ」
 岸本の珍妙な挨拶を無視し、俺は早口で囁いた。
『い、異常? 佐久間がか?』 
 岸本がかわいそうなくらいに動揺しているのが、受話器越しに伝わってくる。唐突すぎたかもしれない。今更になって申し訳なくなってきたが、通話を切るわけにもいかない。俺は岸本に何が起きたのかを話すことにした。
最初のメールから、今の十二件まで。
『うむ、それはよくないのう。会ったこともない人様を"お前"などと呼ぶのは失礼なのだ。しかも挨拶もなしに人様の父親について尋ねるなんて無礼なのだ』 
 岸本の言葉で、どっと肩の力が抜けた。言いたいのはそういうことではない。だが、幾分か落ち着くことができた。 
「それもそうなんだが、あながち間違ってないから困る。実際、俺の父親の様子は最近おかしい」
 極力声を潜める。
受話器の向こうにいる岸本は、しばらく黙っていた。どう返事をしたらよいのか分からないのだろう。しばらくして、彼は珍しく大人しい声色でこう言った。
『佐久間も普段は律儀でいいヤツなのだが。あやつの目的ばかりは身どもも分からんな。何があったのか聞いておこう』
「頼めるか? ありがとう」
 電話を切り、俺は板垣のメールを読むことにした。
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