64 / 229
64 後ろ盾は何枚あってもいい
しおりを挟む
「決裁しても決裁しても終わらない書類はどうしたらいいと思う?」
「有能な養子を迎えればいいですよ」
「天才か」
私達がお世話になっている家は「リゼレン大隊長の知り合いのマリアお姉さん」の家ということになっている。実際そこそこの規模の家で王宮ではない。王宮に無茶苦茶近いけれど、一応王宮ではない。王宮の敷地内にある気がするけれど、絶対違うと言い張られているから、多分……それ以上聞いても面倒くさいだけなので聞かなかった。
この家の奥の扉から長ーい廊下で王宮までつながっているような気がするけれど気が付かないふりをした。皇帝直属の近衛騎士が物凄く忍んで警備をしているけれど、気が付かないふりをした。私はとっても気遣いの出来る子狐だからね。
「やんのかぁ?ァアン??」
「黙れ、クソ六剣、真っ二つにすんぞ、え?コラァ」
「やれるもんならやってみろ、返り討ちだ、ゴラァ」
戦場で何度も剣を交えた近衛騎士団団長ダレンとヘイズがおでこを突き合わせておしくらまんじゅう状態だけれど、
「きゅん!」
「あ、なんでもないです~俺達ナカヨシだよな~ダレンクン~」
「はっはっは~俺達チョーナカヨシだよな~~ヘイズクーン~」
一声かけると仲良く肩を組んで引きつった笑顔を見せてくれるのが面白い。良きかな良きかな。
ラセルは意外とマリアネットと話をするのが楽しいらしいし、マリアネットもラセルの質問に答えるのが苦ではないらしい。
「結局は嘘をつかないことが一番だよ。もし出来なかったら出来ないといい、失敗したら失敗したという。努力した結果の失敗ならば得るものもある」
「でもボク……失敗したら皆に知られたくない……。だって村の友達は馬鹿にするもの」
「だが、隠しておいていい失敗か?放っておけば余計自体は悪化しないか?焦げたシチューの鍋は放っておいても元のシチューには戻らん。失敗したことを謝り、新しい材料を持ってきたり、鍋を洗ったりしなければシチューは永遠に食べることができない」
「……そうだね……」
私も隣に座ってマリアネットの話を聞いていたが、彼女の話は分かりやすい上に納得できる。流石現役皇帝陛下だ、人に話を聞かせてその心にしみこませるのが抜群に上手い。
あーあ、我が国の王もマリアネットの小指の先くらい人の話を聞く人物だったら良かったのにな……またどうしようもないことを考えてしまった。忘れようとしても染みついた思いは中々取れないものだった。
「さて、ラセル。私も久しぶりにリゼレンに稽古をつけて貰おうかな?私も流麗剣を少し習っているんだぞ」
「そうなの!?じゃ、じゃああれだね、兄弟子!」
「姉弟子といえ!私は妙齢の女性であるぞ!あっはっは!」
「そうだったー!ごめんなさい、マリアお姉さん」
「習っているって型を少し教えただけでしょうに……」
「何か言ったかな? リゼレン」
「何も言っておりませんよ、我が弟子マリアさん」
ラセルはファーマの皇帝に気に入られたようでひとまず安心した。それにファーマのお偉方への顔通しも済ませることができた。これから大きくなっていくラセル、後ろ盾は何枚あってもいい。この世は権力がものを言う場合も多いし、どこで何が役に立つか分からない。
あと、ミニィ達の身の振り方の選択肢が少しでも広がったらいいな。
「有能な養子を迎えればいいですよ」
「天才か」
私達がお世話になっている家は「リゼレン大隊長の知り合いのマリアお姉さん」の家ということになっている。実際そこそこの規模の家で王宮ではない。王宮に無茶苦茶近いけれど、一応王宮ではない。王宮の敷地内にある気がするけれど、絶対違うと言い張られているから、多分……それ以上聞いても面倒くさいだけなので聞かなかった。
この家の奥の扉から長ーい廊下で王宮までつながっているような気がするけれど気が付かないふりをした。皇帝直属の近衛騎士が物凄く忍んで警備をしているけれど、気が付かないふりをした。私はとっても気遣いの出来る子狐だからね。
「やんのかぁ?ァアン??」
「黙れ、クソ六剣、真っ二つにすんぞ、え?コラァ」
「やれるもんならやってみろ、返り討ちだ、ゴラァ」
戦場で何度も剣を交えた近衛騎士団団長ダレンとヘイズがおでこを突き合わせておしくらまんじゅう状態だけれど、
「きゅん!」
「あ、なんでもないです~俺達ナカヨシだよな~ダレンクン~」
「はっはっは~俺達チョーナカヨシだよな~~ヘイズクーン~」
一声かけると仲良く肩を組んで引きつった笑顔を見せてくれるのが面白い。良きかな良きかな。
ラセルは意外とマリアネットと話をするのが楽しいらしいし、マリアネットもラセルの質問に答えるのが苦ではないらしい。
「結局は嘘をつかないことが一番だよ。もし出来なかったら出来ないといい、失敗したら失敗したという。努力した結果の失敗ならば得るものもある」
「でもボク……失敗したら皆に知られたくない……。だって村の友達は馬鹿にするもの」
「だが、隠しておいていい失敗か?放っておけば余計自体は悪化しないか?焦げたシチューの鍋は放っておいても元のシチューには戻らん。失敗したことを謝り、新しい材料を持ってきたり、鍋を洗ったりしなければシチューは永遠に食べることができない」
「……そうだね……」
私も隣に座ってマリアネットの話を聞いていたが、彼女の話は分かりやすい上に納得できる。流石現役皇帝陛下だ、人に話を聞かせてその心にしみこませるのが抜群に上手い。
あーあ、我が国の王もマリアネットの小指の先くらい人の話を聞く人物だったら良かったのにな……またどうしようもないことを考えてしまった。忘れようとしても染みついた思いは中々取れないものだった。
「さて、ラセル。私も久しぶりにリゼレンに稽古をつけて貰おうかな?私も流麗剣を少し習っているんだぞ」
「そうなの!?じゃ、じゃああれだね、兄弟子!」
「姉弟子といえ!私は妙齢の女性であるぞ!あっはっは!」
「そうだったー!ごめんなさい、マリアお姉さん」
「習っているって型を少し教えただけでしょうに……」
「何か言ったかな? リゼレン」
「何も言っておりませんよ、我が弟子マリアさん」
ラセルはファーマの皇帝に気に入られたようでひとまず安心した。それにファーマのお偉方への顔通しも済ませることができた。これから大きくなっていくラセル、後ろ盾は何枚あってもいい。この世は権力がものを言う場合も多いし、どこで何が役に立つか分からない。
あと、ミニィ達の身の振り方の選択肢が少しでも広がったらいいな。
129
あなたにおすすめの小説
売れ残りオメガの従僕なる日々
灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才)
※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!
ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。
無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~
さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。
そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。
姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。
だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。
その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。
女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。
もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。
周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか?
侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
ぜったいハッピーエンド保証な本編、おまけのお話、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
トェルとリィフェルの動画つくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのWebサイトから、どちらにも飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる