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レモンイエローの憂鬱
俺と初デート 2
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気づけば俺はファミレスに来ていた。目の前には園子さんと鏑木が座っている。鏑木が「今日はランチでも食べながら、明日の予定を立てましょう」と提案したのだ。もう、本当に俺は情けない。デートプランもひとりで立てられないなんて。ちらりと園子さんのほうを見ると、困ったような表情をされた。絶対がっかりされた。最悪だ。昨日の夜からやり直したい。
「何食べます? 店長の奢りだから高そうなのにしますね」
「もう……好きにしてくれ」
ここはファミレスだ。高いものと言ってもたかが知れているはずだ。
「うん、これ。これにします。リブステーキ。これが一番高いです」
「……お前、値段で選んだろ」
「そうですね。でも、もうあたしお肉の口になっちゃったので変更不可です」
さりげなく値段を確認する。千円か。……うん、まあ。うん。俺はランチメニューから頼もう。ドリンクバーを付けても六百円は安い。園子さんの様子を確認すると、メニューを何度も何度もめくっていた。すごく悩んでいるようだ。やがて顔を上げた彼女は、口を尖らせながらこう言った。
「ここってオムライスないんですね」
オムライス探してたのか。いや、オムライスなら俺が作るのに。
「オムライスなら俺が作るのに」
心の声がダダ漏れてしまい、焦っていると、園子さんがこちらを見て優しく微笑んだ。
「やっぱり店長さんのオムライスが一番だって確かめたくって。でも、比べなくたってわかるから必要ないですね。うーん、じゃあ、アラビアータにしようかな」
「え、園子さんそれ辛いですよ」
「知ってます。夏は辛いものが食べたくなるんです」
そうか、夏は辛いものか。店でも夏期限定メニューで何か出してみようか。
「店長、デート中に仕事のこと考えるのはダメです」
「いや、鏑木がいるから今日はデートじゃないだろ」
「じゃああたしがいなくても今日ちゃんとしたデートができたって言うんですか?」
もう何も言い返せない。今日はおとなしく鏑木先生に楽しいデートプランとやらを伝授してもらうことにしよう。
「店長さんは何食べるか決まりましたか?」
「俺はミートソースドリアにします」
「じゃあ店員さん呼びましょうか」
そう言って、園子さんは白くて細い指を呼び出しボタンに触れさせる。俺はつい、その園子さんの指に俺の指を重ねていた。
「ふふ、一緒に押しますか?」
初めての共同作業です、というふざけたナレーションが頭の中に流れたそのとき。
「何食べます? 店長の奢りだから高そうなのにしますね」
「もう……好きにしてくれ」
ここはファミレスだ。高いものと言ってもたかが知れているはずだ。
「うん、これ。これにします。リブステーキ。これが一番高いです」
「……お前、値段で選んだろ」
「そうですね。でも、もうあたしお肉の口になっちゃったので変更不可です」
さりげなく値段を確認する。千円か。……うん、まあ。うん。俺はランチメニューから頼もう。ドリンクバーを付けても六百円は安い。園子さんの様子を確認すると、メニューを何度も何度もめくっていた。すごく悩んでいるようだ。やがて顔を上げた彼女は、口を尖らせながらこう言った。
「ここってオムライスないんですね」
オムライス探してたのか。いや、オムライスなら俺が作るのに。
「オムライスなら俺が作るのに」
心の声がダダ漏れてしまい、焦っていると、園子さんがこちらを見て優しく微笑んだ。
「やっぱり店長さんのオムライスが一番だって確かめたくって。でも、比べなくたってわかるから必要ないですね。うーん、じゃあ、アラビアータにしようかな」
「え、園子さんそれ辛いですよ」
「知ってます。夏は辛いものが食べたくなるんです」
そうか、夏は辛いものか。店でも夏期限定メニューで何か出してみようか。
「店長、デート中に仕事のこと考えるのはダメです」
「いや、鏑木がいるから今日はデートじゃないだろ」
「じゃああたしがいなくても今日ちゃんとしたデートができたって言うんですか?」
もう何も言い返せない。今日はおとなしく鏑木先生に楽しいデートプランとやらを伝授してもらうことにしよう。
「店長さんは何食べるか決まりましたか?」
「俺はミートソースドリアにします」
「じゃあ店員さん呼びましょうか」
そう言って、園子さんは白くて細い指を呼び出しボタンに触れさせる。俺はつい、その園子さんの指に俺の指を重ねていた。
「ふふ、一緒に押しますか?」
初めての共同作業です、というふざけたナレーションが頭の中に流れたそのとき。
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