転生したら不遇令嬢の侍女でした~大事なお嬢様の為にフェイクモブ悪役に徹します!

とうこ

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王城に連れて行かれる憐れな子羊(自称)

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 さて、私のミッションの残りをまとめなきゃ。どうにかして皇帝に渡りをつけお嬢様と会わせる。呪術師一族をどうにかする。後々遺恨を遺してはいけない。
 飼われている相手が悪かったのは気の毒だけど、あの母娘を見ればろくな一族じゃなさそうだ。
 ただ呪うならまだましだった。あいつらのやったのは、人の心を踏み躙る所業だ。
 


「苦しいのか。わしなら治せるぞよ」
 フードを深く被った怪しげな呪い師に扮した私。ただいまゴブ母の部屋を訪れています。口調も変えてみたりして。
「だ、誰! 鍵をかけてたのにどうやって!! お前の助けなど、ううっ」
「ヒッヒッヒ、呪われとるのお。貴様より格上の術師じゃ」
 それはわたしです。えっへん!
「ほれ、少しの間だけお試しじゃ」
「え、あ! 痒みがない! か、顔、私の髪!! 戻った!?」
 1分間だけ解除してまた呪う。ごっそり抜けた髪が気持ち悪い。
「ああああ!! ま、また痒い痒い!! 髪がぁああ! なんでよおぉお!!」
「お試しだと言ったろう。貴様がここに来た経緯と依頼人、全て吐くのじゃ。因と果をはっきりさせねば、このままでは一生呪われるのう」


 何度か繰り返したら自白した。目的はこの家の掌握とお嬢様の確保。思った通り、下っ端は情報を持ってない。
 何度も抜けた髪がこんもりと山になり気味悪かった。


 全快にしたままだとまたお嬢様の害になるかもしれない。
「あの美しいおじ……、娘さんには強い守護の力が目覚めた。何かすればお主にはまた苦しみが戻るであろう」
「ま、待って!! また何かあったら助けてもらえるのっ」
「さてなあ。全ては星の導きじゃ」
 テキトーな事を言っとく。ちょっとずつ症状を残してあるので当分は大人しくしてるでしょう。
「む、娘も助けて……、」
 ゴブリンでも情はあるのか。
「その、娘を思う気持ち。なんで他の子どもにも向けられんかったんじゃ。同情はせんが娘には同じ処置をしてやろう。悪心を抱けば元に戻るからしっかり躾けるがよい。そうして侯爵に全て打ち明ければ呪いは消えよう」



「おい! ジョンとやらは何処だ!!」
 一難去ってまた一難。ゴブ母娘を処置した次の朝、うるさい王子が来て旦那様を困らせている。応接室と音声を繋げてお嬢様と実況を聞いているところ。
「そのジョンを私は知らないのです」
 旦那様は当惑している。そりゃそうだ、会ったこともないんだから。
「オズワルドの奴も素性をよく知らないと吐かしていた。王家に叛意ありとして牢に入りたいか」
「しかし本当に知らないもので……」

 

 堂々巡りだ。
 どうしようかなあ。面倒だわ。でも旦那様を牢屋には入れられない。
「お父様は大丈夫?」
 不安そうなお嬢様に微笑んでみせる。
「いざとなればなんとかします」
 まだ掃除が済んでいないので、お嬢様は私の部屋にいるのだ。
 ネズミやゴのつく虫を退治するには一気にやらないと。逃げられたら面倒だ。



「いい加減に吐け!!」
 殴る音、次いで食器が割れ何かが倒れる音。やりやがったな! 
「お父様!!」
 いけない、お嬢様が飛び出してしまった。階段を降りようとして足を滑らせ、真っ逆さまに落ちた!


「お嬢様あああああ!!!」


 焦りすぎて魔法が出せなかった!!
 私のバカヤロー!!
 お嬢様、お嬢様、お嬢様!!!



 気づけば私は階段下でお嬢様を抱きしめ、最上級の治癒を連発しまくっていた。

 
「フェリシア!!」
「わ、私は平気です。リリスが、」
 はっ。治癒使ってたわね私。


 にやにやとボンクラ王子が近づいてくる。うっキモい!
「見つけたぞ、男装してた訳か。まあ私の威光と美貌に畏れを抱いたのだろう。不敬罪には問わないでやる」
 違いますキモいんです!
「大人しく着いて来い」
「……御意に」


「リリス!!」
「大丈夫です、なんとかします」
 すぐ帰りますからね。


 王宮にドナドナされていく私。下手に動けないから仕方ない。
「子爵家か。ふん、身分は足りないが妾にしてやろう。性格の悪そうな顔だがまあ美しい部類だしな」
「お戯れを」
 馬車の中、ふざけたことを吐かす王子に殺意が湧く。けれど今の私は囚われの無力なカナリア。嘘です。こいつ殴り倒すくらいは魔力なしでいけます。


 王は自分の息子で遊んでいる。王太子を決めずにどちらにも芽がある素振りをしているのだ。
 この第二王子も聖女を手に入れてリードしたいんだろう。残念ながら私、聖女なんかじゃありません。オコジョから指令を受けた神使です。
 王家潰すのは簡単だけど後始末がイヤ。私にはやる事があるんだから!
 今は生活魔法しか使えないけど。


「既に婚姻している相手がおります」
 他人を巻き込もう。


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