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4 追われる私
そのまま食事も摂らず、飛ばしに飛ばして日が落ちる少し前に大きな神殿に着きました。
「間に合いました、急いで!」
ルルが私の手を引いて神殿で飛び込みます。そうすると昨夜と同じようにたくさんの神官達が現れました。皆、私達がつくのを待っていたように思います。
「侍女殿! お早く!」
「闇が迫っております!」
「侍女殿も一緒に!」
私とルルはまた魔法陣の中に飛び込みました。
昨日のものより遥かに大きく複雑な魔法陣。そしてルルは持っていた私の大切な古い詩集を魔法陣の外に投げ捨てます。
あれは小さな頃、お父様から頂いた唯一のプレゼント……! 拾いに行こうとする私をルルが止めます。
「魔法陣、発動!」
「繋がりよ、閉じよ!」
「追跡を切れ!」
また眩しい光が溢れ出し、私達は魔法陣の真ん中に座り込みます。
「る……」
喋りかけた私の口をルルがばっと押さえます。そして人差し指を唇の前に
喋ってはいけない、そう言う事なのでしょう。
お日様は溶けるように姿を消し去り、見る間に闇が辺りを包むと昨日も来た何か邪悪な黒い影が、魔法陣の周りを周り始めます。恐ろしい、恐ろしい女の顔……。見覚えがある顔に、私は驚きの声を上げそうになり、慌てて口を押えます。
おねぇぇさまぁ? おねぇえさまぁあ? どこかしらぁ?
!?ロクサーヌなの?!
かわいくてぇ素敵なぁおねぇえさまぁ? さぁ、ちょおだぁああい? ちょおだいよぉ……
ロクサーヌはもう何も持っていない私から何を奪うと言うのでしょう?
ぬいぐるみもお人形も。指輪もネックレスも。ドレスも何もかもロクサーヌが持っていきました。
可愛い詩集も、本も、学園の教科書、ノートも。何もかも、何もかも!
お父様も、お母様も……デイビッド様も。どれだけ私から奪えば気が済むのでしょうか?
ちょおおだあい? おねぇえさまぁあ……! あなたのぉ! 若さもぉ、命もぉーーーー!
もうそれは妹でも、人の顔でもありません。闇の化け物が、魔法陣の周りをぐるぐる、ぐるぐる回っているのです。
恐ろしくてルルにぎゅっとしがみつくと、ルルもかたかたと震える手で握り返してくれました。
お姉様ぁーー! お姉様のぉ! 匂いい! ここかぁああっ!
恐ろしい黒い化け物は落ちていた詩集に近寄り、黒い手で触れました。詩集は真っ黒に染まり、グズグズと溶けて崩壊したのです。
違うわぁ……これはお姉様じゃなぁい! 本かしらぁ? 昨日のアレもハンカチだった……おねぇさまじゃなあい……。
一晩中、恐ろしい声で喋り続けていたロクサーヌのような存在は、朝日が登る頃に苦しみ出しました。
ううっ苦しい! レティシアと繋がらないからぁ力が引き出せない! ちくしょう、人間の癖に!! 私を、この魔女を滅ぼすというのか!
私達はただ震えて見ているしかありません。朝日を横目に影は大きく戦慄いたのです。
体が、体! 私の体! ああ、なんて事ぉ帰れない、帰れないわ!! 人間なんてただの私のおもちゃなのに! ちくしょう! デイビッドの奴裏切ったのね! お父様! お母様! マシウス! 皆、皆んなで私を嵌めたのねえ! 許せない! 許せないわ!
全員殺してやるんだからぁああ!!!
