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《第一話》あの日
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僕の名前は薄井影谷と言う。
先に断っておこう。僕はゲームやアニメが好きだし、漫画も読む。成績もどちらかといえば良い方で友好関係もしっかりしている。友達と良く遊びに行くし、誕生日なんかにはプレゼントももらう。家族関係も良好だ。姉が一人、弟が一人、妹が二人。母は専業主婦で父は収入の良い国家公務員だ。
そんな僕に唯一といっていい欠点があるとすればこれに限る。
「影が薄い」
別に根暗なわけではない。先ほど言った通りクラスでのある程度の地位は築けている。しかし、家族や友人、先生に話しかけると必ず「うぉ!」という叫び声と共に驚かれる。
僕は生まれつき影が薄く、人に気が付かれにくい。例えばロッカールームで先に着替えているとしよう。すると後から友人が入ってくる。声をかけると「うぉ!え、お前いつ来たの!?」と聞かれる。
こればかりは本当に難点としか言いようがない。何故なのだろうか。気配を濃くしようと友達と協力してみたりもしたが結論は友達の一言で出た。
「ごめん、無理だわ」
そう。服装を派手にしても、化粧を派手にしてもその服、化粧共々僕は気配を薄くするらしい。ある意味すごい能力だ。
そんなわけで僕は気配が死ぬほど薄い。
しかし、僕はそれでも、人間である以上、100パーセント認識されないことはないと思っていた。そう思えるのにはある決定的な証拠があったからだ。
ある時影の薄さをテーマに研究論文を出した学者がいた。そのタイトルは「影を濃くする方法」。僕は大いにその内容に期待し、そしてその論文は期待を裏切らなかった。
学者は、
「影が薄い人とは即ち人から認識されにくい人であり、それはその認識されにくい当の本人の無意識的な行動によって引き起こされている。」
と論じていた。長いので全体の内容を要約すると、
一般的な人には物を認識できる範囲というものがあり、その範囲から外れると認識度合いが下がるのだそうだ。自身の目の前から垂直線上にある、所謂「正面」が認識度合100パーセントだとしたら、そこから離れていくにつれて認識度合が低下する。
そして、その認識されにくい人とは無意識的に認識度合が最も低い位置立ってしまっている。
とのことだ。また、この論文の実験・観察結果を見て影が薄い人が立ち回りに気を回すことで皆から気がついてもらえるようになったという事例を読み、大変元気づいたものだ。希望も出てきた。
また学者は他にも、
「これは人間というさまざまな不確定要素を兼ね備える「動物」に対してであるからこそ「認識されない」ということが発生するのであり、機械であればそこにいるかどうかではなく体温や動きで物を判断する為、影が薄いに関わらず認識される」
とも論じていた。
これもまた有力な情報だった。
しかし、学者は僕の希望を後に盛大に裏切った。試しに自動ドアに向かってみても自動で開かない。検温機の前に立っても検温されない、挙げ句の果てにはなんでも感知すると言われる「魔法」にすら僕は認識されなかった。
そう。ここからが本題。
僕はクラスの授業中に漫画やアニメでよく見る転移魔法陣のようなものを見て、実際に存在するのか!夢見た異世界に行けるのか!と奮起したにも関わらず、先生とクラスメイトのみ消え、僕は何事も起きないまま椅子に着席したままだった。
悲しいにも程がある。目の前で夢を叶えるその目前まで来ていたのに、大した興味のない他の生徒は(僕の)夢を叶え、最も行きたがっていた僕は行けずじまいだ。
僕は神に何かしたのだろうか。怒りを、恨みを、仕返しをされるような「なにか」をしてしまったのだろうか。
翌日生徒が消えたとニュースで話題になった。先生までもが消えたのだ。もちろん大問題で大スクープ。ニュースのタイトルはこうだ。
「生徒と及び教員が一人残らず消えた〇〇高校二年A組」
お気づきだろうか。僕は何度も嘆いている通り異世界に行ってなどいない。置いていかれたのだから。しかし、僕は異世界にもいないし、どうやらここ地球にもいないらしい。
