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第4章 交わりざるモノとの刻《とき》
第4話
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ちょっとした台風並の雨と風が襲って来たが、やっと雨も風も止み少し落ち着いてきた空。一日半の出来事だったが、落ち着かない時間だった。
しかしまだ天候も完全に回復した訳では無く、曇り空と時折霧雨が降る空模様であった。
そんな中ではあったが、家に居る事が我慢出来ず思わず外に出る。
辺りを見ると雨が降ったが、雨の被害より風による被害が目についた。
色んな物が道路脇に散乱していたり結構立看板が倒れかかっていたりと。
ただ自分が気になっていたのは…… 川の様子。
どの位増水しているのだろうか。
そしてヨシばあが何気無く言った
「 色んな物が流れてくるかもよ 」
その言葉にも興味があった。
『 瑠璃黒曜流れて来ないかな~~ 』
ただ川に近づくことは、ヨシばあにもナカさんにもやめておいた方がいいと言われていたので……
「 うーー、でも行きたい 」
霧雨降る中、一人地団駄を踏んでいた。
集落にある唯一の商店に何気なく入った。最近は、パンを買いに通い詰めた店だけに店主ともすっかり顔馴染みに。
「 いや~~ 結構降ったねーー、雨 」
「 そうですね、風も強かったですし 」
そんな会話を交わして、ふといつもパンが並べられている棚を見ると……
『 んっ! パンが並んでる。おまけにメロンパンまで! 』
まさか大雨のすぐ後にパンがあるなんてと思い驚いた。
「 パン入ったんですか? この天候なのに 」
店主に訊いてみた。
「 そうなんだよ。朝に持って来てくれてねーー 。雨風が酷かったから心配して、わざわざこの天候の中来てくれたんだよ。有難いよね 」
この商店にパンを置いてくれているパン屋さんは、元々この集落の出身という事を以前に聞いていたのでパン屋さんも心配してくれたみたいだ。
珍しく沢山のパンが並べられている光景を目にし、外の天候とは逆に晴々とした気持ちになった。
『 あーー メロンパンもある。ポーに持って行ってあげたいなぁ 』
そんな気持ちで大きなメロンパンを見つめていた。
商店を後にした頃、霧雨も止み曇り空ではあったが少しだけ明るく感じた。
集落の近くにある赤い橋へ。
この赤い橋は、集落の近くにある為しっかりとした橋。多少の川の増水では大丈夫の様だったので赤い橋から川の様子を見る事に。
近くに行くだけで明らかに川が増水している音が聞こえた。
橋から見ると濁った川が両岸一杯に流れていた。この辺りは岸辺が有り石がゴロゴロとしていて、初めの頃はそこで『瑠璃黒曜』を探していた所。石探しをしていた岸辺は、見事に増水した川に変わっていた。
「 んーー、凄い量になってるな。この場所で、こんなになっているのだから下流の白い橋の方はもっと凄い事になっているだろうなぁ 」
水の量に圧倒されながら思わずそう声が出た。
下流側の白い橋からは岸辺が無い渓谷。他の川も合流し、普通の時でもこの場所とは違う川の雰囲気。なのに…増水した今は、一体どうなっているのだろう。
自分の中で、少しの興味とポーやゴーの心配が消えなかった。
夕方前。
少しだけ日差しが出て天候が回復しそうな感じになった。その僅かな日差しを見て……再び商店に足を運び、迷わずメロンパンを買い下流の方へ向かった。
僅かな日差しを見ただけで、何も考えず躊躇う事も無く体が動いていた。
下流のいつもの白い橋。
当然、その橋に辿り着くには大変で雨に濡らされた木々に冷たい洗礼を受け、ぬかるんだ地面に苦労しながら白い橋に着いた。
