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26 ゆるゆるスローライフだと思ってたので。
「うーん」
「どうした?」
「いえね、こうして私が見て周り、いる時は良いんですよ。でもいない時の怪我の対処はできません。神聖魔法の使い手として、死者は蘇生できませんから」
「死は神の奇跡のみ、だっけ」
「はい」
ゆっくりと怪我が癒えていく警備隊長を見ながら、レイジェスは呟く。
「レイジェス様、腕が動きます!」
「良かった。かなり深かったし、古傷なので上手くいくか不安でしたが……しばらくはリハビリしながら生活してみて。すぐに狩に行かないで下さいよ」
「おっと! 嬉しくて走り回りそうでした」
「ダメです!」
警備隊長は父に仕えていた壮年の男性で、父と兄亡き後、サリエンを守るのに奮闘して大怪我をおっていた。それでも後進の指導や、時には上手く動かない体でも魔物狩りに出たりしてくれた人で、大恩があるんだ。
「はあ、シャノン様の奥さんが男だって聞いてショックでしたが、こりゃ素晴らしい人を捕まえたもんだ!」
「はっはっは! そうでしょう、そうでしょう! 皆さんにそう伝えて下さい!!」
「任せて下さいよ、レイジェス様」
レイジェスはこういう所から皆の心を掴んでいってしまい、もはや手がつけられない。今や領民の殆どがレイジェスのファンだ……名実ともに私達が結婚していることが広まっている。
「レイジェス様素敵よねぇ~」
「シャノン様と仲もいいし」
「二人並んでいるとドキドキするわ!」
何故ドキドキするのか分からないけれど、若い女性達からも人気があるようだ。そんな周囲の様子に少し黄昏ていたが、レイジェスの声が現実に引き戻した。
「で、ですね。私がいない時に大怪我をしたら、助けてやる事ができないんですよ、その辺はあなたのポーション頼みなんですって話です」
「まあ、それはそうなんだけど。私は1日二本作るのが限界だよ」
「それ、どうにかしませんか?」
「でも」
確かにレイジェスの言うことはもっともだ。怪我が多いのは街の中じゃない。危険な森や山岳だ。そしてレイジェスはそんな狩りに毎回同行する訳にもいかない。だからポーションがあれば安心なんだが……。
「私はポーション作れませんよ」
「それは分かるかも」
回復魔法が使えるのにあえてポーションを作る必要なんてないし、薬学は結構知識が必要だ。
そして、ポーション作りはいわゆる精神力、言うなればMPを大量消費するんだ。私が1日二本しかポーションを作る事ができないのはそこに由来する。
「あれだけ毎日、書類で精神力を削られてはポーションに回す力はないのは分かります」
「それもあるし……薬学の熟練度が低いから……」
「どうして? 学園でたくさん勉強したでしょう?」
「いやぁ……あの頃はゆるゆるスローライフだと思ってたから、今度はゆっくり過ごそうと思ってた勉強はあまりしてなくて」
「あー……ブラック企業社畜生活をしてたんですもんね」
「はい……」
確かに前世の清宮商事は休みはあまりなくて拘束時間も長かった……でも給料は良かったらしい。だからブラックではなかったんだけど、私は一人ブラック社畜をしていたという事だった。
「毎月50万近く、ボーナスは300万以上木田に抜かれてたんですよ? そんなの生活がカツカツになるの当たり前じゃないですか」
「知りませんでした……」
「その辺りは本当に信じられないですよ!」
明細を偽造したり色々されていたらしいけれど、毎日疲れ切った頭では考えることを放棄していた面もあったかもしれない。
「ほとんど取り返しましたけど……ざまーみろ、でした」
「えっ! 結構な額になってるよね?!」
「勿論ですよ。木田の溜め込んでたブランド品や、株、金も全部没収しましたし、実家や親戚からも徴収しましたよ、いろんな所からね!」
「ひ、ひえええ……」
「まあ、前世のことはともかく、ポーションはもう少し作れるようになった方がいいのではないかと思うんです」
「それは分かっているんだけどね」
