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櫃間 武士

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第03章 初めてのダンジョン攻略

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 スラストは疲弊しきっていた。
 私はメラニーに言った。

「メラニー、スラスト様にもう少し休憩を取らせてあげて」
「いつまでも我を待たせるつもりだ?最後の問題を出さぬならこのまま我の不戦勝とするぞ!」
「だったら先に私が相手をするわ!」
「これ、ステラ!何を言っておる!?」

 スラストが慌てて押しとどめようとしたが私はメラニーの前に進み出た。

「フフフフ!我はどちらが先でも別に構わぬぞ」
「ありがとう!さあ勝負よ!」

 私はメラニーと洞窟の中央で対峙した。

「それでエルフの娘よ。貴様は何で戦うのだ?」
「私の生まれた国の伝統的な勝負方法!」
「それは何だ?」

 私は拳を突き出した。

「ジャンケンよ!」

 メラニーは小首を傾げた。

「ジャンケンとは何だ?」
「拳を握り締めたのが石を表すグー。二本の指を立てたのがハサミを表すチョキ。五本の指すべてを立てたのが紙を表すパーよ。グーはチョキに勝ち、パーに負ける。チョキはパーに勝ちグーに負ける。パーはグーに勝ちチョキに負ける」
「三すくみと言うわけか」
「そうよ。『ジャンケンポン!』の掛け声とともに互いに決めた手を出して勝負をするの。三回勝負よ!三回先に勝った方が勝ちよ!」
「フフフフ!考えたな、エルフよ!まともに戦っては敵わないと知り、推し量りがたい運否天賦で勝負をしようと言うわけか」
「運を天に任せた勝負ならあなたに勝つ可能性があるでしょ」
「承知した!いざ、尋常に勝負!」

 私はメラニーと洞窟の中央で対峙した。

「ジャンケン………パー!」
 私はパーを出した。
 メラニーはグーだった。

「私の勝ちよ!」

 人間は警戒心をもつと拳を握る傾向がある。
 それに自信家はグーを出す傾向にあるのだ。
 だから私はメラニーが最初にグーを出すと読み、パーを出したのだった。

「さあ、二回戦よ!」

 人間が同じ手を続けて出す割合は三分の一よりも低い。
 恐らくメラニーはチョキかパーを出すと私は推測した。
 となると私はグーを出せば勝つか負けるかだ。
 一方私がチョキを出せばあいこか勝つかの二通りだ。
 チョキの方が断然有利だ。

 私はチョキを出した。
 メラニーはパーを出した。
 
「私の勝ちだわ!」
「そのようだな…」
「次に私が勝ったら終わりよ」
「そろそろ我も本気を出すとするか」
「ちょっと待って!何を出すか考えさせて」

 私は後ろを向いてこっそりと呪文を唱えた。

 私が再び正面を向いた時、メラニーは額に指を当てていた。
 
(グーよ!私はグーを出すわ!グー!グー!グー!)

 私は心の中で何度も唱えた。

 私の心を読んだメラニーは勝利を確信して薄笑いを浮かべた。

(このエルフの娘もなかなか頑張ったが、しょせん私の敵ではなかったな)

「さあ!勝負をするぞ!ジャンケン………」
「ジャンケン………」

「さあ!パーだ!」
 メラニーはパーを出した。

「チョキよ!」
 私はチョキを出した。

「な、なんだと!?」
「これで三勝目!私の勝ちだわ!」
「クッ!な、何故だ!?お前はグーを出すつもりだったではないか。それなのに何故チョキを出したのだ!?」
「やはり、あなたは魔法を使って私の心を読んだのね」
「ああ!別に魔法を使ってはいけないとは誰も言っておらぬ」
「だから私も魔法を使わせてもらったわ」
「何だと!?」
繰り返しの魔法リピートを使ったのよ。この魔法を使うと直前の動作と同じ動作を繰り返すの。だから心の中でグーを出すって念じていても、さっきと同じチョキを出したのよ」

 メラニーは面白そうに腹を抱えて笑い声をあげた。

「ワハハハハハッ!愉快!愉快!こんなに笑ったのは何百年ぶりのことか!」

 メラニーは私の前に膝をついて臣下の礼を取った。

「我の負けだ。これより我はあなたの忠実なしもべとなろう」


 こうして私の初めてのダンジョン探索は終わったのだった。
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