この恋。

成瀬 慶

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家(上)

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涼太と來未は結婚が決まって
まだ私や栞とは一度も会えていない
きっと会う気になれないのだろう
だけど
形的におかしいから
招待状はそれぞれの家に届いていた

栞は寂しそうな顔で

「涼太・・・よっぽど許せないんだろうね」栞

そう言って招待状に出席の記入していた
私は頷くことしかできなかった

ごめん・・・

涼太と來未ちゃんの結婚式当日
私は姉として
栞は親友として
披露宴会場へ別々に向かった

來未ちゃんは本当に綺麗で
幸せ一杯な顔は輝いている
涼太も
改めてみると大人になっていて
あんなに小さかった子が立派になったことが
頼もしく思えた

本当なら
新郎友人の挨拶は栞がするのだろうけど
そこは空白だった

最近の結婚式は色々あるから
友人スピーチがなくても変なことではないけども
私たちには刺さるものがあった

終始
涼太は私たちどちらとも
目を合わせることは無かった

もちろん
私たちは違うテーブルに座っていた
栞は友人席
私は新郎親族席

栞は何度かパパやママに話に来たけど
私とは目を合わすどころか会話はせず
私たちは必要以上に距離のある態度をとっていた
私たちが一緒に居ると
涼太の笑顔が曇る気がしたから・・・

來未ちゃんは気を使って
席札の裏に

”お姉さん
今日は私たちの結婚式に来てくれてありがとうございます
きっと涼太も同じ気持ちで感謝をしているでしょうが
今日は上手く言えないと思うけど許してあげてください
いつか
皆で笑いながらお食事したいです
                                                        來未”

とコメントを書いてくれていた
今の私にはそれだけで十分に嬉しかった
來未ちゃんの気遣いに感謝した

栞は久しぶりに会った友達の誘いを断り
二次会へはいかなかった

涼太の為に…

自分がいると
心から楽しめないのでは?と考えたようで…

別々に部屋に帰り
そのあと、私は栞の部屋へ

落ち込んでいるのかと思っていたけど
以外に明るくて
私はあえて
涼太の話はしなかった

私たちは久しぶりにゆっくり過ごす

最近では
栞は忙しくて
会っていて会えていないような
そんな感じで

栞は優しいから
気にしていたようで
今日はいつになく甘やかしてくれる
七つも年の差があるなんて
考えられないくらい
彼は私を包み込んでくれる

夜中、ふと目を覚ますと
栞はまだ起きているようだった

「起きてたの?」悠

「ごめん、起きちゃった?」栞

栞は慌てて電気を消す

「大丈夫よ…」悠

私はそう言って栞の方を見ると
月明かりに照らされた頬に
涙?
栞、泣いてたの?

栞は私にそれを隠すように
顔を横に向けた

もしかして、涼太のことで?

私は栞の背中を抱きしめて

「どうしたの?」悠

そう聞くと
彼は首を横にふる
私はギュッと抱き締める

「栞、
楽しいことも悲しいことも
同じように思っていたい・・・それは迷惑かな?」悠

私がそういうと
栞は涙をぬぐってこちらを向いた

「悠ちゃんは優しいな
そんなこと言ったら安心して
甘えちゃうよ」栞

彼はそう言って悲しそうに微笑んだ

「いいよ
しっかり甘えていいよ」悠

私がそう言うと
しばらくして栞は話し始めた

「涼太と本当の兄弟みたいだったからさ
今日のあいつ見てたら
本当に俺の事を嫌いになっちゃったんだろうなって
ショックでさ

寂しくってさ

悠ちゃんだって
涼太の唯一のお姉さんなのに
俺なんかのせいで
せっかく幸せな結婚式なのに
あんな思いさせちゃってさ・・・

俺にとっては涼太も涼太の家族も特別な存在だからさ

唯一の家族・・・って思う人たちだからさ

大切な人たちなのに
俺ってやっぱダメな奴だってさ・・・悔しくってさ

悠ちゃんは知ってるのかな?
家が複雑な家庭だってこと・・・

涼太は知ってるし
パパやママも知ってるんだけど・・・

最近、家の事とか色々あってね
今、始まったことではないんだけど

おれ、あの家にいちゃいけないんだ本当は…

おれは父親の愛人の子だからさ

本当は家業を継ぐことなんて考えていなかった
ちゃんとした子供の祐也(ゆうや)がいるから…」栞

祐也とは、栞と同い年の兄弟
双子ではなく
同じ学年に兄弟がいるってことは
むかし涼太に聞いたことがあるかもしれない

はじめて聞く
栞の家のはなし

私以外の家族は知ってたんだ・・・私は知らなかった
栞がお父さんの愛人の子だったなんて・・・

あの家にいちゃいけない・・・だなんて
そんな悲しい事
いつ頃から思っていたのかな?
そんなつらそうな話し今まで聞いたことも無かった
そんなに寂しそうな顔
私の前ではしたことあったのかな?

自分の鈍感さに腹立たしく思う

ただ今は
私は静かに彼に寄り添って聞くことしかできないでいた

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