お一人様冒険記(6人パーティー)~ゲームシステムに縛られてるけど嫁を見つけてハッピーになって見せる!~

内海

文字の大きさ
20 / 71

18.合同依頼。いやですから

しおりを挟む
「あなたは本当に……なんというか……私の予定を狂わせるのが上手ですね」

 アニタさんが……アニタさんが怒っておられる。

「なんですか?聞いた所によるとアセリアさんと夫婦になったですって?ギルドには何の報告もなしに?回せる依頼の事考えたことありますか?ユグドラさんにお願いしようと思っていた依頼が山の様にあるんですよ?明日の昼?ハッ、勝手にイチャついててくださいな。私なんかアズベルがいつまでたっても煮え切らないでヤキモキしているっていうのに!電撃婚とは羨ましい限りですねぇあははー」

 とても怖い……です。とはいえ、こればかりは譲れない。

「その……アズベルに発破はっぱをかけますから、なにとぞ、なにとぞ~~」

「じゃあ今」

「え?」

「今アズベルを呼んできてください!私の部屋で寝てますから!」

「わ、わかりましたーー!」



◇◇◇◇◇◇



「おいアズベル起きろ!俺のためにアニタさんにプロポーズしろ!」

「な、なんだいきなり」

「アニタさん、痺れを切らしてるぞ」

「マジ?」

「マジ」



◇◇◇◇◇◇



「連れてきましたー!」

「アニタ!待たせてすまなかった!俺と結婚してくれ!はい求婚の花束!」

「アズベルありがとう!じゃあアレ言って」

「え、今か?」

「今」

 あれって何だろう。アズベルが一回咳払いをした。

「俺にとって君は太陽だ!君はいつも光り輝いていて俺を照らしてくれる女神さまだ!君と一緒に居たら他の女性はみんなかすんで見える、君と一緒に居られるなんて俺は幸せ者だー!」

「アズベル、そんなに私の事を好きなのね!結婚しましょう!」

「「二人で一緒に夫婦の太陽になりましょう!」」

 二人で抱きしめ合って、空を指差している。そこ天井ね。
 なんだこれ。やっぱり漫才か。



☆ ☆ ☆ ☆



 ……ハッ!くだらない夫婦漫才を見せられて、気が遠くなってしまった。

「あの~、それで依頼の方は……」

「じゃあこれとこれと、あとはこのあたりかしら」

 カウンターに置いてあった依頼書をバラバラと広げて見せてくれた。

「これはこの前もお願いした素材集め。こっちは街周辺の見回り。これは木の伐採。他は剣術指導と魔法指導。あ、木こりの護衛もありますね」

「……気のせいか、木の伐採とか木こりの護衛とか、私を狙い撃ちしたような依頼が混ざっているような気がしますが?」

「そりゃあ斧を持った冒険者として有名ですから、伐採ギルドから依頼も来るってもんです」

「じゃあ伐採と護衛って同時に受けれますか?」

「大丈夫だと思いますよ。護衛だけしてくれと言われたら、別の日に伐採をしたらいいですし」

「ああなるほど。ならその二つでお願いします」



 伐採ギルドの前に到着した。
 予想はしていたけどログハウスだ、しかも四階くらいまである。
 ログハウスってこんなに高く作れるんだ~。

 中に入り受付らしい場所へ行くと、予想に反して奇麗なお姉さんがいた。おっさんだらけだと思ってた。
 打ち合わせをしたのち、護衛対象の木こりさんと一緒に街を出て、森へ向かう事になった。
 自分で伐採しても構わないそうだ。



「それにしても兄ちゃん、伐採ギルドにはいらねーのか?ウチのギルマスが期待して待ってるぞ?」

「確かに山で木こりをしていましたが、冒険者になりたくて降りてきましたから」

「別に登録するだけでも構わんぞ?特にノルマも義務も何も無いからな」

「そうなんですか?じゃあ戻ったら登録だけしますね」

「おう」

 目的地の森に到着した。
 伐採ギルドで管理している森らしく、木や草が生い茂っていない奇麗な森だ。
 木こりさんの伐木の手伝いをして、休憩中に自分の伐木依頼をこなそう。
 久しぶりにやったけど楽しかったのは内緒だ。

