鏡よ鏡よ鏡くん

成瀬 慶

文字の大きさ
上 下
16 / 21

キャパの狭さ

しおりを挟む
鏡くんはまた
左手をくるくるっと回し
エスコートする

すると
そこに
真奈美があらわれた

真奈美はこちらを潤んだ瞳で
じっと見つめている

「真奈美
まずは君の心の内側を祐貴に教えてあげて」鏡くん

鏡くんは
そっと真奈美の肩に手で触れると
真奈美は話し始める

「私は祐貴くんのことが好きだった
入学式の日
あなたを初めて見かけた時から
文は自分の方が先に好きになったって
だから諦めてって言ったけど
どちらが先だなんて
関係ない
そう思っていた

祐貴君の事で
それまで以上に
私たち姉妹は仲が悪くなった

どちらも身を引く気がなかったから

ある日
文は祐貴君に告白をした
そして
祐貴君は文と付き合い始めて

毎日のように文は
私の部屋に来て
祐貴君との事を話していた

嫌だった
苦しかった

だから
私は諦めていた

諦めなければ
文はそれをやめないから
そうするしかなかった」真奈美

そうだったのか
知らなかった
二人がそんな状態だったなんて

「っで、どうしてこの恋は明るみに出てしまうんだっけ?」鏡くん

真奈美はぎゅっと
自分のスカートを握って
こちらを見た

「文が
祐貴君と交際しているのに
祐貴君という彼氏がいるのに
他の男の子と家で会ったりしていて・・・

それを責めたら
あの子、開き直って・・・

真奈美には分からないのよ
彼氏とかいたことないでしょ?

ってバカにしてくるから

私、悔しくて
祐貴君に・・・自分の気持ちを伝えに行ったの」真奈美

鏡くんは
こちらを見て

「これは
まだ
祐貴が文の心変わりを知らなかった時のお話しね
文と祐貴が別れるか別れないかの頃の話し

真奈美は君の家の前で君を待ち伏せをし
君へ告白をするんだ

文から真実を話されて
フラれて
ズタボロになって
家に帰ると
真奈美から告られる

君は
言っちゃうんだよ
真奈美に・・・」鏡くん

「何を?」祐貴

「"俺を馬鹿にしてんの?お前ら姉妹
さすが双子だな
最低だな"
ってさ
真奈美は君に
文にはほかに男がいることを自分の口からは言えなかったし
それ以前に
君から罵られて
自分の気持ちを上手に説明できなくて
号泣
その後、数か月
家に引きこもり
自殺未遂・・・しちゃったかな?
あっでも未遂だから心配ないよ」鏡くん

「俺、そんな風に真奈美を追い詰めて・・・」祐貴

「罪悪感?」鏡くん

罪悪感でいいのかな?この感情

「仕方ないよ
文からあんな衝撃的な事聞かされて
君はパニックになっていたんだから
普通の男の子はたいてい
自暴自棄になってしまうよ
それくらい
衝撃的な事だもんね
だけど
君がいけなかったのは
文と真奈美
切り離して考えてあげることができなかったこと
文は文
真奈美は真奈美
なのに
ニコイチに考えちゃって
文に振られた気持ちを
真奈美に八つ当たりしたような
そんな状況だったよね
君の言動は・・・」鏡くん

そうだ
文・・・よく言ってたな

”双子って言っても
私たちは一つではない
全く違うのに
同じように見られる
同じようにいることを望まれる
それが息苦しい”
って

俺何にも理解していなかった

文の言っていた言葉も
真奈美が思っていてくれたことも

今更だけど
どうしようもなく
情けなく思う
しおりを挟む

処理中です...