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第6章 ダンジョンから始まる世界交流
第237話 女3人、ぶらり塔攻略
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「塔の攻略、ですか?」
「そうだ。お前達3人で100階まで行ってこい」
修斗の執務室に呼ばれたシャンディラは元同じ組織だったにもかかわらず、ヤクシ・ガッコウとはザナドゥ王国で初めて顔を合わせた仲だ。
「あ、あの、王子様、ワタシは戦いには向かないと、お、思うのですが」
まだ幼さが残る少女シャンディラ。
濃い紫色で長髪のツインテール。少し垂れ目で気の弱そうな顔、ピンクでフリフリの魔法少女にも見える衣装を着ているシャンディラは、塔の攻略に不安がある様だ。
それもそのはず、シャンディラは身体能力は低く、そのスキルだけで12神将に採用されたのだ。
「お前は他に比べて体が弱いからか?」
「う、うん。だってワタシは力も速さもないし。つ、付いて行けないと思います」
「だがお前には素晴らしい能力があるじゃないか」
「で、でも……」
「お前のあの力は必ず必要になる。自信を持て、俺は能力のない者を側には置かない」
「でもシュウト陛下、こいつは体力も無いんだぜ? ワタシ等に付いて来れるのか?」
シャンディラと同じくらいの歳の少女ガッコウ。
丈の短い紺色で厚手のワンピース、同じく紺色のカウボーイの様なつばの広い帽子をかぶっており、薄い茶色の地面に届きそうなほど長い髪は、先端を金属の輪で纏めてある。
「大丈夫だ。特に今回の探索ではガッコウ、お前がキーになるからな。キバレ」
「わ、ワタシが! へ、へっへ~んそうだろうそうだろう、ワタシに任しときな!」
「それではシュウト陛下、前衛は私、中・後衛はガッコウとシャンディラでよろしいですか?」
「そうだヤクシ。お前の圧倒的な前衛力で2人を護ってやれ」
「は。陛下のお言葉とあらば、この身に変えましても守ってご覧に入れましょう」
盲目の女性ヤクシ。
両目が潰されており、腰まである長い銀髪で、耳元の髪を後ろで纏めている。
スタイルは良く手足もスラリと長い。
金属の具足と籠手を装備し、手にした斧は柄が長く刃は丸く巨大だ。
「必要と思う物があれば持って行け。準備ができ次第出発しろ」
3人は足を揃えて敬礼をし、ヤクシ・ガッコウ・シャンディラの順に部屋を出て行く。
執務室にいたキャロラインは複雑な顔でそれを見送る。
「シュウトさん、シャンディラにはまだ難しくありませんか?」
「あいつはスキル以外ではウチの中では最弱だ。メイドの方が強いだろうな」
「ならどうして」
「あいつの『視線をたどって殺す』スキル、あのスキルはもう少し先があるような気がするんだ」
「先? もっと強くなるんですか?」
「わからん。ただの勘だ」
準備を整えて、早速出発する3人。
移動は馬を3頭用意して休まずに進むつもりのようだ。
なにせ塔の場所はザナドゥ王国から随分と離れており、休まずに行っても10日はかかる距離だ。
「シャンディラ、休憩は多めに取りますが、疲れたら言って下さい」
「は、はいヤクシ様」
「ふふふ。もう漆賢人とは関係が無いのですから、様は必要ありませんよ」
「で、ですが……」
「だー! いいっつってんだろう! ワタシの事もガッコウでいいかんな!」
「は、はいガッコウ!」
優しそうなヤクシに対しても控えめなのに、口の悪いガッコウに大声で怒鳴られさらに委縮してしまった。
まだ冒険が始まってもいないのに、これでは先が思いやられる。
いくつかの町を経由して、ついでに薬草を集めて冒険者ギルドに納品したため、初心者(?)の3人はDランクになった。
攻略するだけなら冒険者の必要は無いが、ギルドの恩恵や情報を提供するには冒険者の方が都合がいいのだろう。
予定より少し遅れて12日目に塔へ到着した。
「ん~~……っはぁ。流石に疲れたぜ」
「大丈夫シャンディラ、降りられますか?」
「ひゃ、ひゃい、だいじょぶれふ」
塔の周辺にある小さな町に到着したが、どうやらシャンディラは疲れ果てているようで、馬に抱き付くように倒れている。
流石のガッコウもこれはアカンと思ったのか、その日は宿屋に放り込み、情報収集を開始する。
「あ~ん? まだ61階までの情報しかないのかよ。やっくに立たねぇなぁおい」
冒険者ギルドの出張所に入り塔の情報を確認するのだが、どうやら全く探索は進んでいない様だ。
魔物情報や罠情報も見るが、ここ最近で新しい情報は少ない。
3人に与えられた任務は100階までの探索であり、それには地図・罠・魔物情報も含まれているだろう。
もちろんそれ以外にも情報があれば出さなくてはいけない。
「ガッコウ、何か情報はありましたか?」
「なんにもねーや。あいつは大丈夫そうか?」
「ええ、今は薬を飲んで休んでいますから、明日には元気になるでしょう」
掲示されている情報に新しいものはないが、一応受付に行って話を聞くようだ。
しかし受付でもこれといった情報は無く、精々が新しく来た冒険者に塔攻略の心得を説く程度だった。
「ま、準備はできてっからな、明日のために休んどっか」