その辺はちょっとため息をつくしかなかった。
「どうした?」
「いえね、こうして私が見て周り、いる時は良いんですよ。でもいない時の怪我の対処はできません。神聖魔法の使い手として、死者は蘇生できませんから」
「死は神の奇跡のみ、だっけ」
「はい」
ゆっくりと怪我が癒えていく警備隊長を見ながら、レイジェスは呟く。
「レイジェス様、腕が動きます!」
「良かった。かなり深かったし、古傷なので上手くいくか不安でしたが……しばらくはリハビリしながら生活してみて。すぐに狩に行かないで下さいよ」
「おっと! 嬉しくて走り回りそうでした」
「ダメです!」
警備隊長は父に仕えていた壮年の男性で、父と兄亡き後、サリエンを守るのに奮闘して大怪我をおっていた。それでも後進の指導や、時には上手く動かない体でも魔物狩りに出たりしてくれた人で、大恩があるんだ。
「はあ、シャノン様の奥さんが男だって聞いてショックでしたが、こりゃ素晴らしい人を捕まえたもんだ!」
「はっはっは! そうでしょう、そうでしょう! 皆さんにそう伝えて下さい!!」
「任せて下さいよ、レイジェス様」
レイジェスはこういう所から皆の心を掴んでいってしまい、もはや手がつけられない。今や領民の殆どがレイジェスのファンだ……名実ともに私達が結婚していることが広まっている。
「レイジェス様素敵よねぇ~」
「シャノン様と仲もいいし」
「二人並んでいるとドキドキするわ!」
何故ドキドキするのか分からないけれど、若い女性達からも人気があるようだ。そんな周囲の様子に少し黄昏ていたが、レイジェスの声が現実に引き戻した。
「で、ですね。私がいない時に大怪我をしたら、助けてやる事ができないんですよ、その辺はあなたのポーション頼みなんですって話です」
「まあ、それはそうなんだけど。私は1日二本作るのが限界だよ」
「それ、どうにかしませんか?」
「でも」
確かにレイジェスの言うことはもっともだ。怪我が多いのは街の中じゃない。危険な森や山岳だ。そしてレイジェスはそんな狩りに毎回同行する訳にもいかない。だからポーションがあれば安心なんだが……。
「私はポーション作れませんよ」
「それは分かるかも」
回復魔法が使えるのにあえてポーションを作る必要なんてないし、薬学は結構知識が必要だ。
そして、ポーション作りはいわゆる精神力、言うなればMPを大量消費するんだ。私が1日二本しかポーションを作る事ができないのはそこに由来する。
「あれだけ毎日、書類で精神力を削られてはポーションに回す力はないのは分かります」
「それもあるし……薬学の熟練度が低いから……」
「どうして? 学園でたくさん勉強したでしょう?」
「いやぁ……あの頃はゆるゆるスローライフだと思ってたから、今度はゆっくり過ごそうと思ってた勉強はあまりしてなくて」
「あー……ブラック企業社畜生活をしてたんですもんね」
「はい……」
確かに前世の清宮商事は休みはあまりなくて拘束時間も長かった……でも給料は良かったらしい。だからブラックではなかったんだけど、私は一人ブラック社畜をしていたという事だった。
「毎月50万近く、ボーナスは300万以上木田に抜かれてたんですよ? そんなの生活がカツカツになるの当たり前じゃないですか」
「知りませんでした……」
「その辺りは本当に信じられないですよ!」
明細を偽造したり色々されていたらしいけれど、毎日疲れ切った頭では考えることを放棄していた面もあったかもしれない。
「ほとんど取り返しましたけど……ざまーみろ、でした」
「えっ! 結構な額になってるよね?!」
「勿論ですよ。木田の溜め込んでたブランド品や、株、金も全部没収しましたし、実家や親戚からも徴収しましたよ、いろんな所からね!」
「ひ、ひえええ……」
「まあ、前世のことはともかく、ポーションはもう少し作れるようになった方がいいのではないかと思うんです」
「それは分かっているんだけどね」
その辺はちょっとため息をつくしかなかった。
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