【完結】その少年は硝子の魔術士

鏑木 うりこ

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家族

65 我が家の玄関でする話

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「え?!か、母さん?!」

 母さん!何を言ってるのかな?!

「まあ!シュリより背が高いのね!今までリトを守ってくれてありがとうございます。そしてこれからもずっと守ってやってくださいね。この子は一番上のお兄ちゃんなので、色々と我慢させた所が多くて申し訳ないとずっと思っていたのよ」

「だ、だから!母さん!母さんってば!!」

 聞いて!俺の話を!聞いて!

「父親が亡くなってから本当に苦労ばかりかけて。去年は頭に大きな怪我もして、今年は手なんて……本当に、本当に……」

「母さん……」

 母さん、泣かないで。俺はちっとも大変じゃなかったよ。だって大好きな家族の為だもん。上にいるリトだってそうさ、俺達は家族の為だから、色々したかったんだ。
 頭の怪我は上にいるリトの不注意だし、手は……不幸が重なったけど、ギアナ様に会えたんだ。辛いだけじゃないんだよ。ちょっと困る事もあるけれど、大体大丈夫なんだから!

 と、いうか母さん!俺もギアナ様も何も言ってないからね?!びっくりしすぎてお母様って呼ぶの忘れちゃったよ!

「か、母さん?お母様……?えーと、えーとね?俺ね、」

「リト、私は貴方の母なのよ。何でもお見通しなの。こういう時はリトは黙ってるものよ!さあ、ギアナさん!」

 期待を込めた眼差しを向けられ、ギアナ様は一瞬呆気に取られたが、笑いながら抱き上げていたリンを床に下ろした。

 そしてお母様の正面に立ち、真顔で答える。

「リトのお母様、リトを私に下さい。この先必ず大切にし、絶対に1人にしない。時に飢え、時に泣いたとしても、必ず後悔をさせぬと誓います」

「自信がおありなのですね」

「勿論です」

 母さんは深々と頭を下げた。

「息子を……リトをよろしくお願い致します……!」

 母さん……ギアナ様……!

「ほっほ。めでたい話じゃが、我が家の玄関でする話でもないのぅ~」

 笑いながら爺ちゃまが現れた。爺ちゃま!もっと早目にそれ言って欲しかったぁーーーーー!

「あらやだわ!」

 勘弁してよー!母さん!


「いやでも、リリーさんの慧眼は大した物ですよ、私もこの人材を逃してなるものかと思いましたからね」

 陽当たりの良いサロンに、全員案内されて口を開いたのは、サマル・ルシリア伯爵。サマル様は俺たちのお父様の1番上のお兄さんで、現在ルシリア領を治めている。
 爺ちゃまは先代として隠居してるんだって。

「嫌ですわ!ルシリア様。私はただリトを幸せにしてくれるのはこの人だと思っただけで……」

「光栄です」

 なんの臆面もなく、にこにことギアナ様は笑う。お父様のお兄さんとは言え、伯爵様と、ずっと木こりの妻だったとは言え、生まれは公爵令嬢のお母様に挟まれても、なんの気遅れもないギアナ様は本当に凄いと思う。
 俺なんて身内のはずなのに、小さく縮まっていることしかできない。貴族のやり取りって怖いよ!

「子供達はずっとこの地に居ても良いとは思ってはおるのだが……やはり学園には通うべきではないかと思うのだ」

 サマル様は書類を取り出した。

「この国の1番良いとされる学園は王都にある。私の息子と娘も、王都の家から学園に通っておるのだ」

 そうなんだ!そりゃ子供いるよね。

「リトはすぐに編入試験を受けて、カレンは来年からが良いと思っている」

 俺は、学校は行かなくて良いよ。木こりでもいいし、ギアナ様のお抱え職人なんて素敵そうだし。

「そうですね、リト、学園に行けよ。学べば拡がりが出る。お前はもう木こりの息子では居られない」

 えー……ギアナ様は俺の考えている事が分かるのかな……。行きたくないなぁ……。

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