雨は上がっているのにずぶ濡れで足元は泥だらけの自分が橋の袂に。
橋は……
白い橋は大丈夫だった。
元々古く使われていない橋なので心配だったが、いつもの様にひっそりと。
ただ耳に入る音は普段と違う轟音の様な感じ。川の水量が普段とは、まるで違う事が音を聞いただけで感じた。
上流の赤い橋から見た川の様子と同じ茶色く濁った川。それ以上に驚いたのは川の水量。怖さを感じる程。
この白い古い橋が残っているのが不思議なくらい川が増水していた。
恐る恐る橋を渡る。
橋の真ん中から下流側を見てみる。
水の量、川の色、流れ行く音、全てが初めて見る光景。
毎日の様に通い、慣れしんだ筈の川なのにまるで別物。
無論、怖さがある為 橋の欄干には近づけない。近づけないどころか、より怖さを感じ一歩足りとも身動きがとれなかった。
つい、いつもの様に橋に来てしまったけれど……
やはり危険としか言えない状況だった。
橋の真ん中にいると濁流の真ん中に取り残されている、そんな感覚に陥った。
使われていない古い橋ゆえ、何時壊れても何時流されてもおかしくない。周知の事ではあったが改めて怖くなった。
慎重に足を動かし腰も引けた情けない格好で橋から戻る事にした。
川すら見ず、ポーやゴーが出て来る森の方すら見る事無く、ただ古びた濡れたコンクリートの床版だけを見つめながら。
橋を渡り終わる寸前に来た時、少しだけホッとしたので川と森をチラッと見返した。そして怖さしか感じなかった川を後にしようとした時……
……
何かが聞こえた気がした。
川の轟音だけしか聞こえて来ないのに……何か別の音が微かに耳に入った感じがした。
振り返り……じっと……
……「ぽー」
⁈
……「ぽー」
……「ぽーーっ!!」
『ポー⁈ ポーの声?』
川の音しか聞こえない状況なのに、ポーの声が……聞こえた気がした。
確信は無かったが、思わず……
「ポーーッ!!」
と、森の方に向かって叫んだ。
……
……
「……ぽーーっ! 」
近くでは無い所で、確かにポーの声がした。
轟音の中でも確かにポーの声がした。
第4話 終
しかしまだ天候も完全に回復した訳では無く、曇り空と時折霧雨が降る空模様であった。
そんな中ではあったが、家に居る事が我慢出来ず思わず外に出る。
辺りを見ると雨が降ったが、雨の被害より風による被害が目についた。
色んな物が道路脇に散乱していたり結構立看板が倒れかかっていたりと。
ただ自分が気になっていたのは…… 川の様子。
どの位増水しているのだろうか。
そしてヨシばあが何気無く言った
「 色んな物が流れてくるかもよ 」
その言葉にも興味があった。
『 瑠璃黒曜流れて来ないかな~~ 』
ただ川に近づくことは、ヨシばあにもナカさんにもやめておいた方がいいと言われていたので……
「 うーー、でも行きたい 」
霧雨降る中、一人地団駄を踏んでいた。
集落にある唯一の商店に何気なく入った。最近は、パンを買いに通い詰めた店だけに店主ともすっかり顔馴染みに。
「 いや~~ 結構降ったねーー、雨 」
「 そうですね、風も強かったですし 」
そんな会話を交わして、ふといつもパンが並べられている棚を見ると……
『 んっ! パンが並んでる。おまけにメロンパンまで! 』
まさか大雨のすぐ後にパンがあるなんてと思い驚いた。
「 パン入ったんですか? この天候なのに 」
店主に訊いてみた。
「 そうなんだよ。朝に持って来てくれてねーー 。雨風が酷かったから心配して、わざわざこの天候の中来てくれたんだよ。有難いよね 」
この商店にパンを置いてくれているパン屋さんは、元々この集落の出身という事を以前に聞いていたのでパン屋さんも心配してくれたみたいだ。
珍しく沢山のパンが並べられている光景を目にし、外の天候とは逆に晴々とした気持ちになった。
『 あーー メロンパンもある。ポーに持って行ってあげたいなぁ 』
そんな気持ちで大きなメロンパンを見つめていた。
商店を後にした頃、霧雨も止み曇り空ではあったが少しだけ明るく感じた。
集落の近くにある赤い橋へ。
この赤い橋は、集落の近くにある為しっかりとした橋。多少の川の増水では大丈夫の様だったので赤い橋から川の様子を見る事に。
近くに行くだけで明らかに川が増水している音が聞こえた。
橋から見ると濁った川が両岸一杯に流れていた。この辺りは岸辺が有り石がゴロゴロとしていて、初めの頃はそこで『瑠璃黒曜』を探していた所。石探しをしていた岸辺は、見事に増水した川に変わっていた。
「 んーー、凄い量になってるな。この場所で、こんなになっているのだから下流の白い橋の方はもっと凄い事になっているだろうなぁ 」
水の量に圧倒されながら思わずそう声が出た。
下流側の白い橋からは岸辺が無い渓谷。他の川も合流し、普通の時でもこの場所とは違う川の雰囲気。なのに…増水した今は、一体どうなっているのだろう。
自分の中で、少しの興味とポーやゴーの心配が消えなかった。
夕方前。
少しだけ日差しが出て天候が回復しそうな感じになった。その僅かな日差しを見て……再び商店に足を運び、迷わずメロンパンを買い下流の方へ向かった。
僅かな日差しを見ただけで、何も考えず躊躇う事も無く体が動いていた。
下流のいつもの白い橋。
当然、その橋に辿り着くには大変で雨に濡らされた木々に冷たい洗礼を受け、ぬかるんだ地面に苦労しながら白い橋に着いた。
雨は上がっているのにずぶ濡れで足元は泥だらけの自分が橋の袂に。
橋は……
白い橋は大丈夫だった。
元々古く使われていない橋なので心配だったが、いつもの様にひっそりと。
ただ耳に入る音は普段と違う轟音の様な感じ。川の水量が普段とは、まるで違う事が音を聞いただけで感じた。
上流の赤い橋から見た川の様子と同じ茶色く濁った川。それ以上に驚いたのは川の水量。怖さを感じる程。
この白い古い橋が残っているのが不思議なくらい川が増水していた。
恐る恐る橋を渡る。
橋の真ん中から下流側を見てみる。
水の量、川の色、流れ行く音、全てが初めて見る光景。
毎日の様に通い、慣れしんだ筈の川なのにまるで別物。
無論、怖さがある為 橋の欄干には近づけない。近づけないどころか、より怖さを感じ一歩足りとも身動きがとれなかった。
つい、いつもの様に橋に来てしまったけれど……
やはり危険としか言えない状況だった。
橋の真ん中にいると濁流の真ん中に取り残されている、そんな感覚に陥った。
使われていない古い橋ゆえ、何時壊れても何時流されてもおかしくない。周知の事ではあったが改めて怖くなった。
慎重に足を動かし腰も引けた情けない格好で橋から戻る事にした。
川すら見ず、ポーやゴーが出て来る森の方すら見る事無く、ただ古びた濡れたコンクリートの床版だけを見つめながら。
橋を渡り終わる寸前に来た時、少しだけホッとしたので川と森をチラッと見返した。そして怖さしか感じなかった川を後にしようとした時……
……
何かが聞こえた気がした。
川の轟音だけしか聞こえて来ないのに……何か別の音が微かに耳に入った感じがした。
振り返り……じっと……
……「ぽー」
⁈
……「ぽー」
……「ぽーーっ!!」
『ポー⁈ ポーの声?』
川の音しか聞こえない状況なのに、ポーの声が……聞こえた気がした。
確信は無かったが、思わず……
「ポーーッ!!」
と、森の方に向かって叫んだ。
……
……
「……ぽーーっ! 」
近くでは無い所で、確かにポーの声がした。
轟音の中でも確かにポーの声がした。
第4話 終
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