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155 どこかで隠れて
しおりを挟む「18歳で学園を卒業すると同時に私は魔法騎士として働き始めたんだ。ワイアード家は貧乏だったからね……それに騎士団は実は給料が良いし、寮があるしでとてもありがたかったんだよ」
ラセルはふんふんと頷いたり相槌を打ったりしながら静かに聞いている。私がいたガルエン王国は戦争狂の国王のせいで騎士の入れ替わりがとても激しい……だから給料が高かったのだ。そして大人は戦争に駆り出されるから、残されたものが貧民となって貧民街を形成するのが日常化していた……いや、あの王はまだ在位中なんだからまだ続いているんだろう。
「すぐに戦場にはいかず、市内警備に回されて……そこでミニィに会ったんだ。貧民の子供達を纏めてあげて必死で生きているそんな子だった。10歳のミニィが面倒見ている子供達が10人いたんだけど、その年に流行った風邪で大半が酷い病状になっちゃってね……たまたま警備中の私に泣きついて来たんだ。兄弟たちを助けてくれって」
「10歳、ぼくと同じくらいの時に自分より小さい子達の面倒をみていたの?」
「うん。しかも血のつながらない子達だった……私もそんなに給料があった訳じゃないけど、これも何かの縁だと思って、ミニィを含めて11人を実家で雇うことにしたんだ。ウチも貧乏だったけど、子供11人くらいならとりあえず大人になるまでなんとか面倒見れるかなって。ちょっと怒られたけどね」
いや、本当は物凄く怒られた。そんな無責任なことをするなって……それでも母上や兄上は子供達に暖かい部屋を与え、食べ物を食べさせなんとか一人も殺さず病魔を払うことに成功した。そして全員メイド見習いや庭師見習い、執事見習いとそれぞれの元につけ、生きて行く為にあった方が良い技能を学ばせていったんだ。
「私にできることは給料を送る事だけだったんだけど、そのうちミニィが騎士団の寮に来てね。滅茶苦茶怒られたんだよ」
「もしかして、イアンはお部屋を片付けてなかったとか?」
「当たり。仕事を一生懸命して、お給料の出る残業もいっぱいやって……ちょっと副業なんかもしたら部屋は荒れ放題、どこに何があるか分からないし、服は汚いしで……ミニィが身の回りの世話をしてくれるようになったんだ。ミニィにお給料出せないよって言ったんだけど、チビ共の面倒見て貰ってるからそれでチャラだ、なんてカッコイイこといってねえ」
「凄いね、ミニィさん」
「うん。しかもいつの間にか寮の食堂でアルバイトまで始めててね、ご飯はそこで食べるから飯代も要らないとかいってるし、他の騎士達の洗濯をしたり、片づけを手伝ったりしてお小遣いまで自分で稼いでた。あと私が読み散らかした本なんかも勝手に読んでて、その頃かな?魔法も使えるようになってた」
「す、凄い……」
「うん……凄いんだ、そうなると私も頼りっ切りになっちゃってねぇ……ミニィなしじゃ生活出来なくなっちゃったんだよ。で、どうしようかな~って思ってたらミニィの方から養子にしろって言って来てね。手続き書まで貰って来ててさ、もう私のサインが入れば提出できるまでになってたんだよ! 父上と母上のサインも入ってた、いつの間にって思うよね!」
「凄いけれど、なんかミニイさんっぽいって思っちゃうな~~」
「私もあんまり考えないでミニィならいいか~ってサインしたらさ、まあこれが楽ちんでね。私が直にサインしなきゃいけない書類があっても、意外とミニィのサインでも通るようになってね。書類整理が早くなったよね!」
その頃になると私も戦場に駆り出され始め、騎士団の寮の中でも上の階級に上がって行っていた。部屋は個室になり、最初はベッドと小さなテーブルしかなかったのに、自分のベッドとミニィ用のベッドも置けるようになり、書類が山積みの机はどんどん大きくなっていくし、そのうちミニィ用の机と椅子も用意されていたし。
「でね……ミニィは何も言わなかったんだけど、ミニィを虐める奴らがいてさ……平民の孤児で貧民街上がりだろう?相当虐められたらしいんだけどね。気づいてやれなかった私も悪かったんだけど、ミニィも上手に隠してたよ……養子になったら私の名前を堂々と出せるからそういう利点もあったらしい」
そんな感じで私とミニィはずっと一緒に暮らしていた。私の階級が上がりどんどん部屋が広くなってもずっと変わらず、二人で同じ部屋で寝て、同じ部屋で食事を取り、同じ部屋で書類を片付ける。
「あいつらをぎゃふんと言わせるために剣を教えてくれって言われて教えたし、魔法も正式に教えてくれって言われてたくさん教えたよ……そしたらミニィ強くなっちゃってねえ~びっくりしたよ」
自分に突っかかってくる騎士達を倒せるようになるとミニィは戦場までついてくるようになった。
「寮でもこんなんなのに、外に行ったらどうなるか考えたくないです! って怒られちゃった。でもミニィが来てくれてから補給もスムーズになったし、やっぱりミニィは凄いんだ」
「そうだったんだ」
「うん。そろそろミニィも良き伴侶が必要だよね~なんて思ってた時に、私は死んじゃったからちょっと気になってたんだけど、なんかリゼレン君と結婚することになっちゃったし。リゼレン君、意外といい奴だからミニィを任せられるなあって」
そこで一瞬ラセルは考え込んで、お伺いを立てるように小さな声で聞いてくる。
「ね、本当にミニィさんはリゼレン師匠の事嫌いじゃないんだよね?」
「ふふ、大丈夫だよ」
ミニィは結構冷たい言葉をリゼレン君にぶつけるけれど、大丈夫なんだ。
「ミニィはねえ、結構照れ屋さんなんだよ。それに本当に嫌いだったら話しかけもしないもの。ミニィは結構リゼレン君の事気に入ってると思うよ~」
「ほんとにほんと?」
「うん、もしかしたら今頃隠れてどこかでチューくらいしてるかもね?」
「そ、そうなんだ! 後で聞いてみる!」
そこは聞かないでおいて上げて欲しいな……。
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