「ええ、明日からはずっと塔ですから、英気を養いましょう」
ギルドを出て宿に行こうとした2人の前に、屈強な男たちが立ちはだかる。
「いようお嬢さんがた、塔に行くんだって? 俺達が色々と教えてやるよ」
「そうだ。お前達3人で100階まで行ってこい」
修斗の執務室に呼ばれたシャンディラは元同じ組織だったにもかかわらず、ヤクシ・ガッコウとはザナドゥ王国で初めて顔を合わせた仲だ。
「あ、あの、王子様、ワタシは戦いには向かないと、お、思うのですが」
まだ幼さが残る少女シャンディラ。
濃い紫色で長髪のツインテール。少し垂れ目で気の弱そうな顔、ピンクでフリフリの魔法少女にも見える衣装を着ているシャンディラは、塔の攻略に不安がある様だ。
それもそのはず、シャンディラは身体能力は低く、そのスキルだけで12神将に採用されたのだ。
「お前は他に比べて体が弱いからか?」
「う、うん。だってワタシは力も速さもないし。つ、付いて行けないと思います」
「だがお前には素晴らしい能力があるじゃないか」
「で、でも……」
「お前のあの力は必ず必要になる。自信を持て、俺は能力のない者を側には置かない」
「でもシュウト陛下、こいつは体力も無いんだぜ? ワタシ等に付いて来れるのか?」
シャンディラと同じくらいの歳の少女ガッコウ。
丈の短い紺色で厚手のワンピース、同じく紺色のカウボーイの様なつばの広い帽子をかぶっており、薄い茶色の地面に届きそうなほど長い髪は、先端を金属の輪で纏めてある。
「大丈夫だ。特に今回の探索ではガッコウ、お前がキーになるからな。キバレ」
「わ、ワタシが! へ、へっへ~んそうだろうそうだろう、ワタシに任しときな!」
「それではシュウト陛下、前衛は私、中・後衛はガッコウとシャンディラでよろしいですか?」
「そうだヤクシ。お前の圧倒的な前衛力で2人を護ってやれ」
「は。陛下のお言葉とあらば、この身に変えましても守ってご覧に入れましょう」
盲目の女性ヤクシ。
両目が潰されており、腰まである長い銀髪で、耳元の髪を後ろで纏めている。
スタイルは良く手足もスラリと長い。
金属の具足と籠手を装備し、手にした斧は柄が長く刃は丸く巨大だ。
「必要と思う物があれば持って行け。準備ができ次第出発しろ」
3人は足を揃えて敬礼をし、ヤクシ・ガッコウ・シャンディラの順に部屋を出て行く。
執務室にいたキャロラインは複雑な顔でそれを見送る。
「シュウトさん、シャンディラにはまだ難しくありませんか?」
「あいつはスキル以外ではウチの中では最弱だ。メイドの方が強いだろうな」
「ならどうして」
「あいつの『視線をたどって殺す』スキル、あのスキルはもう少し先があるような気がするんだ」
「先? もっと強くなるんですか?」
「わからん。ただの勘だ」
準備を整えて、早速出発する3人。
移動は馬を3頭用意して休まずに進むつもりのようだ。
なにせ塔の場所はザナドゥ王国から随分と離れており、休まずに行っても10日はかかる距離だ。
「シャンディラ、休憩は多めに取りますが、疲れたら言って下さい」
「は、はいヤクシ様」
「ふふふ。もう漆賢人とは関係が無いのですから、様は必要ありませんよ」
「で、ですが……」
「だー! いいっつってんだろう! ワタシの事もガッコウでいいかんな!」
「は、はいガッコウ!」
優しそうなヤクシに対しても控えめなのに、口の悪いガッコウに大声で怒鳴られさらに委縮してしまった。
まだ冒険が始まってもいないのに、これでは先が思いやられる。
いくつかの町を経由して、ついでに薬草を集めて冒険者ギルドに納品したため、初心者(?)の3人はDランクになった。
攻略するだけなら冒険者の必要は無いが、ギルドの恩恵や情報を提供するには冒険者の方が都合がいいのだろう。
予定より少し遅れて12日目に塔へ到着した。
「ん~~……っはぁ。流石に疲れたぜ」
「大丈夫シャンディラ、降りられますか?」
「ひゃ、ひゃい、だいじょぶれふ」
塔の周辺にある小さな町に到着したが、どうやらシャンディラは疲れ果てているようで、馬に抱き付くように倒れている。
流石のガッコウもこれはアカンと思ったのか、その日は宿屋に放り込み、情報収集を開始する。
「あ~ん? まだ61階までの情報しかないのかよ。やっくに立たねぇなぁおい」
冒険者ギルドの出張所に入り塔の情報を確認するのだが、どうやら全く探索は進んでいない様だ。
魔物情報や罠情報も見るが、ここ最近で新しい情報は少ない。
3人に与えられた任務は100階までの探索であり、それには地図・罠・魔物情報も含まれているだろう。
もちろんそれ以外にも情報があれば出さなくてはいけない。
「ガッコウ、何か情報はありましたか?」
「なんにもねーや。あいつは大丈夫そうか?」
「ええ、今は薬を飲んで休んでいますから、明日には元気になるでしょう」
掲示されている情報に新しいものはないが、一応受付に行って話を聞くようだ。
しかし受付でもこれといった情報は無く、精々が新しく来た冒険者に塔攻略の心得を説く程度だった。
「ま、準備はできてっからな、明日のために休んどっか」
「ええ、明日からはずっと塔ですから、英気を養いましょう」
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