元王太子からは逃げられない!前世からの婚約者らしいですが幸せにはなれるらしい

鏑木 うりこ

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52 我慢 (レイジェス

 父と母が存命の時はまだ良かった。

「その時、省吾君がな、こう言ったんだ。懐かしいなあ」
「へえ! 俺も見たかったなぁ」
「でも省吾さんはおにぎりが好きだったでしょ? しかもおかかよ。梅干しは酸っぱいから苦手なの」
「そう言えばかなり無理して食べてましたね!」

 省吾さんは基本、人から勧められたものは絶対美味しくいただき、けして残さない。特に私の母からの勧めは絶対にだ。時たま目を細めてクエン酸と戦っていた姿がはっきりと脳裏に浮かんだ。そうやって両親と省吾さんの昔話をしてなんとか過ごしていた。
 そして清宮商事に省吾さんを知る古株達がいる時も良かった。

「しっかし、社長! ほんっとに佐伯部長のこと好きだったんですねぇ!」
「うーん、自分でもよく分からないんだけど、忘れられないんだよ。だから大好きだったんだろうねぇ」
「よっ! 純愛!」

 そうやって話をしているだけでも心は少し落ち着いた。そんな古株達も減った後、私の行動は二極化した。本来の清宮玲司らしく冷徹に切り捨てたり、効率を重視するやり方と……この後にふと考える。

「省吾さんなら、こんな時どうしただろう?」

 省吾さんはクビを切られ泣いているパートを放置する? しないよな……じゃあもっと子育てと両立できる仕事に移そう。取引先を変えたいけど、省吾さんなら? うーん、むしろ納品個数を増やしてコストを何とかするか? と考え実行するようになった。
 そうすると、清宮商事は更に拡大し、業界最大手にまでのし上がり……そして社長業は従兄弟に譲り、私は最後まで省吾さんを思ったまま死んだ。
 流石に墓にForever Loveって入れるのだけはやめといた。

 だから、女神とかいう奴に会った時、願った事はたった一つだった。

「佐伯省吾さんと今度こそ添い遂げたい! 愛し合っていちゃいちゃして幸せに暮らして二人仲良く生涯を真っ当したい!」
「え……っと?」
「その為ならなんだってやる!」
「わ、分かりました……これから行く世界には世界を滅ぼす魔王が……」
「俺と省吾さんのラブラブアイランドを壊そうとする魔王なんてさくっと ってやりますよ!」
「た、頼もしいです……っ」

 そうして私はレイジェスとしてこの世界に生を受けたんだ。そしていざ省吾さんを探そうとしても探せなかった……何せ、小さな頃の省吾さんを私はほとんど知らなかったからだ。省吾さんが住んでいたアパートの荷物は全部いただいた……いや、保管させて貰った。省吾さん達はやはりというかあまり裕福な生活をしていなくて、写真すらほとんどなかった。優しそうなお爺さんとお婆さんと一緒に映っている写真が数枚、まだ赤ちゃんだった頃から2歳くらいまでの写真は結構あったけれど、赤ちゃんは顔が変るんだよ……。ちょうどいい位の幼児期から少年期の顔がまったくわからないのだ。

「しょ、省吾さん……っどこですか……!」

 そう呟いても、私の思い出から引っ張り出した省吾さんは疲れたクマのあるおじさん顔で聖母の如く微笑むだけ……若い頃が想像できないっ……酷い、酷過ぎる。

「仕方がない、最速で魔王をる……そしてゆっくりこの世界の隅々まで省吾さんを探し回ろう、そうしよう……ならば、この国の王太子っていう生れは便利だな、ありがたく使用させて貰おう。お金もいるだろうな、全世界回るんだから……勉強もしないとだし、魔王をるなら実力もいる。よし、頑張ろう!」

 早く省吾さんを探したいがためだけに私は頑張った。まさに目の前に省吾さんという名前のニンジンをぶら下げられた馬の如く、疾駆し始めた。

 そしたら学園時代の同級生だったなんて、流石に神に文句を言ったよな!

「おまえががんばっているから、神からのほうびのひとつじゃろうが」
「教えてくれよ!! ロリババァ!」
「そういうたいどがよくない、そこへなおれ! ばか弟子がー!」

 神聖魔法に関してはあのロリババァに勝てたためしがない……まあ長期戦をやれば、あいつは体力がほぼないから私が勝つのは当たり前なんだが……最近シャノンさんに取り入ることを覚えて小賢しい……ッ!
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