 なにより驚いたのは、直径70センチ程の太さの木を一振りで切ってしまった事だ。
 倒す方向も何もあったモノじゃない、危なすぎる。力加減が難しい。
 今回はモンスターが出る事も無く、無事に任務終了した。
 たまにはこんな時も無いとね。





 それから数日してもリアは釈放されなかった。
 やはりE・D・Dの関係者じゃないかと疑われているのかもしれない。

 すっかり詰め所の衛兵と仲良くなったある日の朝、またもや緊急の依頼が舞い込んできた。

 ギルドで話しを聞くと、王都方面にある街エル・ド・ランとの街道沿いで、大量のモンスターの足跡が見つかったらしい。モンスターの姿自体は見ていないが、足跡から大型の四足歩行モンスター推定三十匹ほどだとか。

 現在両方の街合同で、冒険者による討伐作戦が出ているので参加してほしい、と。

「アセリアさんの動向はしっかりと見ておきます。作戦に参加してください!」

 アニタさんが頭を下げてお願いしてきた。アズベルも隣で頭を下げている。

「いや」

「そんな事をおっしゃらずに!」

「いやですから」

「そこを御再考願います!!!」

「いや、ですからね、そんな大変な事態なら、頭を下げられなくても参加しますってば」

「あ、あれ?いいの?こちらから言っておいて何ですが、本当にいいんですか?」

「はい、作戦に参加します」

「よかった~」

「な?俺の言ったとおりだろ?俺とコイツは親友だから分かるんだよ」

「それではアズベルさん、作戦の説明をお願いできますか?」

「あれ!?なんでいきなり丁寧語になったんだ?俺達親友だよな?な?」

 アズベルの声が聞こえない様に両手で耳を塞いで二階の部屋へと向かった。
 エリクセンから参加する冒険者の数は五十名、エル・ド・ランからは三十~四十名らしい。
 どうやらエリクセンの方が街の規模が大きいようだ。

 前衛職や後衛職は使う武器が違い、様々なスタイルの冒険者が揃っている。
 エル・ド・ランからも同じように多様な冒険者が来るだろうから、自分の役割を見失わない様にしないと、連携の取れない混成部隊はあっという間に混乱してしまう。
 必要と思われる装備を各自そろえ、昼前にギルドに集合・出発する事となった。

 俺は宿へ戻り、しずかへキャラチェンジをしよう。
 装備の整備と、ポーションを沢山作っておいた方が安全だろう。
 えーっとしずかしずか……ポチっとな。

― ― ―

 それにしても大型のモンスター三十匹ですか。中々の大規模作戦ですね。
 武器は数種類持っていますから、防具の予備を観ておきましょう。
 ポーションは時間の許す限り、ですね。

 以前お邪魔した鍛冶屋さんで炉を借ります。
 メイン装備は痛みが少ないので直ぐに完了しました。
 予備の方は暫くしばらく使っていなかったのですが……錆は出ていませんし、それどころかホコリも付いていません。いわゆるバッグの中は時間が止まっているパターン、でしょうか。
 こちらは何もしなくて大丈夫ですね。では鍛冶屋さんをでましょう。

 さて、後はポーションの材料を買って……ん!?メニューの錬金術製作項目に知らないモノが追加されています。

 治療セット

 驚きました、こちらに追加されていたんですね。
 しかしこれは嬉しい誤算です。ポーションだけでなく治療セットが使えれば、生存率は飛躍的に高まります。
 もしかしたら、私の知らない物が製作できるようになっているかもしれませんね。
 今度一通り確認しましょう。

 早速必要な材料を確認して、宿で製作にかかりましょう。

 治療セットを三百個作り、回復ポーションを四百個、解毒ポーション百個作りました。冒険者は最大で九十名程なので何とかなるでしょう。

 回復系以外に作ったものとして、爆弾ポーション五十個、毒ポーション五十個。
 爆弾は汎用性があるので持っていれば使うでしょうし、毒はあれば使うかな?