影は飛び去りますが、私達は完全に夜が明けるまで魔法陣の中でガタガタ震えていました。一体何があったのでしょうか……影はとても恐ろしい声でデイビット様たちの名前を叫んでいました……何が起こったか私には見当もつきません。
「レティシア様、ルル殿! お疲れの所申し訳ないのですが、次の大神殿を目指してください! この神殿の魔法陣では次は持ちません!」
「分かりました! お嬢様、もう少しです!」
「ルルを、ルルを信じます」
私達は汚れた格好のまま、次の大神殿とやらを目指す馬車に飛び乗ったのです。
「間に合いました、急いで!」
ルルが私の手を引いて神殿で飛び込みます。そうすると昨夜と同じようにたくさんの神官達が現れました。皆、私達がつくのを待っていたように思います。
「侍女殿! お早く!」
「闇が迫っております!」
「侍女殿も一緒に!」
私とルルはまた魔法陣の中に飛び込みました。
昨日のものより遥かに大きく複雑な魔法陣。そしてルルは持っていた私の大切な古い詩集を魔法陣の外に投げ捨てます。
あれは小さな頃、お父様から頂いた唯一のプレゼント……! 拾いに行こうとする私をルルが止めます。
「魔法陣、発動!」
「繋がりよ、閉じよ!」
「追跡を切れ!」
また眩しい光が溢れ出し、私達は魔法陣の真ん中に座り込みます。
「る……」
喋りかけた私の口をルルがばっと押さえます。そして人差し指を唇の前に
喋ってはいけない、そう言う事なのでしょう。
お日様は溶けるように姿を消し去り、見る間に闇が辺りを包むと昨日も来た何か邪悪な黒い影が、魔法陣の周りを周り始めます。恐ろしい、恐ろしい女の顔……。見覚えがある顔に、私は驚きの声を上げそうになり、慌てて口を押えます。
おねぇぇさまぁ? おねぇえさまぁあ? どこかしらぁ?
!?ロクサーヌなの?!
かわいくてぇ素敵なぁおねぇえさまぁ? さぁ、ちょおだぁああい? ちょおだいよぉ……
ロクサーヌはもう何も持っていない私から何を奪うと言うのでしょう?
ぬいぐるみもお人形も。指輪もネックレスも。ドレスも何もかもロクサーヌが持っていきました。
可愛い詩集も、本も、学園の教科書、ノートも。何もかも、何もかも!
お父様も、お母様も……デイビッド様も。どれだけ私から奪えば気が済むのでしょうか?
ちょおおだあい? おねぇえさまぁあ……! あなたのぉ! 若さもぉ、命もぉーーーー!
もうそれは妹でも、人の顔でもありません。闇の化け物が、魔法陣の周りをぐるぐる、ぐるぐる回っているのです。
恐ろしくてルルにぎゅっとしがみつくと、ルルもかたかたと震える手で握り返してくれました。
お姉様ぁーー! お姉様のぉ! 匂いい! ここかぁああっ!
恐ろしい黒い化け物は落ちていた詩集に近寄り、黒い手で触れました。詩集は真っ黒に染まり、グズグズと溶けて崩壊したのです。
違うわぁ……これはお姉様じゃなぁい! 本かしらぁ? 昨日のアレもハンカチだった……おねぇさまじゃなあい……。
一晩中、恐ろしい声で喋り続けていたロクサーヌのような存在は、朝日が登る頃に苦しみ出しました。
ううっ苦しい! レティシアと繋がらないからぁ力が引き出せない! ちくしょう、人間の癖に!! 私を、この魔女を滅ぼすというのか!
私達はただ震えて見ているしかありません。朝日を横目に影は大きく戦慄いたのです。
体が、体! 私の体! ああ、なんて事ぉ帰れない、帰れないわ!! 人間なんてただの私のおもちゃなのに! ちくしょう! デイビッドの奴裏切ったのね! お父様! お母様! マシウス! 皆、皆んなで私を嵌めたのねえ! 許せない! 許せないわ!
全員殺してやるんだからぁああ!!!
影は飛び去りますが、私達は完全に夜が明けるまで魔法陣の中でガタガタ震えていました。一体何があったのでしょうか……影はとても恐ろしい声でデイビット様たちの名前を叫んでいました……何が起こったか私には見当もつきません。
「レティシア様、ルル殿! お疲れの所申し訳ないのですが、次の大神殿を目指してください! この神殿の魔法陣では次は持ちません!」
「分かりました! お嬢様、もう少しです!」
「ルルを、ルルを信じます」
私達は汚れた格好のまま、次の大神殿とやらを目指す馬車に飛び乗ったのです。
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