本当に僕は影が薄い、いや、存在がないみたいだ。
先に断っておこう。僕はゲームやアニメが好きだし、漫画も読む。成績もどちらかといえば良い方で友好関係もしっかりしている。友達と良く遊びに行くし、誕生日なんかにはプレゼントももらう。家族関係も良好だ。姉が一人、弟が一人、妹が二人。母は専業主婦で父は収入の良い国家公務員だ。
そんな僕に唯一といっていい欠点があるとすればこれに限る。
「影が薄い」
別に根暗なわけではない。先ほど言った通りクラスでのある程度の地位は築けている。しかし、家族や友人、先生に話しかけると必ず「うぉ!」という叫び声と共に驚かれる。
僕は生まれつき影が薄く、人に気が付かれにくい。例えばロッカールームで先に着替えているとしよう。すると後から友人が入ってくる。声をかけると「うぉ!え、お前いつ来たの!?」と聞かれる。
こればかりは本当に難点としか言いようがない。何故なのだろうか。気配を濃くしようと友達と協力してみたりもしたが結論は友達の一言で出た。
「ごめん、無理だわ」
そう。服装を派手にしても、化粧を派手にしてもその服、化粧共々僕は気配を薄くするらしい。ある意味すごい能力だ。
そんなわけで僕は気配が死ぬほど薄い。
しかし、僕はそれでも、人間である以上、100パーセント認識されないことはないと思っていた。そう思えるのにはある決定的な証拠があったからだ。
ある時影の薄さをテーマに研究論文を出した学者がいた。そのタイトルは「影を濃くする方法」。僕は大いにその内容に期待し、そしてその論文は期待を裏切らなかった。
学者は、
「影が薄い人とは即ち人から認識されにくい人であり、それはその認識されにくい当の本人の無意識的な行動によって引き起こされている。」
と論じていた。長いので全体の内容を要約すると、
一般的な人には物を認識できる範囲というものがあり、その範囲から外れると認識度合いが下がるのだそうだ。自身の目の前から垂直線上にある、所謂「正面」が認識度合100パーセントだとしたら、そこから離れていくにつれて認識度合が低下する。
そして、その認識されにくい人とは無意識的に認識度合が最も低い位置立ってしまっている。
とのことだ。また、この論文の実験・観察結果を見て影が薄い人が立ち回りに気を回すことで皆から気がついてもらえるようになったという事例を読み、大変元気づいたものだ。希望も出てきた。
また学者は他にも、
「これは人間というさまざまな不確定要素を兼ね備える「動物」に対してであるからこそ「認識されない」ということが発生するのであり、機械であればそこにいるかどうかではなく体温や動きで物を判断する為、影が薄いに関わらず認識される」
とも論じていた。
これもまた有力な情報だった。
しかし、学者は僕の希望を後に盛大に裏切った。試しに自動ドアに向かってみても自動で開かない。検温機の前に立っても検温されない、挙げ句の果てにはなんでも感知すると言われる「魔法」にすら僕は認識されなかった。
そう。ここからが本題。
僕はクラスの授業中に漫画やアニメでよく見る転移魔法陣のようなものを見て、実際に存在するのか!夢見た異世界に行けるのか!と奮起したにも関わらず、先生とクラスメイトのみ消え、僕は何事も起きないまま椅子に着席したままだった。
悲しいにも程がある。目の前で夢を叶えるその目前まで来ていたのに、大した興味のない他の生徒は(僕の)夢を叶え、最も行きたがっていた僕は行けずじまいだ。
僕は神に何かしたのだろうか。怒りを、恨みを、仕返しをされるような「なにか」をしてしまったのだろうか。
翌日生徒が消えたとニュースで話題になった。先生までもが消えたのだ。もちろん大問題で大スクープ。ニュースのタイトルはこうだ。
「生徒と及び教員が一人残らず消えた〇〇高校二年A組」
お気づきだろうか。僕は何度も嘆いている通り異世界に行ってなどいない。置いていかれたのだから。しかし、僕は異世界にもいないし、どうやらここ地球にもいないらしい。
本当に僕は影が薄い、いや、存在がないみたいだ。
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