【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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66 砦を攻める

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 厨房へ着くとパムが片手にお玉と片手にフライパンをもって踊っていた。

「な、なに……あれ?」

 ふ、説明しよう。

「あれは神々への戦勝祈願の踊りだきゅん。パムはあれでいて中々に信心深いから、大事な戦いの前はああやって踊りを捧げるんだ」
「へ、へえ……」

 先についていたラセルとマリアネットは口を開けて奇妙奇怪な踊りをするパムを見ていたけれど、我々は見慣れている。

「この戦いの勝利を火の神マグニア様とティエン様……「パムぅ」あ、ええーと」

 横に置いた保管庫からティン様の声が聞こえて来た。そりゃティエン様だけじゃティン様は悲しい。

「パムさん、そこは「時空神様」で!」
「おお!そうですな!火の神様と時空神様へ捧げますーー!」

 お玉とフライパンがカンカンカーンと打ち鳴らされて、パムの誓いが神様の耳に届く。ど、どんだけ気合入れてるんだろう。

「勝利の暁にはダーククリムゾンバイソンのソーセージを3本づつ捧げることをここに誓いますッ!」
「えええええーーーー!パムお前持ってたのかー!!」
「狡い狡いーーーー!」

 どこに隠れていたのか、ミニィとクレヤボンスが突然にゅっと沸いた。もう……普通に見においでよ。

「だ、ダーククリムゾン、バイソンのソーセージって美味しいの?イアン」

 私を振り返ったラセルだったけれど、なにかに気が付いた顔になった。どうやら私の顔も思い出しにやけが出ていたらしい。

「美味しいよー!ぷりっぷりの皮に包んで、サックラーの木のチップでいぶしたやつでね!かなり大きくてさ~~ボイルして食べたらもう……もうっ……あー!食べたい、食べたーい!」
「ダークバイソンではなくて、ダーククリムゾンか!そんな稀少牛をソーセージに……私も食べてみたいなぁ」

 どうやら皇帝であるマリアネットも食べたことがないようだ。そんな私達も実はかなり昔に一本づつしか分けて貰えなかった……それを三本だと? パム、本気だな……!

「くっ!そんな稀少食材を……貴様、やるな。だが、我が家の台所を自由に使いたいなど言語道断! この私を倒してからにしてもらおうか!」
「応! 相手にとって不足なし! 行くぞ、料理長、食材の確保は十分かッ」

 なんだかよくわからんが、良く分からん戦いが開始されるようだ。

「わー、楽しみだねえ~」
「今日の夕飯は豪華そうだなぁ~」
「どれどれ、審判は私がしてやろう」

 皇帝陛下の審判ならパムもこの屋敷の料理長も納得してくれるだろう。

「ではレディー、ファイッ!」

「うおおおーー!」
「破ーーーー!」

 およそ料理するときにかける掛け声なのか? という叫びが響いているけれど、厨房は料理人の砦というし、そこに余所者が攻め込んで来たら激しい攻防が起こっても致し方ないことか。
 料理人の魂の包丁で相手の心を切り刻み、ついでに人参も切り刻み、時には時間をかけてゆっくりと水責めに、漬物かな?時には激しく炎で全てを焼き尽く……すのは表面だけ、お肉美味しそうだなぁ~。

「わー! 良いにおーい」
「きゅふぅん……!早く食べたいねー」

 料理人は額に汗をかきながら、我々は口から涎をたらしながら、縦横無尽の料理対決がヒートアップしていた。


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