【短編完結】妹は私から全てを奪ってゆくのです

鏑木 うりこ

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2 婚約も破棄され、家からも追い出され……

「え……? 何と仰られたのですか、デイビット様」
「聞こえなかったのか、レティシア。お前との婚約は破棄だ! そして私は新しい婚約者をロクサーヌにする!」

 次の日に、重い気持ちで学園に向かった私が着くなりにデイビッド様はたくさんの生徒の前で宣言なさいました。

「何故、何故でございますか!」
「何故?! そんなものはお前が1番良く知っているであろう! お前がロクサーヌにして来た仕打ち、私が知らないとでも思っているのか!」

 私がロクサーヌにした仕打ち? なんの事が分かりません。逆ならまだしも、私はロクサーヌに逆らったことすらないというのに、デイビット様は一体何を仰っているのか見当がつきません。

「何かのお間違いではございませんか?! 私はロクサーヌに何も……」

 デイビッド様の後ろから少しだけ顔を覗かせるロクサーヌが見えました。

「怖いです……デイビッドさまぁ」

 きゅっとデイビット様の制服にしがみつき、目を潤ませるロクサーヌ。ああ、また何か良からぬ嘘を言ったのね、あの子が。

 ロクサーヌは息をするより滑らかに嘘を吐きます。お父様もお母様も最初はそんな事ないとロクサーヌをたしなめていましたが、いつの頃からかロクサーヌの言葉ばかり信じ、私を遠ざけるようになりました。

「おお、可哀想に、ロクサーヌ。私が居るからね。大丈夫だよ?」
「嬉しいですわ、デイビッドさまぁ」

 そうして、デイビッド様から見えない場所で、私に向かって意地悪な笑みを投げつけるのです。

 ああ、もう疲れましたわ。

 学園の皆さんも遠巻きに見ているだけ。学園でもロクサーヌは上手に動いているようで、私に味方は誰1人としていません。
 ヒソヒソという悪い噂話が私の背中に叩きつけられているようです。もう私にできることは一つもないようでした。

「婚約、破棄……承りました……失礼致します……」

 何とかデイビット様に最後の挨拶をして、私は溢れそうになる涙を必死に堪え、家に戻ることにします……今日は授業を受けるのは流石に難しいです。

「お気をつけてぇ? お姉様ぁ」

 勝ち誇ったロクサーヌの声が小さく聞こえましたがあまりにみじめで振り返ることはできませんでした。


「このっ役立たずが!」

 そして、家につき、事の顛末を耳にしたお父様に私は叱り飛ばされました。

「折角のデイビッド殿下との婚約を破棄されただと! それでも公爵家の娘かっ! この役立たず!」

 そこにお母様も現れます。

「良いではないですか、旦那様。代わりにロクサーヌが婚約者なのでしょう? 可愛いロクサーヌがデイビッド殿下と結婚するのです、きっと我が家を助けてくださいますわ」

 扇で口元を隠しながらさも嬉しそうに言われます。

「む、それもそうか。そうだ、公爵家の跡取りもロクサーヌにすれば良いな! ははは、そうしよう! レティシア、お前は用済みだ。どこへなりとも消えてしまえ! おい、誰か。この使えない娘を隣国へでも捨ててこい!」
「お、お父様?! 何を! 何をおっしゃるのですか!」

 私は抗議の声を上げます。どうして私が隣国へ捨てられなければならなのでしょうか。それでもお父様に忠実な執事のマシウスはやってきて私を冷たい目で見ました。私は執事のマシウスからも嫌われているのです。

「お呼びですか、旦那様」
「マシウス、レティシアを連れて行け! そしてこの国から追い出してしまえ!」

 マシウスは分かりました、と頭を下げて、私の腕を掴みます。

「や、やめて! マシウス、私は!」
「お静かに。手荒な事はしたくありません」

 私はマシウスに引きずられてお父様の部屋を、そのまま住み慣れた家を追い出されたのでした。
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