ある日突然異世界へ(本編完結.番外編展開中)

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アルからのプレゼント

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夜少し遅めの時刻にドアがノックされる。
「ユーリ、起きてるかな?」
アルでした。
「はい!起きてますよ~」
急いでドアを開ける。
「おかえりなさい!今お帰りですか?」
「そうなんだ。待っててと言っておいてこんな時間で悪かった。」
アルが済まなそうに言う。
「全然大丈夫ですよ。私も先程まで作業していてやっと片付いたところです。お茶を出しますのでどうぞ。」
「あぁ。ありがとう。」
アルがソファーへ座ったところでお茶の支度をする。

「カモミールティーです。どうぞ。」
「いただくよ。」
そう言って一口飲む。
「ユーリ……明日の夕飯を晩餐会の練習も兼ねて食べに出掛けないか?」
随分ためてから要件を言うから何事かと思ったわ。
晩餐会の練習をさせてくれるのね。
「ありがとうございます!是非よろしくお願いします!ところでどこまで行くんですか?」
「それは明日のお楽しみだよ。お茶ご馳走様!」
そう言ってドアへ向かうアル。私も付いてお見送りをします。
くるりと振り返るアル。
「ユーリ、君がここに残る事を望んでくれて本当に良かったよ。ありがとう。」

「いえ、お礼を言わなければならないのは私の方です。居場所を与えてくれて本当にありがとうございます。そしてやりがいのある仕事をさせてくれて感謝しています。」
そう言うと、アルが一歩近付いてきて……しばらくの間抱きしめられる。
そして一言……
「おやすみ」
そう言うとさっと離れて部屋を出ていかれました。
出る時に見えたアルの耳は真っ赤でした。
そんな私もゆでダコですが…



ベッドに入りましたが眠れません。
何故でしょうか?
カモミールティーも飲んだのに…

アルとの出会いを思い出しました。
いきなりこの世界に来てしまい、心細い私に手を差し伸べてくれたのはアルでした。
はじめて会った時は王子様かと思いました。
家に行ったらいきなりフィアンセになっててびっくりしたっけ。あれからもう数ヶ月が過ぎて、あの頃はまさかこんな生活をおくる日が来るなんて思ってなかったな…
アルの笑顔を見るとホッとする……
取り留めもなく思考が散らかり出したところで私の意識は途切れた。





爽やかな風が部屋に中に入ってきたところで目が覚める。
窓のところにサリーが居るのが見えた。
「サリー、おはよう。いいお天気ね。」
「おはようございます。ユーリ様、本日はお出かけのお支度がありますので午後はお仕事をお休みして下さいね。」
にっこり笑って言う。
半日しか仕事が出来ないと言われ慌てて支度をする。
「そんなに出掛けるのに準備が必要なの?」
作業をしながら言うと…
「もちろんです!王宮の晩餐会の予行練習をするんですよね?」
と当たり前の様に言われる。
「そうです……」
抵抗出来ません(笑)

午前中ひたすら作業に没頭しました。
お昼は簡単にサンドイッチを食べてお支度です。
湯浴みをして、全身マッサージをしてもらい……お顔のマッサージも受けます。
幸せです。
そして髪の毛のパックまでしてもらいました。
こんなにしてもらって良いのかしら?
そして素敵なドレスをマリーが持ってきてくれます。
ベアトップのエメラルドグリーンのロングドレス!
ちょっとグラデーションになっていて、下の方に行くにしたがって白が混じっていく感じになっている。
ウエストのくびれの下あたりからは布が重ねてあってボリューム感あってとにかく可愛い!おまけにピンクの薔薇が1箇所飾ってあるのがまた素敵です!
思わずドレスに釘付けな私です。

「こんな素敵なドレスを私が着ていいのかしら?」
「アルフレッド様がお選びになったんですよ。」
マリーが教えてくれる。
「アルが?そっかアルが選んでくれたのね。」
ドレスを撫でながら呟く。
素敵なドレスがより一層愛しく思える。

「さぁ、ユーリ様!気合を入れてコルセットを締め上げますよ~!」
マリーの声掛けで我に返る。
私ったらひとりの世界に入ってたみたいです。
そしてその言葉通りにぎゅうぎゅうと締め上げられております。
「マリー!苦しいです。もういいんじゃないかしら?」
思わずサリーに助けを求めてしまいます。
「サリー、もういいわよね?」
「そうですね…そのくらいで大丈夫でしょう。きっと素敵なシルエットになりますよ。」
少しの間が気になりましたが、とりあえずオッケーが出て安心しました。
やっとドレスが着れます。
コルセットで締まっているお陰で確かに綺麗なシルエットになりました!

