【短編完結】妹は私から全てを奪ってゆくのです

鏑木 うりこ

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3 どうしてこうなったのか何も分からないのです

 質の悪い馬車がガタゴトと揺れます。一緒に乗っているのはルルだけです。
 マシウスはかなり前の街で降りてしまいました。

「お嬢様」

 遠慮がちに声をかけるルル。私は途中の街で買った古着の服に着替えさせられ、元々着ていた服はすべてマシウスが持ち帰ってしまいました。きっとロクサーヌが私の持ち物を欲しがったのでしょう……あの子がそういえばあの家の人間は全員従うのですから。そして手元に残ったのはほんのわずかな持ち物だけでした……ルルはそれを大事そうに抱えてくれています。

「……どうして、こんな事になってしまったんでしょうか……」

 私の涙交じりの独り言に、ルルは俯きます。ルルだってどうしてこうなったかなんてわかる訳がないのに。一体何が悪かったのでしょう……私は気づかないうちにとんでもない何かを犯していたのでしょうか?

 私達を乗せた馬車は軋む音を立ててひたはしり、とうとう生まれ育った故郷の国境を越えます。

「本当に隣国へ……捨てられるのね……」
「お嬢様……ルルは、ルルだけはお嬢様についていきますので!」

 ルルの言葉に涙が溢れます。私達はそのまま国境を越え、隣の国へ入りました。入国審査などあるはずなのに、御者がちらりと何かを見せただけであっさり通り抜けてしまったのです。

 呆気なさに驚きながらも、どこまで連れて行かれるのだろうという不安が胸を過ります。でも隣で私の手を握ってくれるルルがいてくれるので、少しだけ不安がまぎれるのでした。


「ルル、ここはどこ?」
「こちらです」

 古い馬車が止まり、降りた先は大きな聖堂のようでした。ルルは馬車の中にハンカチを一つ置きます。あれは私が執事のマシウスから貰ったハンカチ。私とは目も合わせないマシウスが最後に涙を拭くように何故かくれたハンカチです。

「お嬢様はルルを信じてついてきていただけませんか?」

 ルルが真剣なまなざしで私に話しかけてきました。こんな境遇に陥ってしまった私について来たルルを心の底から信じています、ルルのいうことは全部信じられます。

「分かりました。ルルを信じておりますわ」

 私は案内された建物の中に入り、ルルと共に指定された場所に座ります。

「お願いします!」
「分かりました!」

 私が座ると同時に、聖堂の神官でしょうか? 祈り手が何名も現れ、足元に描かれていた魔法陣が光を放ちます。いつの間にこんなものが?

「きゃっ……!」
「お嬢様、ルルを信じて!」
「わ、わかり、分かりましたわ!」

 眩しいけれど清らかな光は輝きます。私は何も苦しい事はないのですが、魔法陣の外では何かが起こっているようなのです。

「切断が完了しました!」
「魔女がきます!」

 バキン、ドカンと何かが壊れる大きな音がしてから嫌な気配か辺りを旋回しています。黒い影、女の影がどことからもなく現れて、私をジロリと睨みつけて魔法陣の周りをぐるぐると回っているんです。

 なんて恐ろしい顔なんでしょう! ガタガタと震え、全身が竦み上がった私は目を閉じて必死に神に祈りました。嫌な気配は夜通し回っていましたが夜明けと共に消えていきました。

 一体あれは何なのでしょうか。二度と思い出したくもない恐ろしい夜でした。

「お嬢様、怖かったでしょう? でももう少し頑張ってくださいませ!」

 私は聖堂で質素な朝食をいただき、また馬車に乗りますが今度はぼろぼろな馬車では無く、4頭立てのスピードのでる立派な馬車でした。一体どうなっているのでしょうか? よく見ると私達が昨日乗っていた古い馬車は何か巨大な力に蹂躙されたのかバラバラに壊されていました……その隙間から私達が乗っていた座面、ルルがハンカチを置いた場所は黒く崩れていて一番被害が激しかったようです……なんて恐ろしい。

「乗ってください、急ぎます!」
「え? は、はい」

 ルルに促されるままに、新しい馬車に乗り込みます。

「お話はしたいのですが、飛ばします。揺れるので舌を噛む可能性がありますから、ついてからご説明いたします」

 ルルが言い終わる前に馬車は動きだし、乗り心地よりスピードを重視した馬車はものすごい勢いで街道を走ります。

 私とルルは馬車にしがみついて、舌を噛まないように必死で耐えるしかありませんでした。


 
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