【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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1 フォーリン俺?

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 曰く、最高の職人とは。才能の上に努力を重ねて、経験の上に努力を重ねてる。最後に自分の愛の上に努力を積み重ねてできる物だと。

「いやー!リト悪いね」

「良いですよ。なんか楽しいし!あ、ここどうします?」

 俺は登っていた梯子から降りてくる。

「ここの窓なんですけど……えーと「ウィリペディア!」」

 俺は腕に嵌っているインベントリからほぼ、タブレットのウィリペディアを取り出し、グングルを開く。

「このイギリス式のを真似しようかと思ってまして。で、この神の顔をゼール様に似せて服は白いローブで……」

「おおー!いいね!いいね!リト!気分が上がるよーー!」

 俺の目の前にいるちっこい子供……実はこの世界の創造主のゼール様だ。
 
 俺はこのゼール様達が住む白亜の宮殿のステンドグラスを作っていた。
 今はゼール様の座する椅子の後ろの1番神々しい所を作成中だ。

「威厳ある青年にすればいいんですね?お爺さんじゃなくて」

 こくこくこく!とゼール様は首を縦に激しく振った。可愛い。

「わし、若いほうが良い!」

「了解です!」

 打ち合わせを軽くして、俺はステンドグラスの制作に戻る。火の精霊の力を借りて珪砂を溶かし、色をつけ形を作り、嵌めてゆく。
 はっきり言って詳しいことは分からない。でも、出来る。これが才能らしい。


 俺、霧島利人はそんな職人とは全く無縁の平会社員だった。激務と寝不足がたたって24歳の働き盛りで死んでしまったが、このゼール様にスカウトされた。

「君!ガラス職人の才能が振り切れそうなくらい凄い!僕の家のガラス作ってよ!」

「へ?」

 ガラス作りなんて触れたこともない24年の人生だった。

「もし触っていたら運命変わってたけどねー……」

 残念そうにゼール様は呟く。いくら才能があっても、きっかけがなければ開花しない。俺もそういう人生だったようだ。
 そうやって稀有な才能を埋もらせている人はどの世界にも沢山いて、開花させる人はほとんどいない。

「勿体ないけど、それが運命力なのさ」

 だから人は面白いんだけけどね?そう愉快そうに笑った。俺も生きているうちにそういう機会を活かせなかった。
 
 そして死んでからこの神様達の家で、腕を振るっていた。とても楽しい!生きているうちに出会いたかったなー!

 少しづつ出来上がってゆく、美しいステンドグラスに心掛けて踊る。見る人にも感動を与えられたら凄く幸せだろうなぁ!頑張ろう!

 俺が梯子をかけて高い所で作業をする足元で、愛と美の神様達がじゃれついて遊んでいる。

「りとー!次はあたしたちの家の窓作ってねー」

「窓はねーピンクのはーとにして!」

 神様達はみんな子供の姿をしている。省エネモードなのだそうだ。人前に出る時は威厳ある姿を取るけど、今はリラックスしているんだね。

「分かりましたー。でも危ないですから、梯子の下で遊ばないでくださいねー」

 それはフラグという奴だった。

「やだー分かってるよ!リト」

「こらー!お前ら!仕事しろー!」

 遠くからゼール様の声が響き、「きゃっ!」双子の愛と美の神様は飛び上がる。

 ガッ!グラァ……!

「え?あ!あああ!!うわぁーーー!」

「りとーーー!」

 梯子はバランスを崩し、俺は空中に投げ出された。そして運悪く、神の大地から地上へ真っ逆さまに落ちて行く!

「ぎゃーーーーー!」

 途中、落ちて行く俺の代わりに、登ってゆく魂にすれ違う。あ、俺はあの人になるんだ。何故か理解した。


 ごめん、君。僕の名前はリト。足を滑らせて死んじゃった。お母さんと兄弟を頼みます……!

 え!そうなの?君!俺もリト。ハートの窓はいつ作れるか分かりませんって伝えておいてくれる?

 君が優しい人で良かった。ありがとう安心したよ。

 君も優しい人だね。何とか頑張ってみるよ。


 俺達の魂はすれ違い、俺は下に、リトは上へ上がって行く。見れば岩場で血を流しているリトの体がある。痛そうだが、俺はスッポンとリトと体に吸い込まれた。

「いてててて……リトは無茶したんだなぁ……」

 体の記憶が頭に流れ込んで来た。名前はリト。苗字はない。木こりの息子だが、父親はだいぶ前に魔獣に殺された。
 母と妹が2人、弟が2人の6人家族の長男だ。

 家は貧しい。食うのがいつもギリギリだった。この日も少し足を伸ばして遠くまで来て、急いで帰ろうとして……足を滑らせて落ちた。
 辺りは日が暮れて行く。

「早く帰らなくちゃ……」

 魔獣に遭ったら大変だ。リトの体は元々俺の物であったように、すぐに馴染んでくれて迷わず家につけそうだった。
 頭の怪我は痛むけど、しょうがない。血の匂いは魔獣を呼ぶ。俺は何とか傷口を押さえて家に帰った。

「リト!心配してたのよ!」

「リト兄!怪我!」「兄ちゃん」「兄!」「にーちゃ!」

「はは、ごめん。足を滑らせてさ」

 リトの家は小さい。ぼろい。家族がギリギリ住んでいる。でもみんな優しい家族だ。俺は初めて会ったけど、すぐにみんなを好きになった。
 上に行ったリト。俺、頑張るね。ステンドグラスは…どうしよう?神様に連絡取れたら良いのになー!

 とにかくこの日は母さんに布を巻いて貰って、みんなで眠った。

 この家族のために俺が出来る事を考えよう。

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