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第一幕
2つの世界・2編(金城暁大)
しおりを挟む「次に“魔兵器”だが、これは説明が難しいな。直接見た方が早いからな」
「それでも良いです。説明して下さい」
「うーん、そうだな。例えば、機械巨人なんかが有名だな。
機械巨人は、一見すると巨大な人型の機械だが、その動力源は魔素を注入した“魔鉱石”だ。あれだよ」
そう言ってトウラは、自分達の頭上を指差した。
そこには暖かい灯火の光るランプが天井の梁からぶら下がっていた。
「ランプ……ですか?」
「その中だよ」
シオンは立ち上がって、ランプの中を注視した。
よく見ると、ランプの中には小さな光る石が入っていた。
「石が入っていますね」
「それが魔鉱石だ。これは明光石という魔鉱石……といっても、捨てる予定のクズ鉱石に、魔素を注入しているだけだけどな。
ちなみに製品化されたもの――灯台や軍用、工事現場なんかで使われているのは、これの10倍は明るいんだ」
「へぇー、綺麗ですね」
「まぁな。だが、これが戦争に使われたりもするんだ。機械巨人なんかは、これを動力源にして動いている」
シオンは席を座り直した。よく見れば、同じ様なランプが店内にあちこちにある。きっとこれはそんなに珍しいものではないのだろう。
「続けるぞ。
次に、“亜人”だ。このヒューマニーにはシェロの様な人間とは異なる経過で生まれた亜人が存在する」
「さっき酒場で見たあの二人がそうだ」
シュートが言った。
シオンは先刻の酒場で見た、獣耳族の子供と蛮族の男を思い出した。
「あの女の子は見たところ、猫族の“獣耳族”だったな。猫族は大人しい性格だが、とても賢い。中にはその智力を買って、研究職や軍師なんかに採用する国もある」
「へぇ……」
「だが、とても温厚故に、ああして他の種族に虐げられるのもしばしばなんだ。……あの子、可哀想にな」
シュートは、やや遠い目をして、痛烈な表情を見せた。
「でも、中には戦うことに向いている猫族もいるのよ。猫族の仲間である豹族や獅子族、虎族なんかは、とても戦闘向きなの。あの子みたいに虐げられる事もあまり無いわ」
シェロの言葉に、シュートも頷いた。
「そして、あの猫族を虐めていたのが、“蛮族”だ。あの蛮族はさしずめ北の国の蛮族“ノルディア族”だろう。とても気性が激しく、素行が悪い事で知られているんだ」
「本当にシュートがいて良かったわ。あの蛮族のたちが悪いのは、気性が激しいだけじゃなくて、あの時の見た目通り強い事なのよ。
私達でも、勝てたかどうか分からなかったわ」
「フッ、あんな雑魚豚、容易いさ」
「雑魚豚……」
シオンはシュートのその言葉に、彼の気概の良さと心強さを感じた。
確かに言われてみれば、あの男は豚に似ていたかもしれない。
シオンは、同じ転生者として、シュートに尊敬の様な念を覚えたのだった。
「これが、この世界、“ヒューマニー”だ。だが、俺たちもまだこの世界については分からない事の方が多い」
「そうなんですか」
「だが、それ以上に分からない世界がある。それが、“メルフェール”だ」
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