 ポーションの小瓶は回復は青、解毒はオレンジ色で真っ直ぐな小瓶。
 爆弾は黒で丸い瓶。毒は紫の三角の瓶に入れました。

 後は食事とテントでしょうか。何日かかるのか分かりませんし。
 食事は残念ながら作れないので買うとして、テントを作りましょう。
 大工仕事と裁縫仕事は久しぶりですね。

 折り畳み式の二人が入れるくらいの防水加工をしたテントと、簡単な寝袋も作りましょう。
 他には何か……まぁ何とかなるでしょう。
 そろそろ昼が近いですね。キャラを変更してギルドへ向かうとしましょう。
 ではユグドラに変わります。

― ― ―

 流石に荷物が多くないと不自然だから、大きめのバッグをマントの下に斜めがけして向かった。
 最近は斧を背中に隠す必要が無いから、左腰にかけている。
 ギルドには沢山の冒険者が集まっていた。
 知らない人ばっかりだな、顔を見た事がある人は数名いるけど。 

 俺の後からもゾロゾロと冒険者が集まり、しばらくして誰も入って来なくなると、アズベルが前に出て全員に話し始めた。

「全員注目!俺はアズベルだ。今回の合同作戦エリクセン支部のリーダーを務める事になった!まずはエル・ド・ランとの中間地点である湖を目指す!そこでエル・ド・ランの冒険者と合流・捜索となる!どんな危険が待ち受けているか分からないが、諸君ならモンスターを討伐し無事に帰還できるはずだ!なーに今回は力強い助っ人も居る事だし、さっさと終わらせて報酬貰って、ウッハウハになろうぜ!」

 オー!という掛け声に混ざって笑い声も聞こえる。アズベル上手いな、気合いが入って更に緊張をほぐした。

「出発だー!」

 ギルドから一斉に冒険者が我先にと飛び出していく。全員すごい気合いの入りようだ。俺も勢いに乗って出て行こうとするが、アズベルに止められた。

「ユグドラお前はこっちに来い。紹介しておく、今回は十人で一パーティーを組むが、その部隊長達だ」

 四人の冒険者と挨拶を交わす。

 確か五十人いたから五パーティーって事か。向こうと合わせると九パーティーになり、モンスターは約三十匹だから一パーティー、十人で二~三匹を相手にする事になるな。

 モンスターの正体は分かってない様だけど大丈夫かな。
 各リーダー達は戦士二人魔法系二人、そしてアズベルだ。
 見るからに強そうな人だから熟練者なのだろう。

「そして今回はユグドラ、お前には遊撃手として全体を見てほしいんだ」

「ん?それはリーダーであるアズベルの役目じゃないのか?」

「俺とエル・ド・ランのリーダーのどっちが全体を見るかは決まってないが、お前は自身の判断で勝手に動いていい。多分その方がお前は戦いやすいし周りも助かる」

「信用してもらえるのは嬉しいけど……うーん、戦うこと自体は問題ない。でもこういった作戦は初めてだからどうなるか分からないぞ?」

「そこらへんは俺が責任を持つから安心して戦え。なに、戦果を挙げれば誰も文句は言わんさ」

 まあ冒険者同士だから、固い事は言わなくていいって事かな?それなら勝手にやらせてもらった方が気は楽だ。

「わかった、それでいこう」

「よし、それじゃあ俺達もいくぞ!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

社畜サラリーマン、異世界でパンと魔法の経営革命

遊鷹太
ファンタジー
過労死寸前の30代サラリーマン・佐藤健は、気づけば中世ヨーロッパ風の異世界に転生していた。与えられたのは「発酵魔法」という謎のスキルと、前世の経営知識。転生先は辺境の寒村ベルガルド――飢えと貧困にあえぐ、希望のない場所。「この世界にパンがない…だと?」健は決意する。美味しいパンで、人々を笑顔にしよう。ブラック企業で培った根性と、発酵魔法の可能性。そして何より、人を幸せにしたいという純粋な想い。小さなパン屋から始まった"食の革命"は、やがて王国を、大陸を、世界を変えていく――。笑いあり、涙あり、そして温かい人間ドラマ。仲間たちとの絆、恋の芽生え、強大な敵との戦い。パン一つで世界を救う、心温まる異世界経営ファンタジー。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...