【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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76 私、関係ない。

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 皇帝マリアネットによる自らの親族を処刑台に送り込む裁決は電光石火だった。作戦が漏れれば逃げる、武力も財力も保有する皇帝の血族達の首を斬る作業をマリアネットは良心と正義の天秤のみで行い切った。

「マリアネット!小さな頃からお前に目をかけてやったのに!」
「だからと言って我が兄を殺して良いことなどあり得ない。次期皇帝であった兄の命を奪った者が極刑にならずに何とする」
「我が英断のお陰でお前がその椅子に座っているではないか! 」
「望まぬ椅子をお前に押し付けられたとも言うがな? お陰で私は未だに独り身ぞ」

 マリアネットの兄でありレオンの父を殺した血族。処刑の場にレオンの姿もあったらしい。

「皇帝など呪われた血筋だ。だが誰かがやらねばならん。その誰かは間抜けではいかんのだ、公正でなければいかんのだ、私情を捨て、国のために働かねばならんのだ」
「……彼らも死なねばならないのですか」
「ああ」

 直接、計画した男の妻とその子供達。彼女らはそんな計画は知らなかったかもしれないし、父を失ったレオンを慰め、親身になってくれていたかもしれない。
 断罪する側に回ったレオンに鋭い言葉も投げつけて来たし、助命を求めても来た。

「せめて末の生まれたばかりの赤ちゃんくらい」
「ならん。血が近すぎるのだ。もう少し離れておれば生涯幽閉の手立てもあるが、反逆者の子供は生かして置くことは出来ん」
「わかり……ました」

 刑は例外なく執行され、民衆の目には惨さより現皇帝の公正さを引き立てることになっただろう。いくら血のつながりがあろうとも、皇帝は公正である。

 マリアネットやレオンは眠れぬ夜を何度も迎えることになるだろうが、国民は喜ぶだろうな。


 なのに、何で私が誘拐されているのだろうか??

 口は皮のバンドでぎゅっと結ばれ鳴き声も上げられないし、手足は一纏めに縛られてころんと床に転がされている。

 なんで?

 マリアネットが長年思い悩み、そして決断しただけなのに、なんで私??

「ほ、本当にこの狐を捕まえれば陛下はサガラート公爵家に連なる我々にお慈悲を下さるだろうか」
「陛下は事の他この動物を可愛がっておられたそうだし」

 そんな事ないが、私を捕まえた奴らはそう思っているようだ。サガラート公爵。マリアネットの伯父であり、レオンの父の暗殺を指示した人。
 クレヤボンスの情報によれば最初から疑わしい人物であり、証拠もあった。しかしその地位の高さと人脈、そして伯父という立場上、追求し断罪するのが難しかった人物だった。

 マリアネットは先日、その長年の憂いを断った。彼女が決断し、彼女が実行した。そこに外部からの干渉なんてなかったのになんで私は攫われているんだろう?貴族には理解できない人間がかなりいるから彼らもそういう類の人種なんだろうな。
 
 ため息も出ないほどしっかり縛られていてこれは一人で抜け出すのは難しいぞ。子狐を誘拐する手段は巧みなのに、どうしてそれを政治的手腕に活かせないのか不憫でならないなぁ。



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