【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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139 じゃあね~

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「その二つを置いていく代わりに、ラセルは私達と一緒に行動するで構わないね?」
「短剣と杖は必要だ」

 現国王の言い草に私達は額に青筋が浮かぶ心持だが、今食って掛かるのは得策じゃない。まあ現国王にしてもラセルの存在は厄介なんだろう。多分彼は自分の子を次期王にしたいし、そうする予定で王太子にでもしているんだろう。そこへ失踪した今でも人気がある妹の子供が帰ってきた。手に初代王の短剣を持って。
 国を良き方向へ導けない王様の子供より、人気があって更に初代由来の宝物を持った妹姫の子供が民衆の支持を得る可能性が高い、誰もがそう思うし、現国王もそれに気が付いている。だからはっきりいわずとも現国王がラセルをこの国から放逐したいと思っている事も誰もが気が付いているんだ。短剣と杖さえあればラセル本人は要らないと暗に言われているようなものだ……腹が立つ。

「ラ、ラセル……せっかく戻ったんだ。この国にいて欲しい」
「やだよ、お祖父ちゃん。ぼくはイアン達と一緒に行く」

 ラセルを引き留めたいのはこの前国王だけだろう……あとは現国王の意向を見事に汲んでいるし、ラセルの意志も出て行く方向で固まっているから、あの生真面目な副団長も口をはさんでこない。

「父上、我が儘はおやめください、ラセルの意思は固い。それに広い世界を見ることは良いことです」
「……」

 説得しようとラセルに近づく前国王は肩を掴まれてその場に留められた。

「……お前」
「なにか?」

 力を強めて意思表示をしたのか、前国王の顔が少し歪んでいる……あーはいはい王宮の面倒くさい親子喧嘩は我々がいなくなってからにしてもらいたいものだ。

「じゃ、行こうか。ラセル」
「うん! 行こう、行こう! 」

 私の手をラセルは握り、歩き始めた。ラセル……いや、ルセラはこうやって私と並んで歩くことを求めたのか。後ろからその背中を見守る役ではなく、共に歩く友人になってほしかったのか。その事がなんだか嬉しくて、大人の嫌な暗い汚い算段を薄めてくれる。

「あまり納得の行く事じゃないですけど、ここから離れることはありがたいですね」
「そうだな、どうも空気が淀んでいて感じが悪い。裏側はすげー楽しいのにな」

 何でもない世間話風に話しつつ、ミニィとタムが私達の後ろに続く。リラックスしているように見えて、二人ともキンキンに気を張り巡らせている。どこから狙撃されようと魔法を打ち込まれようと即座に対応できる用意があるんだ。
 クレヤボンスがいた窓辺を見ると気配も姿もない。もうロイも移動して城から出やすい場所に待機しているだろう。

「まあまた来るかな?」
「今度は裏側で遊びたいな~あのぐるぐる回る扉にもう一回入りたいな」
「隠し部屋探しとかしちゃう?」
「するする~」

 ハイランド城の滞在時間が短すぎて色々作った仕掛けを見ている暇が全然なかったもんね。まだまだたくさん楽しい仕掛けがあるからね。
 私達は今度は正面の門の横にある小さな通用口に通され、外に出る。最初からここを使えば良かった? いやいや、たまに石像も動かさないと壊れてたら困るでしょ??

「じゃあね~」

 手を振るラセル、そして私達。

「ま、私もそこまでイイヒトでもないわけなんだよね。さあ、ラセルあの短剣を手放しちゃお……君の持ち物だと誰も鞘から剣を抜けないからね」
「あ、そうだね。ぼくはモノよりヒトが良いもん!」

 モノに求める大義なんてどれほどの価値があるんだろうね?

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