くるっとまわるとドレスが可憐に揺れます!
「ユーリ様、まだ髪の毛のセットがこれからです!」
遊んでる場合ではないようです。

サリーが器用に髪の毛を編んだり捩ったりしながらアップにしていきます。
そして最後にピンクのバラの飾りを着けてくれました。
そして次はマリーがお化粧をしてくれます。
いつもより2人とも気合い入ってませんか?
「ユーリ様、目を閉じてください。」
人にやってもらっているからと言ってボーッとはしてられません(笑)

「さぁユーリ様出来上がりましたよ!」
とうとう仕上がった様です!まずは鏡へと移動します。

鏡の中に映る私はいつもの私ではありませんでした!
「すごい!お姫様みたい……」
思わず呟くと
「私達の力作ですから!」
ってマリーが言うから思わず笑ってしまった。
「2人ともありがとう。こんなに素敵にしてくれてありがとう!」
「そろそろアルフレッド様がお迎えに来ますよ!」
サリーが言った直後に、ドアがノックされる。
ジャストタイミングです。

「ユーリ、支度は出来たかな?」
「はい!今行きます!」
そしてマリーがドアを開けてくれる。
「ユーリ……」
アルが会った瞬間固まってます。
私もしかして変?
「アル?」
固まってるアルに声を掛けてみます。
すると…
「ユーリ、予想以上に似合ってるよ!」
って言ってくれました。
「キュウ~ン」
後ろからハクが鳴く声がして振り返ります。
多分連れて行って欲しいんだよね?
「ハク、今日は留守番だ。いい子で待ってろよ。」
アルが言うと、
「キュウ」
とちょっと寂しげに鳴きました。
でもちゃんと理解をしたようです。
「ユーリ様、ハクは私たちが一緒にいますので大丈夫です!行ってらっしゃいませ!」

こうして2人と1匹に送り出されて私とアルは馬車で出掛けます。


「アル、あの…素敵なドレスをありがとうございます。アルが選んでくれたって聞きました。」
「このドレスを見た瞬間ユーリに合うと思ったんだよね。サイズはサリー達に協力してもらったおかげでぴったりで良かった!」
「そうだったのね!道理で細部までぴったりな訳だわ。」
どこも直すところが無くて驚いたわ!
「ところでアル、今は何処に向かっているの?いつもとは違う道よね?」
「そうだね。あの高台にある建物へ向かっているんだよ。」
アルが指す方を見ると高台に立派な建物がありました。

入り口に馬車を付けるとドアが開けらる。
「ようこそおいでくださいました。どうぞお入りください。」
ホテルのボーイさんのような人が案内してくれる。

アルが馬車から降りると私の手を取りエスコートしてくれる。
建物の中はとても綺麗でした。
目に付くところにお花が綺麗に飾ってあります。
「綺麗ね。」
アルに向けて言うとアルも微笑んでくれました。
そしてこれまた豪華なお部屋に案内されました!

大きな窓があります。
そこからは街や森が上から一望出来ました!

本当はすぐに椅子に座らなければならなかったんでしょうが、思わず窓から見える景色に夢中になってしまいました。
「すみません……」
そう言いながら引いてくれた椅子に座る私。
「気に入ってくれた?」
アルが嬉しそうに聞く。
「はい!ここに来てこんな景色が見れるとは思っていませんでした。素敵な場所ですね。」
「良かった。さぁ美味しいものを食べよう。わからないことは遠慮なく聞いて。」
「ありがとうございます。」

こうしてアルとの晩餐会が始まりました。

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